記憶にある桜はピンク色、それが桜ポートレート撮影を難しくする

桜の代名詞であるソメイヨシノは白い。
桜の代名詞であるソメイヨシノは白い。

日本の桜の代名詞といえばソメイヨシノ。お花見にしてもポートレート撮影にしてもまず思い浮かぶのがソメイヨシノだ。ところがこのソメイヨシノは花びらが白い。桜と聞いてイメージするのはピンクに色づく桜の木だが、花びらに目を凝らしてよく見てみると白いし、写真に撮ってみても白い。絞って撮ってカメラの液晶画面で確認してみると雪のように白かった。ほのかにピンクに染まっている部分もあるにはある。蕾の状態だったり開き掛けの花びらはピンク色だ。しかし開いた状態の花びらは白い。

何がソメイヨシノをピンクの桜と思わせるのか。蕾や茎の先などがピンク色だから遠くから見ると白い花びらがそれらと混じり合って仄かなピンクに見えるのか。キヤノンのカメラが紡ぐ色は記憶色で人間の美しい記憶を想定して女性の肌を仄かなピンク色に撮れるようになっているというが、人間が想い描くこの記憶色がソメイヨシノをピンクの花びらと思わせるのだろう。日常生活を見回してみれば、ポスターや食品のパッケージに描かれる桜はどれもピンク色だ。その方が人間にとっては美しく見えるという事だ。

桜でポートレートやコスプレ写真を撮るときに難しいと感じるのは、ピンク色に撮れると思っていた桜が白に撮れてしまうからというのが理由の一つとしてあげられる。理由の一つと書いたが、花びらが白いことが、桜ポートレート撮影の難しさの根幹とも言える。

ポートレートで定番の方法、単焦点レンズで背景を思い切り暈かして撮れば何の花なのか分かららなくなるし、こちらも定番の逆光で撮れば桜が白く飛んでしまいそうだし、かといって桜が飛ばないように順光で撮れば今度はモデルの顔が硬いイメージになったり様々な影が顔に落ちて美しく撮れない。順光で女性を美しく撮影するにはライティングの細やかな配慮が必要になる。

暈かして撮ると白く飛びやすいソメイヨシノ。
暈かして撮ると白く飛びやすいソメイヨシノ。

構図の問題もある。逆光で撮ろうと思っても、桜が構図的にちょうどいい位置に枝を伸ばしているとは限らない。場所によっては逆光ではなく順光で撮ることも迫られるだろう。順光撮影は先にも言ったようにライティングが難しくなる。自然光で撮るか、レフ板で光を起こすか、起こすとして白レフにするか銀レフにするか、もしくは透過アンブレラでストロボ光を通して撮影するか。撮り方は様々に分岐する。逆光撮影なら、太陽をモデルの背に来るように配置して、後は光をレフで起こしてカメラマンがピント合わせを頑張れば簡単に良い写真が撮れるが、順光となるとモデルの顔が美しく撮れるよう、光の強さと顔にかかる影をコントロールする必要がある。

順光で顔に影が落ちないようにするにはどうすれば良いか。顔の向きを変えて貰ったり、銀レフで撮る場合は光が強すぎるのでレフ板を持ち上げて上から当てたり、もしくはレフで跳ね返した光の量を調整するため、距離を取って眩しすぎないように配慮したり。

しばらく数ページを割いて、桜のポートレートやコスプレ撮影で美しい写真を撮るにはどうすれば良いのか、方法論を探っていきたい。