東寺 紅葉ライトアップと夜間特別拝観 – まほろば探訪 第61回

東寺で見た紅葉の饗宴。
東寺で見た紅葉の饗宴。

東寺に向かうには京都市営バスの「東寺東門口」で降りるのが徒歩1分で最も近いのだが、どういうわけか「東寺」でYahoo!路線図で検索してみると、最短距離のバス停が近鉄九条前になる。そこからだと7〜10分ほど歩かなければならない。京都の別の場所からJR京都駅に近い東寺方面に向かうとなるといつもどのバスに乗れば良いのか迷う。今回は嵐山は嵯峨野方面からバスに乗り、四条大宮でバスを乗り換えることになった。そこから九条車庫行きの207系統のバスに乗ることになるのだが、先に到着したバスが「東寺東門口」に止まるとバスの停車口一覧に表示されていたので飛び乗ることにした。嵯峨野から途中乗り換えで東寺まで合わせて約1時間15分ほどで東寺に着く。

開門前の6時15分頃に着くとこれが長蛇の列。南側の交差点近く、ちょうど東寺の五重塔がある辺りまで列が長々と伸びていた。

東寺の国宝、五重塔。
東寺の国宝、五重塔。

秋のライトアップは最近始まったみたいで人が少ないと去年購入した京都旅行の紅葉特集のムックに書いてあったが、全くそんなことを感じさせない行列だった。秋の紅葉ライトアップの入場料は1000円。確か春の桜のライトアップは500円だったから、割高であるにもかかわらずこれだけの列が出来るのはやはり皆が嘆息しながら「綺麗〜」と口を揃えて言うだけのことはあるからだろう。

行列に並んでいると絶対に体が冷えてくるのが目に見えていたので、どこかの店に入り腹ごなしをすることにして大通りに向かって歩いた。しかし左右を見渡してもめぼしい飲食店がない。地図で調べると東の方にケンタッキーフライドチキンとモスバーガー、すき屋がある。久しぶりに牛すき鍋膳(すき屋での名称は牛鍋前)を食べたくなったので、すき屋に入った。食券を買うシステムだったみたいだが分からずそのまま席に着くと即座に店員が注文を聴いてくるので、うどん付きの牛鍋膳を注文した。吉野家よりも幾分か安いが野菜はほとんど付かない。しかしお味噌汁が付いてくる。入り口に美味しそうなキリンビールのポスターが目に付いたので、小ジョッキを注文した。190円。子供の頃に読んだ日本史の漫画で、明治維新の頃にすき焼き屋が出来てビールと一緒に雫を垂らしながら美味しそうに口にしているシーンを思い出して(所謂シズル的な漫画表現)、まるで村上春樹の小説を読んだらビールが飲みたくなったりスパゲティが食べたくなったりするのと同じように無性にビールが飲みたくなったのだ。すき焼きとビール、きっと合うだろう。

厨房にオーダーを通す声が入り慌ただしくなった。しばらくしてから膳が運ばれてきて一口頬張ると味は吉野家の牛すき鍋膳とそう変わらない。ごゆっくりどうぞとマニュアル通りに言われたがあっという間に平らげてしまった。ビールも旨い!

胃に撮影用の燃料を注ぎ込んで、店を出て19時頃に東寺東門に戻ると、あれだけの長蛇の列は既に解消されていた。スイスイと入れたかと思ったら、またしてもどん詰まりで皆スマホで早速写真を撮っている。会場入り口まで人垣を避けるようにして細い通路を行く。

入ってみると、春には妖艶な姿を誇っていた枝垂れ桜が気怠そうにたくさんの緑の葉を垂らしていた。その奥にはライトアップされた紅葉と五重塔。少し進むと講堂の前に行列が出来ているので並んで中に入ってみると、金色の大日如来像やくすんだ不動明王像が安置されていた。大日如来には目がありこちらを見据えているように見える。

ささっと回って遠いトイレに一旦戻り、再び紅葉の饗宴の中へ。人はそこそこ多いが日本橋ストリートフェスタのように大混雑と言うほどではない。皆スマホを片手に写真を撮っている。我も撮らねばと三脚を立てて撮っていく。

赤々と色づいた紅葉と国宝五重塔。
赤々と色づいた紅葉と国宝五重塔。

今年の東寺紅葉ライトアップのポスターにもなっていた撮影スポットに足を運んでみると、1箇所に山のような人だかり。皆スマホや一眼カメラでフォトジェニックでインスタ映えな写真を撮ろうと並んでいる。きっとInstagramに上げたりするのだろう。一億総写真家時代の到来を見ている感がある。このような風潮に批判的なプロの写真家もいるが、当の本人がバエな写真を撮って広告として流布させている一員なのだから、どうも時分だけいいとこ取りの自家撞着な批判のような気がする。業界人によくある選民意識だ。皆愉しんでいるのだから良いではないか。

人だかりは後回しにして空いているところに潜り込んでみる。撮ってみたが、どうも緑が多い。

半分緑ぃ。
半分緑ぃ。

別の場所に移動したら、これもまた金堂を据えた有名な撮影スポットだが、金堂が余り見えずわかりにくいスポットなのか人が少ない。ここでしばらく撮ることにした。隣では中国人がスマホで誰かと話しながら撮っている。

超広角レンズでパノラマ風に撮れた金堂と紅葉と池の饗宴。
超広角レンズでパノラマ風に撮れた金堂と紅葉と池の饗宴。

時間も押してくると、人が少なくなっていく。先ほどのポスターと同じ絵が撮れる撮影スポットも人だかりが少なくなってきたので、少し待っているだけで陣取ることが出来た。しかしどうもポスターと違う写真が撮れる。時期が過ぎたのか、それとも場所が少し違うのか。人も多いし落ち着かないし、長居するのもアレなのでパパッと撮って諦めて他の場所を探す。

カリカリ加工したらポスターっぽかった。
カリカリ加工したらポスターっぽかった。

通りすがりの観光客が口にしたところによると、紅葉は近くで見るとなんか汚いという事だった。確かに少し枯れかかっていたり斑模様だったり虫に食われているような紅葉もある。しかしこうしてライトアップされた紅葉の饗宴を目の当たりにするとそんなちっぽけなことも気にならない。去年は紅葉そんなにあるように思えないし拝観料も1,000円で「東福寺に比べると・・・」と通りすがりに口にしたおばさんの言を真に受けてスルーしてしまったが、今年は訪れて良かったと思えた。人がこれだけ多いのに終始和やかな雰囲気だった。

退出後に撮影。また春にお会いしましょう。
退出後に撮影。また春にお会いしましょう。

後記。仏像を見て常々思っているのだが、普段は撮影禁止で撮れないので、そういう仏像撮る写真の仕事依頼来ないかなぁと願いをかけた日でもあった。