2014年に大阪梅田にある阪急百貨店の催し物会場で開催されていたエヴァンゲリオン展にも遊びに行ったのだが、今度は神戸ゆかりの美術館でも開催されるという事で、会期終了間際に駆け込みで行ってきた。前売り券は買っていたがまぁ出不精なので、それに近くにあるからいつでも行けるかと、あと今年の夏が暑すぎて外に出る気がしなかったのでギリギリでの観覧。
巡回しているみたいなのだが、以前訪れたEVA展の記憶が薄れていて違いが分からなかった。たぶん絵コンテとかの展示品の量が増えているのかも知れない。
中には透明なガラスケースのカプセルに入った綾波レイのフィギュアが良い具合に照明に当たって飾られていた。こちらは店内なので撮影禁止。一眼カメラで撮ったらきっと綺麗に撮れたことだろう。
ヱヴァンゲリヲン新劇場版の方は、EVA初号機などはフルCGと思っていたのだがセルも使っていると書いてあった。エヴァと言えばインフラの描写、インフラと言えば鉄塔や電柱や電気関係の細かなシーンなのだが、描写が細かい。
セル画のコーナー。旧エヴァテレビ版の本物。感激だけれど、エヴァにハマりまくっていた97年当時に観ていたら感激もよりひとしおだったかもしれない。
貞本義行先生の漫画版の原稿も掲載されていた。月刊少年エース専用のロゴ入り原稿を見て、目の前に本物があるんだなぁ、ガチの筆致が目の前にあるんだなぁと。当時の月刊少年エースはエヴァンゲリオン以外にも色々漫画が連載されていたのだけれど、正直貞本先生と比べてしまい他の漫画の絵のクオリティの方が満足出来ず、分厚くて場所を取ることもあり、あまり買っていなかった。あれから20年以上経ったわけだが、今現在は絵が巧い漫画家がたくさん輩出されている。当時は貞本先生のような精細なタッチの漫画を描く漫画家はほぼいなかったように思う。週間だとあのクオリティで描くのは無理そうだ。
クオリティの高い生原稿を見て久しぶりに漫画版の方を読み返してみたくなった。単行本と電子書籍で揃えてはいるのだが、実はアニメ版の方で満足してしまって最後まで読んでいない。どうも読み進めるのがつらい。
エヴァは本放送後の96年頃にハマって、TSUTAYAでカードを作ってビデオを借りて一気に見た。あれだけアニメにハマるのは後にも先にもあの時が最後だろう。97年に待ちに待った劇場版が公開されて、たしか総集編+新編の『DEATH&REBIRTH』と『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air・まごころを君に』の二編が公開された。ビック映劇という、昔から続く三宮の駅から少し離れたせせっこまい場所にある映画館でかつてはヌーベルバーグなども上映していたと聞く地下の映画館で観劇したのだが、当時、というか地下にあるその古びた映画館には座席指定や入れ替え制のシステムはなく、劇場を出なければ同じ作品を何度も見ることが出来た。確か二度見たと思う。
それからしばらくして余熱が覚めやらぬまま、神戸で開催されていた同人誌即売会に初めて訪れて熱を冷まそうとしたのだが、ミレミアムを超えて3,4年経ってから熱が冷めてしまった。今までの熱が嘘のように、なんだか作品が衒学的な知識で飾り付けられたチープな物のように思われてきた。あれだけ熱狂的だったのが嘘のように熱が引いていった。恐らくインターネットを介していろんな人たちと交流し、リアルの世界でもいろんな体験をしたからだろう。それら現実の体験がいつしか作品の体験を超えてしまった。作品の中で描かれている孤独な少年の狂おしいまでの煩悶を克服してしまった。誰かがゴダールの映画にハマるのは「はしか」みたいなものといっていたが、それと同じ類いかもしれない。思春期の頃にいっとう直撃する作品なのだと。
2006年になりヱヴァンゲリヲン新劇場版が公開されて再び観に行った。90年代の頃のような熱はもうなかったが、また自分の中でエヴァに対する愛情が芽生えつつあった。前売りチケットもヴァージョン毎に購入した。続々と発売されるグッズや食玩も買った。しかしそれらの熱狂は、どうも嘘のような熱狂のような気がしてならない。96年97年当時の熱狂が今あれば、グッズにももっとお金をつぎ込んでいたことだろう。残滓を舐めて喜んでいるような感覚もする。或いは無理矢理若い頃の熱狂を、感受性豊かな感覚を取り戻そうと、かつて自分が熱狂したアニメやイラストの新バージョンを見ているのかもしれない。若い頃の感覚が蘇ってくるのを期待しながら。
若い頃にはお金がなかったが熱狂はあった。今はお金はあるが熱狂するのが難しい。
序・破・急と立て続けに、しかし緩やかなスペースで公開され続けたが、最終章となる作品はまだ公開されていない。その間に、まるでエヴァで煮詰まった庵野秀明がそのストレスを発散するかのように、シン・ゴジラが制作され、好評を博した。ゴジラなんて今まであまり興味がなかったが、Twitterで庵野秀明監督のシンゴジラと宣伝が流れて翌日の公開初日だったか劇場に観に行ってみると、作品の中に庵野節が至る所にちりばめられていて、すっかり釘付けになってしまった。97年当時の手に汗握る熱狂が、脳への刺激が蘇ってきた。
庵野秀明監督といえば、『王立宇宙軍オネアミスの翼』のスペースシャトル発射シーンや『風の谷のナウシカ』の巨神兵のシーンを担当したことでも知られる伝説のアニメーターだ。『エヴァ』の爆発シーンの原画(動画?)も誰が描いたのかは分からなかったが、凄く精巧に描かれていた。
第6話の綾波レイのシーン。新劇場版でもリビルドされていたが、やはり凄く美少女に描かれている。これ以上ないくらいに。この原画を見ると、再びBlu-rayで見返したくなってきた。
美術館内では映像も流れていた。上空からの使徒の攻撃に備えてエヴァ初号機が鋼鉄のレーンを疾走するシーン。他にもエヴァにフューチャリングした短編アニメーションが流れていてこれは初見だった。独自の解釈でなかなかに興味深い短編だった。
ショップではエヴァンゲリオン展オリジナルの15,000円の複製原画や、エヴァストアで定期的に販売されている45,000円する複製原画も売られていた。神戸限定のエヴァンゲリオンクッキーは完売だった。会期終了間際なので仕方がない。
フィギュア(3,400円)やパンフレット(3,000円)、クリアファイルなどを購入。カヲル君のクリアファイルは売り切れていた。
最終章、シン・エヴァンゲリオン劇場版:||の公開は再来年の2020年を予定しているという。それまでにテレビ版や新劇場版をBlu-rayで見返してあの頃の研ぎ澄まされた感覚を取り戻してみるか。