天神祭 奉納花火 – まほろば探訪 第58回

天神祭 奉納花火

都島区がどの辺りなのかよく覚えていないのだが、8年ほど前に突発企画のメイドカフェで都島区のどこかの事務所の地下スペースを借りて、ごくごく少数でメイドカフェじみたものが開催されたのを、頼まれて食べに行った記憶がある。店の名前もなくどのような企画イベントの名前だったのかも覚えていない程度のメイドカフェだ。あれから8年近くも経つのかと思うとゾッとするのだが、今回訪れた天神祭の奉納花火をどこで見るかと調べてみたら、都島区辺りもスポットに含まれていて、ふと雑居ビルの地下で開催された即席メイドカフェのことを思い出した。

天神祭の花火大会には3,4年ほど前に一度だけ手ぶらで遊びに行ったことがあった。やけに蒸し暑くて人が大勢だったことは覚えている。川岸辺りで洒落た小綺麗な屋台が並んでいて、チケットを購入すると中に入れると行ったような催しだった。その年はよくポートレートを撮っていた。10代後半のモデルのような出で立ちのスラッとした女の子で、将来は大学を出てキャリアウーマンになりたいと言っていた。確かにスーツが似合いそうだったし、メイクをすればキャリアウーマンのイメージに見事に填まることが容易に想像できた。その子も天神祭に来ていたという事で、ちょっとしたやりとりをSNSで交わした覚えがあるのだが、もう数年前のことなのでハッキリとは覚えていない。

今回はカメラと三脚を持参してきた。どこで撮るかという問題になるが、天神祭の奉納花火を撮るのは初めてなので、どこで撮れば良いのかさっぱり分からない。ネットで「天神祭」「撮影スポット」で調べたら、ブログが出てきて、帝国ホテル裏の河川敷が良いと書いてある。そこでさっそくJR桜ノ宮駅を降りて、徒歩7分くらいの河川敷に行ってみたのだが、本当にここに花火が上がるのだろうかと、木々が被っているのでベストの場所が見つからない。少し歩いたら木々が覆っていないひらけた空が見え、カメラマンの物とおぼしき三脚と椅子が置いてあった。レジャーシートが敷いてあり、その上に「カメラ」と書かれた段ボールの紙片が置いてある。なるほど場所取りする位なのだから、ここがベストスポットに違いないと空いている場所にスタンバイしてみた。よくある植え込みの間の土。座ると汚れる。しかも前の手すりには鳩の糞。とりあえず駅前のコンビニで買った顔を吹くウエットティッシュで手すりを綺麗に掃除してから、溜息をつき、前の景色を眺める。鬱蒼とした木々に、細々としたビル。

そういえば来る途中で、ベテランカメラマンとおぼしき二人の老人が炎天下の下で腰を下ろして夜を待っていた。大阪城が見え、ビジネスビルも見える。それに川には船のような出で立ちの観覧席が設けられていた。提灯がたくさん灯っているからきっと夜になると綺麗だろう。それに川にはたくさんの大きな船が流れてくるはずだ。

ということで踵を返した。午後2時半。太陽がアスファルトを照りつける。コンビニで買ったアイスを二個食べつつ、大阪城の方を眺める。ここであっているのだろうか。それとももっと良い感じに撮れる場所があるのではないか。電子書籍を読みながら時間を潰し、ふと思いついたように「天神祭」「花火」で画像検索してみると、目の前に広がる光景と全然違う写真が出てくる。失敗だったか?しかし既に午後4時を回り、欄干前は花火見物目当ての人たちで大勢埋まっている。少し気分が萎えながら午後7時半の花火の打ち上げを待った。

夕焼けた空。夕焼けた空。皆空を振り返る。
夕焼けた空。皆空を振り返る。

花火が上がる前に、屋根のない大きな船が川を流れる。船渡御と言うのだそうだ。日清食品や、大阪検定、関西大学、その他いろいろな船が川を流れていく。他の船や河岸に停泊している五代友厚船とすれ違う度に、また橋の上の花火見物の人たちと目が合う度に「うーちましょ(パン、パン)、もひとつせ〜(パン、パン)、いおうて三度(パパン、パン)」という大阪締めが交わされる。この優しい響きのする大阪弁を聞く度に、ふと商人の町大坂の歴史の息吹を感じるのだが、同時に何かこう大阪という土地のしがらみに取り込まれるような気がして軽い抵抗感を覚えたりもする。

船渡御(ふなとぎょ)

さて大きな音と共に花火が打ち上がった。しかしどうも撮る気がしない。やる気がない。ピントも合わせたか合わせなかったか。船の提灯にピントを合わせてその後ろの花火の打ち上げ場所である木々に合わせなかったのではないか。ここは撮影のベストスポットではないかも知れないという気持ちが気分を萎えさせる。しかし目の前に上がる花火は大きく、楽しい形を次々と見せてくれる。

天神祭 奉納花火 天神祭 奉納花火

まぁしかし考え方としては悪くない。花火だけだと寂しいので、船も撮りたい、提灯も撮りたい、川を流れる船の光跡も入れたい、ビジネスビルの明かりも入れたい、ライトアップされた大阪城も入れたい、と考えていくと、この場所に落ち着いたのだ。

天神祭 奉納花火

花火撮影は難しいもので、恐らく10回くらいしか撮りに行ったことがないから、スターマインがどれなのか、どの花火の色が明るくてどれが暗いのかという事もよく分からない。花火のプログラムも入手できないから、どんな種類の花火が上がるのかも分からない。結局勘に頼るしかない。失敗も多いので、まぁどうでもいいや、という軽い気分になる。

天神祭 奉納花火 天神祭 奉納花火 天神祭 奉納花火

しかしなんだかんだ言いながら、花火撮影は楽しいし、花火を見るのも楽しい。夏の熱気が好きなのだ。花火が終わってからは相変わらずの混雑で、のんびりと船を撮っていた。

船渡御(ふなとぎょ)
船渡御(ふなとぎょ)

花火大会だけでなく家に帰ってからも写真を見たりよく撮れたのを選んで現像したりトリミングしてみたりTwitterに上げたりと楽しみがたくさんある。結局楽しかったんじゃないか。明日もまたどこかへ遊びに行きたいと思いながら眠りについた。