雨を線の形で撮る方法!

スローシャッターで雨を線のように撮る。
スローシャッターで雨を線のように撮る。

おそらく1年半ぶりに雨撮影を敢行してきた。この日は朝から雨。正直雨の日の撮影はきつい。何がきついかと言ったら、荷物が重くなる。雨撮影をするとなると野外でもストロボを数台と小型三脚を持っていかなければならない。それにストロボが風などで倒れる危険とも隣り合わせなので、決して楽な撮影ではない。壊れたら修理代が18,000円ほどかかる。

この日は更に、屋内での撮影がメインだったので、ロールレフに加えてソフトボックス一式を持ってこなければならなかった。当然荷物が更に重くなる。そして最寄り駅から撮影場所までの距離がやや長い。

というわけで行くまでは雨も降っているし荷物嵩張って重いのに傘も差さなきゃいけないしで鬱々としていたのだったが、実際に現場について撮影を開始すると様々な厄が降りたかのように体も軽快になったのだった。

雨撮影と言うと2種類の雨の撮り方がある。ストロボを光らせて雨粒を丸く止まった状態で撮るか、ストロボなしで雨を線のようにして撮るか。

この日はてるてる坊主なども持ってきて貰っていて、すっかり雨撮影仕様にがらりと変更していたのだった。てるてる坊主を軒先につるすシーンとなったときに、後ろからストロボを光らせて雨粒を丸く止まらせて撮ってみたのだが、今にして思うと、雨を線で撮った方が良かったのではないだろうか。

「でも雨を線で撮るのって難しいですよね。写りにくいですし」

と言われて、そうだったなぁと過去を振り返り、妙に納得する。しかしあっちこっち向いている前後バラバラの4人全員に小気味良くストロボを当てるのって難しい。奥の子が暗いので明るく撮ろうと光量を上げれば、手前のこの背中にストロボが当たりすぎたりする。55mmで撮っていたが、ストロボで止めた丸い雨粒が少し弱かったので、強調しようと85mmや200mmの望遠レンズに付け替えて撮影したりもした。雨粒は強調されたが、強調されすぎのような感じもある。光の魔術師イルコ氏が率先して使っている135mm辺りのレンズで雨撮影は撮ると、モデルと雨粒の比率がちょうどバランスが取れて良いのかもしれない。同じ距離から撮ってトリミングという手もあるにはあるが。

四人縁側で外の方を向いて佇む写真も撮った。

85mm | F2.8 | 1/250s | ISO 500
85mm | F2.8 | 1/250s | ISO 500

やはり雨粒をストロボで止めるよりも、ストロボなしの自然光のみで、雨も線にして撮る方が雰囲気が出て良い、ということで、ストロボをオフにして、カメラの設定も変えた。

シャッタースピード1/125秒。雨が理想的な線にはならなかった。
シャッタースピード1/125秒。雨が理想的な線にはならなかった。
シャッタースピード1/40秒。理想的な線になった。
シャッタースピード1/40秒。理想的な線になった。

雨を線に撮るためにはシャッタースピードを1/40秒に設定したのだが、今にして思えば、人物の方のストロボはOffにせずにスローシャッターで撮れば、人物は明るく、外の雨は線に撮れたのではないだろうか。モデルから漏れたストロボ光が外の雨に当たってしまう恐れはあるかも知れないが。スローシャッターで雨にストロボが当たってしまうと、雨の線の起点だけが丸くなりマチ針のような形になってしまうのであまり宜しくない。

シャッタースピード1/125秒。雨の先端が丸くなる。
シャッタースピード1/125秒。雨の先端が丸くなる。

雨を線で撮るためのカメラの設定

85mm | F4.5 | 1/40s | ISO 200
85mm | F4.5 | 1/40s | ISO 200

シャッター速度1/40秒・F値4.5・ISO感度200に設定した。

シャッタースピードをスローにすることで、降雨が線を描くように写る。F値は4.5まで上げてみた。F1.4などで撮影してしまうと、ピントを合わせる人物の後ろにある雨がボケてしまい、雨の線が強調されなくなるという懸念から、絞って撮った。ISO感度は200。これは好みの明るさで上下させるが、今回は白い衣装のコスプレイヤーが二人いたので、白飛びを防ぐために高輝度側・階調優先モードにして撮影したため、最低ISO感度が200となっている。上の作例はF4.5迄絞り、ISO感度を上げなかったために暗めになってしまったが外の明るさは適正のように思われる。

写真の明るさによる雨の描写の違いについては、以下に上げる作例写真で確認して頂きたい。人物は暗めとなったが、後から暗い部分だけ持ち上げることも出来る。ガンマ調整のチャートで、左側の軸を-1.84迄大きく開けたが、輝度ノイズはあまり気にならなかったが、色ノイズがやや目立った。ノイズ処理値がそれぞれ1.3と低めなので、色のイズだけ処理値を上げてみる。またISO感度200なので多少明るさを上げても鑑賞には問題ない。

背景の緑は暈かしたかったので、85mm中望遠での撮影を続けた。F1.4でも撮ったが、背景が良くボケて被写体が強調され、他の設定を変えていないので写真がパッと明るくもなり良いのだが、線になった雨もボケてやや弱くなる。

85mm | F1.4 | 1/40s | ISO 200
85mm | F1.4 | 1/40s | ISO 200

現場の背面液晶モニターで確認してみると、果たしてちゃんと線になっている雨が写っているのかどうか、ちょっと確認しづらかった。あんまり写っていないんじゃないかという実感を持ったが、家に帰ってパソコンのモニターで確認してみると、雨の線がきちんと写っていて喜ぶ。

85mm | F2.2 | 1/40s | ISO 200
85mm | F2.2 | 1/40s | ISO 200

1/50秒に変えてみると、下の写真のような雨の線になった。

85mm | F2.2 | 1/50s | ISO 200
85mm | F2.2 | 1/50s | ISO 200

1/40秒と1/50秒、雨の描写はそう変わらないだろうか。この日の雨は勢いよく降っていたので、雨の振り方によっては最適なシャッタースイードの値が変わってくる可能性もある。

雨が写っていないように思えて、意外と写っているものだ。やはりシャッタースピードが速いと長い線の雨には写らないので、スローシャッターで挑戦したい。三脚なしで手ブレを防ぐためには撮影現場に応じて各自工夫が必要となる。