みなと神戸海上花火大会を今年は摩耶山の掬星台(きくせいだい)から見てみようという事で、ケーブルカーとロープウェイを乗り継ぎ行ってきた。掬星台、星を掬う台。手のひらを伸ばしたら星がすくえそうな程に夜空が近いという意味だろうか。今現在は地上の夜景があかるいので星は見えそうにない。
途中下車して、少し歩く。駅舎を出て坂を少し上がり右に曲がると山上茶店跡というのがあり、草ボウボウだったが、解説書きの碑だけは立っている。
他の看板を見ると、摩耶山は遺跡だらけらしい。朝日歌壇の他に、今は廃墟となっている摩耶観光ホテル、別名マヤカンをマヤ遺跡になぞらえたりしている。ネットで調べてみると、寺の門前街でちょっとした観光地のように賑わっている様子が当時の白黒写真から窺える。寺が焼けてしまい、廃れてしまったとのことで、もし現存していたなら、赤目四十八滝の入り口辺りと似た雰囲気だったのかも知れない。
星の駅まで行き、摩耶山の掬星台に辿り着く。山頂は標高702m。掬星台の標高は690mとなっている。
摩耶ロープウェイの西には六甲ロープウェイもあり、そちらの方はオルゴール博物館や六甲山牧場などの施設が建ち並んでいる。初めて来た時は摩耶山町付近にすべての施設があるのかと思っていたが、実際にはバスで移動しなければならないほどに点在している。
三脚を立てて街並みを撮っていった。六甲山最高峰で撮影した時と比べると広さが異なる。
この日は七夕祭りをやっていて、短冊のぶら下がった笹が3,4本ほど飾られていた。
ブルーアワーの写真は今回はあまり撮れなかった。
19時30分に花火が始まったので撮影していった。
花火撮影後に夜景を撮る。
これは神戸市民やその近郊にお住まいでまだ見たことがないという方は是非すぐにでも見ておくべきと強くお薦めしたい夜景だ。広告写真で見ると海も占めていて横に細長いのでそれほどでもないかなと思っていたのだが、実際に見てみると目の前に拡がる夜景は広大でまるで宝石の海のような輝き。昔は100万ドルの夜景と言われていたが今現在は1000万ドルの夜景と呼ばれている。
1000万ドルの夜景という言葉の根拠
1000万ドル、2018年8月の為替レートで日本円に換算して約11億円。意外と少ない?この1000万ドルという数値は何が根拠となっているのだろう。ネットで調べたら一発で出てきそうだが、敢えて色々推論してみた。
掬星台から見える夜景の土地の評価額が1000万ドル。いやいくら何でも少なすぎるだろう。では今見ているこの夜景が生み出している商業価値とか経済効果とか総生産の額が1000万ドル?これも少なすぎる。では今目の前に拡がっている夜景の1日の電力の料金だろうか。1日10億円として、365日で3650億円。関西電力の一年の売上高を決算報告書を見て確認してみたら、答えが出るかも知れない。平成29年度の売上高は3兆1136億円。枠内には収まる数値だ。
さてネットで調べてみることにしよう。すると100万ドルの夜景と呼ばれていた頃は、一ヶ月の電力消費に対する電気代とイコールというような話が出てきた。1日の電気代ではなかった。その後、六甲摩耶鉄道が「掬星台から見た市町で1日に消費される電気代」を基に算出すると1000万ドルになったという。為替レートが1ドル360円の固定相場制の時代は100万ドルの夜景だったが、その後1971年のニクソンショックの影響による変動相場制の導入を経て、更には1985年のプラザ合意で一気に円高に向かい、今現在は1ドル100円を軸に上下20円の値幅で変動している。円の価値が高くなるにつれて、ドル換算の夜景の価値も高くなっていった上に、高度経済成長を経て家やビルや道路などが増えて電灯などの数が多くなったという事だろう。
日本三大夜景の1つとしても有名で、神戸、函館、長崎の3つが三大夜景に認定されている。世界三大夜景というのもあり、誰が指定したのかは不明だが、香港、函館、ナポリが挙げられている。しかし写真で見ると、摩耶山の掬星台から見える神戸・芦屋・西宮・尼崎・大阪の夜景が最も広大で美しいでのはないだろうか。
