動く被写体のピント合わせのコツ

自然な動きを出すためには実際に歩いている所を取る必要がある。
自然な動きを出すためには実際に歩いている所を取る必要がある。

普段止まっている被写体ばかりを撮っている筆者にとって、動き物を撮るのは難易度が高いという意識が働く。キヤノンのカメラにはAIサーボAFというAF機能があるので、ワンショットAFからこのAIサーボに切り替えれば動き物にピントを合わせるのは容易なのだが、普段使っているレンズがマニュアルフォーカスのみのレンズとなると、当然AIサーボAFは機能しない。

橋の上で撮る事になり、歩いている絵が欲しいと言われた。止まってと言ったがどうしても歩くという。仕方がないので歩いている姿をファインダーでのぞき込みながらトルクを回してピントをパパパッと合わせていった。当然メカの性能に頼らない目分量である。

江戸時代の日本橋を模した橋の盛り上がった先から手前に歩いてくるまで4秒から5秒。その間に5回から9回程シャッターを押す。十中八九ピントが合っている。焦点距離は55mm。F値はF2.8。二人並んでいるのでどちらかにしかピントが合っていないこともあるが、これがF1.4ならピント合わせは難しさを極めたことだろう。レンズの最短撮影距離よりも寄っている時は当然ピントは合わない。

こちらが想像していたよりも早足で歩く。するとその勢いで外套の裾などがひらりと舞い如何にも動いているような絵が撮れる。通常ならこの裾を翻すためにもう一人アシスタントが着いて裾をペロッと舞い上がらせるのだが、大抵は不自然な舞いになることが多い。自然の動きに任せた方が自然な風体で撮れる。

マニュアルフォーカスでもF2.8まで絞り込めば結構ピント合わせが楽なことに気づいた。Otusを使う時は普段F1.4で撮ることが多いので、どうしてもピント合わせが難渋だなぁと感じるシーンが多いのだが、F2.8という選択肢も良い。背景も暈けすぎずクッキリし過ぎず。名所で撮る時などにはちょうど良いF値なのではないだろうか。