寺社仏閣では三脚や一脚の使用を禁止している場所が多い。昼間なら手持ちでの写真撮影に支障はないが、夜となると途端に難しくなる。
まず手持ち撮影となると、開放F値の小さい明るいレンズで、絞りを開放F値に設定。それだけでは明るさは足りず、ISO感度を上げて撮影しなければならない。シャッタースピードも手ブレしないギリギリの遅さに設定することで少しでも明るさを確保する。
先日は平等院鳳凰堂の夜間拝観を撮影してきた。この場所での写真を作例にして、理想的なカメラの設定とレンズの焦点距離を探っていきたい。
平等院鳳凰堂は池に囲まれている。そして横に長い。全ての棟を入れて撮ろうとすると、広角レンズが必要になる。
今回使用したカメラはフルサイズ、使用したレンズは、Canon E24-70mm F4 L IS USM、Canon EF16-35mm F2.8 L Ⅱ USMとCanon EF24mm F1.4 L Ⅱ USMの3本。標準55mmのレンズは、池の淵から撮ろうとすると棟がすべて入らず撮りづらいので諦めた。後ろに下がろうにも群衆が池を囲っているので撮れない。また手ブレ防止のためにシャッタースピードを速くすると、写真が暗くなってしまう。
手持ちで夜景を撮影する為のカメラの基本的な設定
カメラのモードはマニュアル。何度か試し撮りしてシャッタースピード、ISO感度、F値を調整し明るさを決めるわけだが、今回は自分的にノイズが許容範囲となるISO1600を上限と見据え、F値は各レンズとも開放F値とした。
あとは手ブレしないシャッタースピードを、手振れ防止付きレンズや焦点距離の短いレンズなどを勘案して決めていくことになる。
またカメラをミラーアップ撮影に設定することで、ミラーの運動によりカメラに伝わる衝撃を少しでも和らげる。シャッタースピードを2度押すことでシャッターが降りる設定にした。シャッターを押してから数秒後に撮影を選ぶとどうもタイミングを取るのが難しく、手ブレしてしまいがちになりそうな危惧もあった。
斜めから平等院鳳凰堂を撮影
斜めからの構図、敷地内に入ると平等院鳳凰堂が見えるが、そこから約30度くらいの位置からだと、横に長い棟が短くなるので、35mmの焦点距離で全ての建物が入る。標準ズームレンズなら歪みが生じず、理想的な焦点距離だ。Canon E24-70mm F4 L IS USMを使って撮影した。レンズに手ブレ防止機能がついているので、シャッターをスローにしてみた。
使用カメラはCanon 5DsR。5060万画素を誇るが、それだけ手ブレにシビアなカメラ。通常のカメラよりもシャッタースピードを速くする必要があるが、果たしてどうか。
問題は35mだと少し窮屈に感じる点と、24mmに比べて手ブレしやすくなってしまう点だろう。上に掲載した写真も手ブレしてしまっている。これ以上シャッタースピードを早めると、今度は写真が暗くなってしまう。明るさ確保に対してちょっと欲張りなシャッタースピードではあるが。
ということで24mmの焦点距離に変えて撮影。構図的には最もバランスがいいと実感した。焦点距離が短くなる方が手ブレしづらい。シャッタースピードをさらに遅い1/4sに設定したが、手ブレに厳しい5060万画素の5DsRでも手ブレもしていない。ISO感度1600だとやはり等倍で見ると、木々の葉などの細かい描写の潰れが気になるが、5K Retinaディスプレイで画面いっぱいに縮小表示させると精彩に描写できているように見える。
超広角の16mmではどのような絵が撮れるだろうか。下の作例はCanon EF16-35mm F2.8 L Ⅱ USMで撮影。少し広くなりすぎて、鳳凰堂のインパクトが欠けてしまった。イメージスタビライザーがないと、どうしても手ブレしてしまう。
斜め60度くらいからの位置からの撮影も、24mmの焦点距離が理想となる。ギリギリ手ブレしていない。紙一重といったところ。
真正面から撮影
真正面から鳳凰堂を撮るとなると、24mmでは両端の屋根の先がフレームアウトしてしまった。使用レンズはCanon EF24mm F1.4 L Ⅱ USM。超広角ズームレンズで撮った方が良かっただろうか。
1DXで撮影したが、手振れ防止機能がついていない為、手ブレしないシャッタースピードは1/25秒となった。
広角単焦点レンズCanon EF24mm F1.4 L Ⅱ USMで撮影
次に明るい単焦点レンズの作例を見ていこう。使用レンズはCanon EF24mm F1.4 L Ⅱ USM。カメラの設定はF1.4、ISO感度1600、シャッタースピード1/25秒。デジタル一眼カメラの手ブレしないセオリーは1/焦点距離x2とされているが、今回はフィルムカメラ時代の手ブレしないセオリーとして通説となっている1/焦点距離に設定。
1/20秒でも撮影。こちらも等倍で見るとブレていないように見える。画面いっぱいに縮小表示すると、ノイズによる精彩な描写の潰れが気にならず、とても綺麗に表示される。
超広角ズームレンズCanon EF16-35mm F2.8 L Ⅱ USMで撮影
Canon EF16-35mm F2.8 L Ⅱ USMはどうだろうか。焦点距離16mmにして、シャッタースピード1/15秒に設定するとなんとかブレずに撮れるが、それより遅くするとブレやすくなってしまった。
許容できるノイズの範囲内でISO感度を設定するとすれば、5DsRは1600、1DXは2500〜3200くらい。三脚や一脚禁止の夜景撮影では、手ブレにシビアな5DsRよりも1DXを使った方が、シャッタースピードを遅くできるので、明るさが欲しかったり、手ブレしないギリギリのよりスローなシャッタースピードで撮ってさらに明るさを確保したい場合は、1DXで撮影した方が最適だろうか。
5K Retinaディスプレイに触れてから、風景写真では5DsRがメイン機に
あとは写真の大きさ。正直5DsRで風景写真を撮影してからというもの、撮れる写真が5K Retinaディスプレイとの組み合わせで、かなり精細な描写をしてくれるので、風景を撮るなら5DsRという選択肢になる。たとえノイズで木々の葉などの細かい描写が潰れがちになっても、iMacの5K Retinaディスプレイで縮小表示すれば、先ほども述べたようにノイズやノイズ潰れが気にならない精細な描写をしてくれるので、5DsRに偏りがちとなる。
そういえば最近ソニーからハイスペックなミラーレス一眼α7R III ILCE-7RM3が発売された。ツイッター上でもその新技術がもたらす卓越した描写力に感嘆の声が上がっている。ソニーという新しいライバルの出現で、キヤノンの今後の一眼カメラがどのような方向に向かうのか、気になるところだ。