ストロボ無しの撮影。忍者のキャラクター。影が長く伸びる写真を撮りたいとのことだったが、場所が空かなかったので別のところで撮ることにした。ちょうど太秦映画村の照明が家屋の二階から照射されていて明るい。ここならストロボ無しでも撮れるのではないだろうかと踏んだ。
そうして撮れたのが冒頭に上げた写真。忍者は背中で語る。影も程よく伸びている。焦点距離55mm、F1.4、シャッタースピード1/80秒、ISO感度1600。明るさをなるべく確保したいためにこのような設定となった。本来ならもう少しシャッタースピードを速めたいところだが、明るさには代えがたい。ただし油断していると手ぶれしやすい。結局手ぶれを防ぐためにシャッタースピードを1/125秒、1/160秒に変更。すると写真が暗くなるが、明るいよりは暗い方が良いと言われたので結果オーライ。
色温度は2200Kと低め。どの色が良いかとヒアリングしてみたら、冷たい色となった。
引きだけでなくアップでも撮ってみる。ロバート・キャパの「写真がイマイチならそれは寄って撮っていないからだ」という言葉を思い出し、一歩二歩踏み込んで撮る。刀の反射が眉間に当たった。このような写真はどうかと聞いてみたが、反射はない方が良いという。しかしカメラマンとしてこの反射の表現が気に入った。しかしレイヤーさんに聞くとない方が良いと言われたので撮り直した。他にも引きで色々と撮影。
余談だがロバート・キャパといえば、スペイン内戦を取材中に撮影したとされる兵士が銃弾に倒れる瞬間を捉えた写真『崩れ落ちる兵士』が有名だが、あれはスナップショットではなく、作られた写真だと近年になって各方面から詳細な研究結果が出ている。またパリの街角でカップルがキスをしている有名なスナップ写真『パリ市庁舎前のキス』も、モデルを手配して撮影した写真だと或る訴訟の過程で撮影者であるロベール・ドアノー本人から明かされた。写真の真贋を見極めるのは難しいが、そもそも世の中には本当のことなど何一つとしてないのではないだろうか。ツイッターで呟いていることにしても、それが自分でも本当の気持ちなのか、装っているのか、曖昧なところがある。女心は秋の空、女だけでなく人間全般の心も形を変えていく。その曖昧さが人生の良さでもあるのだろう。