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ストロボ無しで夜撮影 – ISO感度を上げて撮る時 #15

太秦映画村のコスプレイベント夜撮影で、ストロボ無しで撮ることは可能か。
太秦映画村のコスプレイベント夜撮影で、ストロボ無しで撮ることは可能か。

年に1回の太秦映画村の長時間イベントで夜撮影を敢行してきたのだけれど、ストロボで光らせた感じがすると言われたので、その場にある灯りだけで撮影することになった。太秦映画村は実際の映画や時代劇のドラマにも使用されているアミューズメント施設で、最近では『銀魂』シリーズの映画の撮影にも使われたりしていた。実際に映像制作に携わっているプロの照明スタッフがライティングを作り上げているという事で、ストロボがなくても撮れないことはない。

しかし場所を選ぶ必要がある。当然灯りが灯っている場所を選ばなければ難しい撮影となる。その意味ではどこでも撮れるストロボを使った方が簡単なのだが、いかんせん人が多い。アレ?前回来た時はこんなに人が多かったけ、と思うほどにコスプレイヤーとカメラマンでごった返している。集合写真でストロボを光らせると自然絞って撮る事になるから、背景に関係のない人たちが映り込む。そうなるとストロボ無しで明るい単焦点レンズを使ってF値を開放F値に設定して背景暈かして撮った方が良いよね、ストロボ機材も大きくて設置に面倒だし周りに気を遣うし、という流れが脳内で生じる。要はちょっとした手抜きである。

ところが今回は3人の撮影。開放F値で撮ろうとすると、誰かが暈けてしまう。横から抜いて欲しいと言われ、当然誰かにピントは合うが他のメンバーにはピントが合わない。

55mm | F1.4 | 1/80s |  ISO3200
55mm | F1.4 | 1/80s | ISO3200

手前の行燈の明かりを生かしつつ撮影。F1.4・シャッタースピード1/80秒・ISO感度3200。

絞りは開放F値、シャッタースピードは手ぶれしないギリギリのシャッタースピード。Otusの55mmなので、大きくて重いレンズでは手ブレしやすいかもしれないと思い、1/50秒までは下げなかった。これまでの体感で1/50秒はブレやすいと知っていたからというのもある。通常重いと安定しそうだが、どこかでブレやすいというレビューを読んだ記憶がある。

ISO感度3200、意外とノイズが乗っていない。当然ノイズ処理が施されているので、RAW現像ソフトDPPで輝度ノイズをゼロにしたらノイズは目立つだろうとやってみたが、それでも明るい箇所、例えば行燈や手前の忍者の顔には、等倍で観てもノイズが見当たらない。ノイズなのかそうでないのか見分けが着きにくい。中間くらいの明るさの部分、この写真で言うと暈けの部分にノイズが乗っているのが見受けられる。DPPに取り込んだ時のノイズリダクションの値は、10段階で輝度ノイズが3,色ノイズが4だった。ISO感度3200でもノイズがこんなに少ないのは意外だった。さすがフラッグシップ機Canon 1DX。しかし昔オルビスホールのコスプレイベントで同じカメラを使ってISO感度6400で集合写真を撮った時はノイズが出ていて余り綺麗な写真に仕上がらなかったので、あの経験以来余り超高感度では撮りたくないという意識が働いていたのだ。良い写真を撮るためにISO感度を上げることを躊躇ってはいけないとはよく言われているが、それにも限度があるからそのまま鵜呑みにしてはいけない。以前別のレイヤーさんが「古い新聞紙の写真みたいなノイズだらけの写真が送られてきた」と或るカメラマンに対して不満を述べられていたことがあった。要はISO感度の超高感度は、重要な記録のために撮るか、作品のために撮るか、その作品でも意図してノイズの多い写真もしくはそういう作風で撮るか、それとも美しい写真に仕上げるか、写真を貰う側がどのような写真を欲しているのか、などの数多の分岐があり、その目的とするところによって適切なISO感度に定めなければならない。

ストロボなしでの焦点距離55mmによるシャッタースピード1/80秒は、手ぶれを警戒しなければならない速度である。油断したら手ぶれする。中望遠レンズの85mmなら尚更だ。85mmは油断すると手ぶれしやすい。55mmの恩恵の一端がここにもある。

一人だけにピントを合わせた写真を撮ると不公平なので、三人共にそれぞれピントを合わせていった。構図はこれで良かったのだろうかというのもある。正面から三人を撮ったのだがやはり横から抜いた写真の方が良いという。

ホワイトバランスはオートが無難

行燈の光源だけで撮影した夜の写真で重要なのは色温度の設定だ。温かみのある色にも出来れば冷たい色にも出来る。色温度を比べてみよう。

色温度6400K。オレンジ色に照らされた障子が江戸の町の情緒を掻き立てる。
色温度6400K。オレンジ色に照らされた障子が江戸の町の情緒を掻き立てる。
色温度4700K
色温度4700K

彩度(色の濃さ)はそれぞれ−2。はじめは6400Kで撮っていたのだが、ちょっと暖色過ぎるかなという事で、パソコンの後処理で4700Kに落とした。そういえば余談になるが、先日130年ぶりにキログラムの定義が変わる事が決定したそうで、その中の記事で色温度ケルビンの定義も変更になる可能性があるというようなことが述べられていた。どうなるのだろう。

正面から暖簾をくぐって出てくる構図も宜しかろうという事で撮っていった。しかしF1.4で撮らなければならないので、どうしてもどちらかが暈けてしまう。そこでなるべくレンズと被写体二人が平行になるように撮っていく。今回はカメラマンである筆者が平行になるよう動いた。しかし手前の行燈を暈かしつつ二人を入れた写真を撮りたい場合は、どうしても後ろの子が暈けてしまう。F2に絞れば、同じ明るさにしようと思えばISO感度3200にしなければならない。

55mm | F1.4 | 1/80s |  ISO1600
55mm | F1.4 | 1/80s | ISO1600

F1.4・シャッタースピード1/80秒、ISO感度1600。色温度はオート。4700K寄りも寒色寄りだが、これくらいの色味が忠実なのだろうか。彩度は引き続き−2。彩度を落としているのはコスプレイヤー側からの要望で、新選組の羽織の水色がヴィヴィッドにならず、くすんだ水色になるよう処理している。要は浅黄色にして欲しいということだった。羽織の色調整についてはまた別の記事で詳しく述べていきたい。

55mm | F1.4 | 1/80s | ISO3200
55mm | F1.4 | 1/80s | ISO3200

縦構図も良いだろう。こちらも好評だった。

55mm | F1.4 | 1/80s |  ISO1600
55mm | F1.4 | 1/80s | ISO1600

しかし行燈だけの明かりに頼るとどうしても奥の子の顔の明るさが暗くなる。しかしリアリティを極限にまで追求するなら、このような写真でも構わないか。コスプレ写真というとストロボ・ソフトボックス・アンブレラの三種の神器を使って顔を明るく綺麗に撮るという固定観念がここ数年の流行のため脳裏に蔓延りがちだが、時にそのような観念を打ち破って敢えてストロボを使わずにその場にある光だけで撮るのも一興だろう。