東寺 教王護国寺 – まほろば探訪 第34回

桜に彩られた五重塔。桜の時期は東寺がオススメ!
桜に彩られた五重塔。桜の時期は東寺がオススメ!

東寺 – 教王護国寺。歴史を紐解くと、京都にあるこの古い寺院は、様々な歴史的事件に関わっていることが分かる。

  • 1336年 足利尊氏が陣を敷き、後醍醐天皇側の新田義貞が東寺を攻撃。
  • 1441年 嘉吉の徳政一揆。土一揆が東寺を占拠。
  • 1568年 織田信長が足利義昭を奉じて上洛。東寺に陣を構える。

他にも様々な歴史的シーンで登場するが割愛。京の中心部にあるために幾たびも戦乱に巻き込まれているが、今はそのような戦火をくぐり抜けてきた寺院とは思えないほどに、威風堂々とした佇まいをビルが建ち並ぶ現代の京都の街中で誇示している。

五重塔としだれ桜。
五重塔としだれ桜。

東寺 – 教王護国寺は平安京遷都(794年)の直後に建立された国立の寺院で、嵯峨天皇の御代に真言密教の弘法大師空海に下賜された平安京の遺構を伝える世界遺産の寺院となっている。平安京時代の寺は東寺しか残っていないらしい。他は数多の戦乱であらかた焼けてしまったのだろうか。戦国時代に京の都は幾たびも戦火に見舞われている。太平洋戦争中はアメリカ軍高官による文化財保護の観点から大都市の中で唯一大規模な空襲を免れたと長らく信じられてきた巷説があるが、どうも最近ではその説も怪しいらしく、原爆投下の第一目標として京都が計画されていたので、その効果を調べるべく空襲が控えられたとか、長らく天皇の住まいで日本の首都機能を果たしてきた長い伝統文化を誇る京都に原爆を落とせば、日本人のアメリカ人に対する感情を著しく害するだけでなく、当時台頭していた共産主義国家ソ連に靡く恐れもあり、戦後の占領政策に支障を来すという政治的理由が有力視されている。戦後アメリカは東アジア諸国が赤化するのを防ぐために、方々に介入することになるから信憑性が高い説だろう。

しかしこの寺院、3度ほど通ったが、空海のお寺だとは知らず、曼荼羅についても少しだけ聞き覚えがあるが、そもそも仏教にも詳しくないので、どこに何があるのか何のための建物なのかさっぱり分からない。目につくのは大きなしだれ桜と桜並木と五重塔。どうもそちらの華やかなエリアにばかり気を遣られて、どのようなお寺であったか、じっくりと巡ったことがなかった。地図を広げてみると、なかなかに広い敷地で、いくつもの建物が点在している。

食堂と書かれている建物があり、てっきりお食事処かと思ってお腹も空いていたし近づいてみたらどうも違うらしい。「じきどう」と呼び、お坊さんが修行する場所とのこと。

入場口の門を隔てて南にある講堂と呼ばれるところは、東寺の中心に位置しており、この寺の建物群も様々な戦火に巻き込まれて何度か焼けているが、講堂は最重要拠点らしく真っ先に再建されたとか。

その南に隣接するのが金堂で、これは絶景写真の本などで、池に映る桜と金堂のリフレクション写真でよく見かける建造物だ。

池に映る金堂と桜のリフレクションが美しい。
池に映る金堂と桜のリフレクションが美しい。

他人事のように書いておきながら自分も去年リフレクション写真を撮っていた。本に載っていた絶景写真は上からも桜が垂れていたので、今年リベンジしたい。

超広角レンズで撮影したので、実際にはこんなに広々とはしていない。
超広角レンズで撮影したので、実際にはこんなに広々とはしていない。

地図を見るといつも足を運んでいるのは東寺の南東にある1/4の敷地内の建物で、後は何の建物なのかよく分からない。

北側入り口入ってすぐの大きなしだれ桜がとても見栄えが良く、春になると優美に咲き誇る。東寺は世界遺産にも登録されているが、以前一度だけコスプレイベントが開催されたことがあり、世界遺産で撮れるという触れ込みだったので、赴いたことがあった。道々に桜が綺麗に咲き誇り、浮き足だった観光客たちも大勢。まことに賑やかで暖かい春の光景だった。

優美で可憐なしだれ桜。
優美で可憐なしだれ桜。

北側の敷地には洛南会館と呼ばれる現代的な旅館も建っていて、確かコスプレイベントの時にここの畳の部屋が更衣室代わりとなっていた。

それから数年の時を経て、二度目の訪問。しかしイベントで訪れたときとは異なり夜桜だったので、全く異なる景色が目の前に広がっていた。以前訪れたときの記憶とは違う夜桜の景色。ただただ溜息が出るほどに美しい。桜に気を取られていたために溝に足を引っかけて盛大に転けてしまい、近くの人に心配された。

雄大なしだれ桜。
雄大なしだれ桜。

ここの桜は何度でも訪れたくなる。実際にこの年は二度訪れた。夜の特別拝観だったが、昼に来てまたあのイベントの頃の記憶を甦らせたいものだ。時が経つのは早い。

入場料が500円と安かったこともある。同じ年の秋に訪れたときは1,000円になっていた上に、紅葉の時期が微妙に過ぎていたので見送った。しかし桜の時期は何度もで訪れたくなる。

五重塔と桜のリフレクションが美しい。
五重塔と桜のリフレクションが美しい。

1度目は三脚なしで。2度目はリベンジで三脚持参で撮ったが、どちらも綺麗に撮れた。基本的に暗めの写真というのは高感度撮影でもノイズはそんなに気にならないし、RAWモードで撮っておけば、高性能RAW現像ソフトで綺麗にノイズ処理してくれるから、何とでもなる。

三脚がなくても綺麗に撮れる。
三脚がなくても綺麗に撮れる。

JR京都駅から南西に位置する東寺。歩いて行けば20分くらい。京都市営バスや近鉄電車でも行けるが、近鉄電車の場合は駅から少し歩かなければならない。東寺東門前で止まる207号系統の市バスが一番東寺の入り口に近いし楽だろう。

夜桜。4月に2度訪れたと書いた。そもそもなぜ訪れたいと思ったのか。コスプレイベントが開催されていた寺院だったからというわけではなく、阪神電車に乗っていたら中吊り広告で東寺の夜桜の写真を見て、これを撮ってみたいと思ったからだ。1度目は月が出ていて、月と五重塔とのコラボを楽しめた。

月と五重塔。
月と五重塔。

二度目は風が強く、しだれ桜の花びらが光を帯びながら舞うのが美しかった。

いつまで眺めていても飽きない。
いつまで眺めていても飽きない。

何度でもその姿を愛でるために訪れたい東寺。秋の時節には紅葉の盛りの時を逃したが、春こそはまたあの桜に逢えるのかと思うと今から胸が小躍りする。