単焦点レンズでボケ表現を追求する – 街中コスプレイベントで人の写り込みを防ぐ撮影方法

街中イベント、そこでしか得られないボケ表現を追求する。
街中イベント、そこでしか得られないボケ表現を追求する。

みのおキューズモールで開催されたアコスタでコスプレ撮影してきた。一般の客やコスプレイヤーがたくさん。さてどう撮るか。

アコスタのような街中イベントでは、モデルから距離を取って撮影できるからのびのびと撮れる反面、無関係な他の人をいかに写り込まないようにするかという課題がある。そこでこの日は55mm、85mm、200mmの単焦点レンズばかり使っていた。要は明るいレンズで暈かす。こういう場所でF4とかF8とかいう設定で撮ろうものなら総てが写り込んでしまう。

昨今は人々の肖像権の意識も高まっている。以前テレビで見た例を挙げると、新宿で長年写真を撮っている或るプロカメラマンが、最近は通りすがりの一般人に声をかけても撮影を断られることが多くなったという。インターネット社会の到来で人々の肖像権に対する意識が高まったのだろう。昔なら雑誌に載ってもせいぜいそれを観る人の範囲は知れていた。発売から1ヶ月が過ぎれば在庫になる・店舗から撤去される・購入されても1度読んだら本棚にしまわれ2度と顧みられなくなる・古紙回収に出される。しかしネットに上がった写真というのは世界中の人間がいつでも簡単にアクセスできる状態にある。また写真の感想もネットにいつ何時と書かれる。ネットのない時代ならテレビにしても雑誌にしても、お茶の間や仲間内で感想を述べ合う程度だったが、今はインターネットで全世界に向けて感想を発表・共有することが出来る。この違いが一般人の肖像権に対する意識の高まりを生じさせたのだろう。

不要な写り込みを防ぐ撮影手法

関係の無い人の写り込み問題の対応策として、以下のような方法が考えられる。

  • しゃがんで撮る。
  • 被写体に近づいて撮る。
  • 背景を単焦点レンズで思い切り暈かして撮る。
  • 被写体で背景の人を隠す。

写真の背景に不必要な人通りが写り込まないようにする9つの撮り方

しゃがんで撮ると、遠くの人は写らなくなる。しかしこれでは近い人は写り込むので十分ではないし、しゃがんで撮った構図が気に入らない場合もあるだろう。モデルの正面の高さから撮りたいという時もあるし、その方が多いかもしれない。

広角レンズに付け替えて被写体に近づいて撮れば、遠近感が効いて背景の人たちが小さく写る。ただし広角表現というのを、コスプレイヤーは余り好まない。描写の歪みが強いからだ。11mmから16mmのような超広角ならエッジの効いた表現になり好まれたりもするが、24mmや35mmのような広角で大きいF値で撮ると空間に締まりのない中途半端な表現に陥りやすい。男装でも女装でも、ポートレートのような、50mmや85mmの焦点距離のレンズで撮った写真が好まれる傾向にある。

そこでせっかくの野外イベントなので、50mmから85mmの単焦点レンズに付け替えて、F1.4やF2などの小さいF値に設定して、背景を思い切り暈かして撮る。これで人の映り込み問題は大体は解決する。写り込んではいるが、誰か分からないほど暈けているので判別できない。

被写体で背景の人を隠すという手もある。ふと遠くを歩いている人や、後ろで撮影しているコスプレイヤーを、自分が撮影しているコスプレイヤーで隠して撮るというやり方だ。これは写り込みを防ぐ相手のいる場所によるから、構図が限られてしまう。

これらのやり方をミックスさせて、なんとか背景に人が写り込まない、もしくはボカして誰なのか判別できないように撮る。背景を思い切り暈かすやり方が一番確実だ。

その場所でしか得られない暈け表現

85mm | F1.4 | 1/800s | ISO200
85mm | F1.4 | 1/800s | ISO200

さて問題は背景を暈かすと、せっかくの背景が判別できなくなるという懸念だが、それは単焦点レンズの焦点距離によって異なってくるし、場所によっても異なってくる。

200mmの望遠レンズで撮ると、暈けはするがモデルと距離を結構取るので、写る場所によっては背景はしっかり写っている。85mmで撮ると、モデルにより近づけるので、結構背景がとろとろに暈けることが多いがこれも場所に寄る。

早い話、そもそも聖地ではないのだから、別に写真の中にロケ地の風景を殊更主張したくなければ、野外でも暈かして撮った方が良い。特に街中イベントの場合は有名な企業名などの看板も写り込むので、必要なければボカした方がそれらが曖昧になり、綺麗に撮れる。余り企業名が主張しすぎると視線が広告などで見慣れているそちらに誘導され、モデルの魅力を半減してしまう事にもなりかねない。

200mm | 1/60s | F2.8 | ISO200
200mm | 1/60s | F2.8 | ISO200

ここでしか撮れない暈けの表現というのもある。イリュミネーションにしても、そういう場所を見つけるのは大変だが、イベントにイリュミネーションがあれば、暈かして撮ることで、そこでしか撮れないキラキラしたイリュミネーションを背景に撮れる。上に掲載した写真もイリュミネーションとお店の灯りを暈かして、そこでしか得られない暈け表現を得ることが出来た。イリュミネーションの木の側にはたくさんのコスプレイヤーが集っていたが、これらも暈かすことで判別できないようにした。

日中の街並みにしてもそうだ。背景を思い切り暈かすことで得られる表現もある。陽光が川に反射していればそれを暈かすとキラキラとした表現が得られる。

55mm | F1.4 | 1/2500s | ISO200
55mm | F1.4 | 1/2500s | ISO200
85mm | 1/200s | F1.4 | ISO400
85mm | 1/200s | F1.4 | ISO400

ここでしか撮れない建築物のボケ表現、そこでしか撮れない暈けの表現を楽しむという発想の転換も必要だ。