ガーデンミュージアム比叡 – まほろば探訪 第40回

フランス印象派の絵が美しい庭に飾られているガーデンミュージアム比叡。
フランス印象派の絵が美しい庭に飾られているガーデンミュージアム比叡。

びわこ花火大会を撮りに行こうと、どこで撮れば良いだろうと調べてみたら、ガーデンミュージアム比叡から撮影した花火写真が出てきた。ではそこへ行こうということで公式ホームページでアクセス方法を調べて、翌日だったか翌々日だったか、京阪電車と叡山電車、更には叡山ロープウェイを乗り継いで行ってきた。

叡山電車は途中から路線が二手に分かれ、一方は八瀬比叡山口、もう一方は貴船口や鞍馬の方に出る。貴船口と言えば、貴船神社の雪をかぶった朱い灯籠の写真で有名で、鞍馬の方は駅前の真っ赤な天狗の大きなモニュメントと鞍馬寺で有名だ。義経が幼少のみぎりに修行した寺だったか。

今回は八瀬比叡山口で降りる。八瀬比叡山口の駅と言えば、ここから少し歩けば新緑や紅葉のリフレクションで有名な瑠璃光院に辿り着く。それなら京阪電車や叡山電車ではなく、阪急電車で四条河原町まで出てそこからバスで八瀬比叡山口近くの停留所で降りた方が、1日乗り放題のプリペイドカードもあるし交通費を節約できるのではないかとも考えたが、夏の時期はいい古都チケットは販売していない。それに終始電車の方が何かと楽だろうとも思った。それにお得な叡山ロープウェイとのお得な切符が出町柳の駅で販売されている。この日は午後3時以降だったので、切符が割引価格で販売されていた。

叡山ロープウェイの乗り場。
叡山ロープウェイの乗り場。
中継駅の休憩所。
中継駅の休憩所。

緑萌える夏。叡山ロープウェイを乗り継いで、ガーデンミュージアム比叡に辿り着く。何がミュージアムかというと、フランス印象派の画家たちの複製画がところかしこに飾られている。だけでなくモネの睡蓮の庭まで再現されている。

モネの睡蓮の池を模した景色がひろがる。
モネの睡蓮の池を模した景色がひろがる。

更にはルノワールのあの有名な『日傘の女』が飾られているのだが、太陽が画と同じ逆光の位置になるよう配光にまで綿密に設計されている。そのような庭なので美術好きの人にはたまらないだろう。

逆光になる位置に配置されたルノワールの「日傘の女」。
逆光になる位置に配置されたルノワールの「日傘の女」。
光の溜まりに浮かび上がる絵。幻想的な光景。
光の溜まりに浮かび上がる絵。幻想的な光景。

モネ、ゴッホ、ルノワール・・・。ゴッホと言えば日本人受けする画家だ。なぜだろう。ゴッホは日本に憧れていたという。浮世絵の絵に魅せられてまだ見ぬ日本を夢見ながら、自身の絵に日本画のモチーフや構図を取り入れていった。ゴッホの死後、日本では武者小路実篤ら白樺派が熱心にゴッホを紹介し、フランスに出かけてはゴッホの関係者と親しく交流するなどして、日本に広くゴッホが知れ渡ることになる。

ゴッホの人生も関係しているかもしれない。生前のゴッホは不遇の人だった。晩年には共同生活を営んでいた画家仲間のゴーギャンと不仲になり、精神を病み、自らの耳を切り落とし女性に送りつけるなど奇行が目立った。芸術家にはよくあることかもしれないが、そのような気性の激しい行為が周囲の無理解や軽蔑を生み、ゴッホ自身を追い詰めていった感がないでもない。

自身の信じる芸術に他を顧みず一心に打ち込んだゴッホの姿は、職人芸を愛する日本人、あるいは判官贔屓の日本人の心を打つのかもしれない。それに何よりもまして、遠いフランスの地で、言葉も肌の色も全く違う芸術家が、日本の浮世絵の影響を受け、日本に憧れ、絵に日本の要素を取り入れて描く。日本を愛してやまなかったゴッホの半生に、日本人は人種や国境を越えて親近感を覚え惹かれるのだろうか。

ガーデンミュージアム比叡から臨む琵琶湖沿岸の街なみ。
ガーデンミュージアム比叡から臨む琵琶湖沿岸の街なみ。

夜にはキャンドルナイトも催され、カップルなどがちらほらと歩いている。しかしお目当てはなんといっても琵琶湖花火大会だろう。すでに夕方頃から琵琶湖を見下ろせる舗道に、観光客やカメラマンたちが椅子や三脚やレジャーシートを置いて場所取りに余念がない。

スタッフがキャンドルに一つ一つ明かりを灯していく。
スタッフがキャンドルに一つ一つ明かりを灯していく。
日が暮れ始め、ポツポツと街の明かりが灯り始める。
日が暮れ始め、ポツポツと街の明かりが灯り始める。

夜も暮れて花火が打ち上がり始める。初めのうちは小さかった。近くに居た家族連れはガッカリして三脚を畳みその場から離れていった。おそらくキャンドルナイトの方を撮りに行ったのだろう。

しばらくすると大きな花火が次々と打ち上がり始めた。先ほど上がったのとは比べものにならないほどの本格的な花火の数々が琵琶湖と夜空を染める。

広く横に拡がる花火は圧巻。
広く横に拡がる花火は圧巻。

これはまた来年訪れたい。しかし場所取りが大変そうだ。車のある人はここを下ったところにある駐車場あたりで撮影していて、花火撮影目当てのカメラマン達は大方そちらの方に陣取っているという。徒歩では行けないので、おそらくここでの撮影になるだろう。今度来るときは早めに来て、レストランで美味しいシチューを食べたい。