苦手だった廃墟スペースで満足のいく写真が撮れた日 – 撮りづらいと思える場所でも必ず答えは存在する

どのような場所にも理想的な答えは存在する。
どのような場所にも理想的な答えは存在する。

苦手な撮影スペースがあると、どうしても撮るのに億劫になりそうなものだが、どのような場所でも必ず答えは潜んでいる。それは試行錯誤を繰り返して得られることもあれば、煮詰まっていた発明家の発明のようにひょんな思いつきや偶然から得られることもある。

ハコアム大阪の白廃墟のスペース。ここでストロボを炊くと、手前の蔦が白飛びしたり、またライティング機材が置きづらかったりと、色々と難しい。ならいっそ環境光だけで撮ればいいじゃ無いかとも思うのだが、せっかく重い機材を担いできたし、やはりストロボを炊いた方が顔が綺麗に写る。

というわけで前回と同じようなライティングで撮ってみた。しかし今回は色温度を3600Kに設定した。標準が5200Kか5600Kくらいだから、冷ための色となる。するとどういうわけか想像以上に出来のいい絵を導き出すことが出来た。

スペースの飾りを生かすために超広角レンズで上から撮る。16mmの歪みにも期待。
スペースの飾りを生かすために超広角レンズで上から撮る。16mmの歪みにも期待。

肌に艶があり、背景は適度に暗く見える。白から寒色にブレただけで、イメージがガラッと変わる。

脚立に登って超広角レンズで上から撮っている。焦点距離はワイド端の16mm。宝石の国という作品で、イラストを見ると腕や足が凄く細くて流線的で、うねるようなタッチで描かれている。そこで超広角レンズの歪みの特性を使って作品のようなうねりを表現できないかと考えたのだ。上から、下からと撮っていった。

超広角レンズを使うときに気をつけなければならないのは、ライティング機材の映り込みだ。ファインダーを覗いているときは被写体しか見えていないので、うっかり写り込んでしまう。まぁ写真を撮っているときは被写体の魅力に引き込まれているので周りが見えないことは往々にしてあるから、被写体よりも周辺の些末なところにまで目が行くのは、逆説的に注意散漫か被写体愛が足りないという事だろう。写り込んだライティング機材は後処理でPhotoshopで消せば良いだけの話だ。というわけでライティングの映り込みを消した。

Otusでしか撮れない写真もある

model:Minase Chii
model:Minase Chii
model:Minase Chii
model:Minase Chii

レンズをOtus1.4/55に変えて正面からも撮ってみた。F値は1.4。開放で背景がボケてくれるのを願った。果たしてこのカメラと被写体との距離、被写体と背景との距離でボケてくれるだろうかと懸念したが、背面液晶に映った写真を見て歓喜した。とても良くボケている。それにいつもと違う美しい感じで被写体が輝いている。

Otus1.4/55を購入したときに、試しに阪神梅田駅地下通路の高級感漂う案内板を撮影してみたが、液晶画面を見て、いつも使っているレンズと違うというのが伝わってくるほどだった。図らずも今回の撮影で再びその出来事を追体験する事になった。

大体F値において同じカメラの設定に出来るレンズならば、どのレンズで撮っても絵作りなんて同じなのではないだろうかと思うのだが、Otusシリーズに関しては、開放からの描写が秀逸で収差がほとんど無く、ピントが合っている部分は解像感が絞って撮っているかのように豊かでシャープに写る。故に開放F値で撮ると被写体が飛び抜けて際立つのだが、他のレンズでこれをやろうとすると、まず収差が出る、ボヤッとしているという開放で撮る事で伴う描写の欠点が出てくる。

やはりこのレンズでしか撮れない写真は存在すると実感した日だった。