電車とバスで摩耶ケーブル駅に向かい、摩耶ケーブルと摩耶ロープウェーを乗り継いで15分くらいで到着する手軽さも良い。ケーブル駅までの神戸市市バスとケーブルやロープウェイ、六甲山のシャトルバスなどが利用できる六甲摩耶1dayチケットや、それらに加えて阪神電車や阪急電車も使える六甲・まやレジャーきっぷも期間限定で販売されているので大阪からでもアクセスしやすい。レジャーきっぷの販売所は阪神御影駅・阪神梅田駅・阪神神戸三宮駅の駅長室などと限られているが、途中から乗った人は、各駅でレジャー切符を購入時に購入した通常の乗車券の分を払い戻してくれるから、損しない。
いつもは地上から撮っているあれやこれやの建造物も、こうして山から眺めるとまた違った印象を受ける。
それにしても摩耶ビューラインの職員の方々は皆さんとても親切で行き帰りとても心地よい体験をさせて頂いた。いやね、観光施設によってはホント有り得ないような対応取るところもあるからね。飲食店にしてもそうだけど同じ業種でも天と地ほどの差のある接客対応のお店とかあるから、そういう店に入ったら損した気分だけれど、この日は本当に心地よかった。案内アナウンスも懇切丁寧でロープウェーを乗り逃しそうにない。もしミシュラン接客ガイドなんて本があれば、摩耶ビューラインは間違いなく5つ星に選ばれていることだろう。
穴場スポットが穴場スポットでなくなったため、掬星台から花火を閲覧するのは難しい
掬星台にはふたつの展望台がやや離れてあり、そこから夜景を見渡すことが出来る。この日はみなと神戸海上花火大会だったので、朝からカメラマンや一般の花火閲覧者たちが場所取りしていて、正午過ぎに訪れた頃には三脚とレジャーシートで既に花火が見える位置は2/3ほど埋まっていた。徐々に花火目当ての人たちが訪れだし、夕方頃には後ろの方はレジャーシートを敷いて待機している人たちがいた。
さて摩耶山の標高が702m、掬星台は標高690mで、花火の打ち上がる高さが200mくらいとすると、上から下に見下ろす形になるので、2段構えの展望台でも各台の3列目以降は花火が見えない。実際3列目くらいの場所から撮影していたが、三脚の隙間からかろうじて花火が見えるといった具合で、これが前2列とも一般閲覧者でぎゅうぎゅう詰めなら、隙間が出来ないので自分の位置からはジャンプしても恐らく花火は見られなかっただろう。掬星台に訪れる前や構図を決めていた時は、結構上の方まで花火が上がるのではないかと、これまでの山からの花火撮影経験から若干の余裕の気持ちがあったのだが、よくよく考えてみると、市章山や布引ハーブ園の丘は標高200mくらいなので、打ち上がる花火の高さとほぼ同じかやや低いくらいだったから、また布引の風の丘は斜面になっていたから、10列目20列目でも、最後尾からでも何とか見えたのだと、今回の撮影で思い知った。花火の途中で後ろを振り返ってみると、あれだけ人がいたのに、花火が見えないと知って誰もいなくなっていた。穴場スポットで検索してみたら、その手のまとめサイトに出てきたのだろうが、穴場スポットがインターネットで紹介されたら当然人が殺到するから穴場スポットではなくなるという二律背反に見舞われた形だ。広場は広いが展望台自体がそう大きなものではないので更に混雑しているような錯覚に見舞われたといったところだろう。また花火もそんなに大きくは見えない。猪名川花火大会などを大阪府池田市の五月山の展望台から見た時と同じで迫力には欠ける。
花火が見えなくても夜景は綺麗に見えるので、またこの日のロープウェイは行列の最後尾の乗客が(筆者のこと)駅舎内に収まるまでの午後9時20分まで運行していたので、少しだけ夜景を撮る時間があり、ついでに夜景を撮っていった。皆考えていることは同じで、一眼カメラやスマホで1000万ドルの夜景を撮っていた。一億総写真家時代の到来だ。
この日は淀川花火大会の他に2つ花火大会があり、大阪方面に目を向けると豪勢な花火が打ち上がっているのが凄く小さいがよく見えた。あと山の向こうと、海の向こうにもごく小さく花火が打ち上がっているのが見えた。
最終便は確か午後8時50分で、実際には利用客全員を収容して下まで送り届けるので1時間ほどかかるとの見積もりだったが、30分ほどだったという事になる。車でも来れる場所なので、布引ハーブ園とは違い分散できたのだろう。
摩耶ケーブル駅前のバス停の時刻表を見たら最終はとうに発車していたみたいなので、もう運行していないと思ってJR摩耶駅まで徒歩で帰ったのだが、途中三宮ターミナル行きの2番の神戸市バスとバス停手前ですれ違った。レジャーきっぷを使えなかったことが悔やまれてならない。ついでに摩耶辺りの街並みも撮影していった。その写真はまた別の機会に。