斜め撮りは上手く撮るのが難しい。なぜなら闇雲に斜め構図にして撮ると、ただ不安定なだけの写真を量産して仕舞いがちだからだ。
そしてそんな不安定な写真ばかり撮影してしまえば、被写体のレイヤーからも不満続出かもしれない。曰く、使えないと。(とはいうものの、コスプレイヤーは斜め構図の写真が大好きなので、案外満足してくれるかもしれないが)
しかしそれは斜め撮りが好きなレイヤーの好みであり、カメラマンがその好みに追従しているだけでは進歩がない。ここは一つ上手く撮れるように斜め撮りをあれこれと試行錯誤してみるのも一興だろう。
先日11人の大型併せを撮りに行ってきた。これだけの人数になると、斜めで撮ってもただただ全員が不安定に見えるだけの写真になるのではないかと思ったが、そうでもなかった。むしろ4人とか人数が少ない時の方が、斜めに撮ると安定感がなくなる感じがする。
横一列に並んで貰って撮った写真。フレームに対して被写体が端から端まで横に並ぶと、斜め撮りの効果が出る。広告やポスターでキャッチコピーを斜めに配置すると躍動感が出るのと同じように、絵が活き活きとしてくる。
どちらの側に傾けた方が自然な感じになるか。難しい選択だ。通常人間の目は左から右へと物を見るそうだ。横書きの文字を読む時は左から右だし、縦長の広告ポスターを見る時も、左から右、ワンフレーム下がって左から右へと読んでいくと言われている。スーパーマリオブラザーズなどの横スクロールアクションゲームは左から右へと進んでいく。
この視線の誘導の法則を意識した時に、どちらに傾けるかで、被写体の導線が上向きの矢印になるか、下向きの矢印になるかに別れる。次に紹介する一枚目の写真は上向きに、二枚目の写真は下向きに流れるということになる。
集合写真のような全体を一度にパッと視界に入れる媒体にこの法則が当てはまるかどうかは別として、覚えておいて損はないと思う。この法則とは別に、例えば上の写真で、メンバー全員が左側に向いていたら、導線は左側に向かうので、2枚目の写真は導線が右から左へと上向きになる可能性がある。
やや下目から、被写体をやや切り取って寄るような形で撮る時に斜めにすると、良い感じに動きが出る。
フレームの端から端まで人物が来ない時は、斜めにするとヤヤ不安定感が強調されるきらいがあるが、それ程傾斜を付けていないので、悪くはない。45度に傾けすぎると不安定感が強調されすぎた写真になるだろう。
同じポーズで縦構図だと、斜め撮りになるとヤヤ不自然感が出る。これが背景が白ホリではなく、カラフルなバックライトがたくさん点灯しているライブハウスなら、動きが出て不安定感を打ち消した写真になったことだろう。
集合写真での縦構図の斜め撮りは決めるのが難しい。特に白ホリは、背景が真っ白で被写体しか存在しない。真っ直ぐに撮っておいた方が無難だろう。
脚立に乗って上からの斜め構図。不安定感もそんなに出ていないし、まぁ良いのではないだろうか。
どちらにしても集合写真を撮る場合、縦構図なら垂直に、横構図なら水平に撮るのが基本である。この基本をベースに、一連の写真にアクセントを加えるために斜め構図の写真を撮っていくと良い。
集合写真の場合は余り大胆に傾けすぎると不自然な写真になってしまう。例えばアニメ雑誌に掲載されているイラストや、電車の中吊り広告を普段から観察して、キャラクターやキャッチコピーがどの程度の傾け具合なら不自然に見えないかを意識してみるのも良いだろう。
ちなみに筆者は撮影中に導線を意識しながら撮ることはほとんどない。右・左・角度大きめ・角度小さめなど、数パターンに傾けて撮ることだけを意識している。というのも、実際にファインダーをのぞき込んでカメラを傾けてみても、構図がどちらに傾いているかを意識するのが難しいからだ。基本はカメラを右下に傾けた場合は、反対側、すなわち右上に導線が向かうが、視線を斜め上にあげて貰って撮る時以外は、導線は意識していない。
数パターン撮っておけば、後で家に帰ってからどの斜め構図がベストショットだったか確認できるし、斜め撮りのベストショットを撮り漏らさないで済む。