白飛びと黒潰れ、どちらが気になる?

55mm |1/250s | F1.4 | ISO200
55mm |1/250s | F1.4 | ISO200

デジタルカメラは白飛びしやすいとよく言われている。特にフィルムカメラからデジタルカメラに移行した人は白飛びしやすいという感想を抱きがちだ。ネット上でも検索すればそのような投稿がいくらでも出てくる。

デジタルカメラの白とびについて(価格コム)

筆者はデジタルカメラから写真を本格的に始めたので、フィルムカメラと比べた時の白飛びしやすさの感覚は分からないが、デジタルカメラでも白飛びしやすいと感じることは多い。

特にコスプレ撮影の現場では、コスプレイヤー側からウィッグや衣装などを白飛びしないよう撮って欲しいと要望されることが多い。別に衣装もウィッグも白系だし白飛びしてても良いという親しい人もいるが、恐らくカメラマンに気を遣って遠慮しているものと思われる。撮影現場でカメラの液晶画面を介してデータを見せた時に「白飛びしてませんか?」と聞かれた時は小さな画面では確認しづらいので、ヒストグラムを表示させて白飛びしていないことを証明する。

先日金魚カフェで撮影した際も、撮り始めに撮った写真のウィッグ部分がが白飛びしていることに気づいた。キヤノンのカメラには白飛びを防ぐ事が出来る高輝度側・階調優先モードがあるのだが、これをOnにして撮っても白飛びしてしまった。最新のキヤノンのカメラにはこの高輝度側・階調優先モードの機能が更に強化されているみたいなので、いずれカメラを買い換えれば白飛びに悩まされることもないかなと期待しているのだが、このモードをオンにすると、暗い部分を明るくしてくれて、明るい部分を暗く抑えてくれるオートライティングオプティマイザの機能が使えなくなる。高輝度側・階調優先モードはキヤノンの秘密の機能なので、その詳しい仕組みについてキヤノンは回答を控えている。最低ISO感度を100から200にあげて暗めに撮り中間調を持ち上げているという仕組みらしいが、これならRAW現像でも似たようなことが出来るという事で、プロカメラマンもよく使っているのが、敢えて暗めに撮ってRAW現像時に明るさを持ち上げるという方法だ。

高輝度側階調優先の威力(デジカメWatch)

暗めの度合いにも色々あるが、余り暗く撮ると今度は黒潰れが発生するので、白飛びしない程度の暗さで充分だろう。暗い部分を後処理で明るく持ち上げるとノイズが目立つようになるのも気にかかる。ということは、キヤノンの高輝度側・階調優先モードの敢えて暗く撮って中間調の明るさを持ち上げているという説はあながち間違っていないのではないか。

さて白飛びしたウィッグは水色だった。隣の子は薄い黄色。黄色も白飛びしやすかった記憶があるが,水色もそういえば以前あんスタのキャラを撮った時にやたら白飛びしやすくて、レイヤーさんから白飛びを抑えるよう言われて四苦八苦した覚えがある。今回も同じような系統の水色だ。

頭のすぐ上にぶら下がっている裸電球が恐らく白飛びの原因だろうが、光源から大体同じ距離なのに黄色の子は白飛びしていなくて水色の子は白飛びしている。本当に白飛びしているだろうか、ひょっとしたら少しは情報が残っているのではないだろうかという一縷の望みを託して、DPPのヒストグラム表示でマウスを宛がってみたが、255・255・254とかギリギリのRGB数値が出たのもつかの間、255・255・255の表示が掠めた。しかしどちらにしても、これは誰が観ても白飛びしている。また今はRAW状態でデータを見ているが、これをJPEGに変換したら白潰れが盛大に発生するのではないだろうか。またそうで無くとも今見ている状態でも白飛びしているように見えてしまっている。

仕方が無いので撮影現場では高輝度側・階調優先モードをOnにして撮影していった。しかし今回はホラーっぽい感じで撮って欲しいという要望だったので、やや暗めの写真になるように設定していた。今度は当然黒潰れが懸念されるのだが、白飛びと黒潰れを比べた場合、感覚的には白飛びはどうもみっともないが、黒潰れはむしろ余り気にならないのではないか。なぜなら黒く潰した方が絵が引き締まるからだ。

24mm | 1/250s | F1.4 | ISO100
24mm | 1/250s | F1.4 | ISO100

また超広角で広く撮った場合、写真の端の方に余り写って欲しくない部屋の様子を黒潰れを援用することで実質塗りつぶすことが出来る。カメラを暗い設定にして、ストロボ光が届いていない不要な箇所が黒潰れすることで写真も引き締まる効果がある。

11mm |1/80s | F5.6 | ISO1000
11mm |1/80s | F5.6 | ISO1000

白飛びでも敢えて背景などを白く飛ばした方が神々しくなる場合はあるが、髪の毛やウィッグの白飛びは描写を損なう要因となってしまう。それと比べると黒潰れというのは絵を引き締める効果があるので、むしろ気にする必要がないというか意識に上ることが少ないし、コスプレイヤー側から白飛びしないようにして欲しいと言われることはよくあっても、黒潰れしないようにして欲しいと言われたことは6年ほど撮ってきて一度もない。そういえばソニーのテレビでも漆黒の黒の表現が映像を輝かせるみたいな点を売りにしていたのを家電量販店に展示されていたSONY製テレビに流れていたプロモーション映像で見た覚えがある。

白潰れは気になるが、黒潰れは気にならない。これもまた観る者の真理なのだろう。