神は細部に宿る – 一工夫で写真を見違えるように仕上げる方法

「神は細部に宿る」を実践!

『神は細部に宿る』という今では随分使い古されてしまった感のある言葉があるが、そのルーツは一説には19世紀フランスの作家ギュスターヴ・フローベールの言葉だという。職人は一般の人には気づかない細かい所にまで技巧を凝らしこだわりを見せているという意味が込められているとのことだ。

この手の形而上的なイメージを匂わせる格言はその曖昧さから取る人によって意味が異なってくることもあり、自己都合の解釈でもそれで本人が正解に辿り着けているのなら問題は無いだろうが、以前の撮影でふとこの格言を思い起こさせるような出来事に遭遇した。今回はこの格言通り細部にこだわって撮影した写真について解説していきたい。

ちなみにフローベールは19世紀写実主義文学の大家で、寡作の人でもあった。その描写は彼の格言通り微に入り細を穿つほど細かいが、そこにはバルザックのように膨大な情報量を豊饒な描写に乗せて人物や事象を造形した飽きを来させない物語とは異なり、同時代人でなければ共感し得ないようなある種の感情のない退屈さが連綿と横たわっていて、彼の名作と謳われている果実を食するのはいささか苦渋を強いられる体験でもある。