藤原宮跡にコスモスを撮りに行った時の話

今年は記録的な台風の影響で横倒しになったコスモスが多かった。
今年は記録的な台風の影響で横倒しになったコスモスが多かった。

コスモスのことをすっかり忘れていた。撮りに行きたい出来れば早朝に徹夜してでもと考えていたのだが、色々忙しいし、のんびり過ごしたいし、台風で倒れてしまったと聞いていたので、諦めかけていた。

朝NHKのニュース番組を見たら、岡山の方でコスモスが見頃だという。急にコスモスを撮りたいという欲求が湧いてきて、そういえば神戸でコスモス畑があったっけと検索をかけてみたら、神戸総合運動公園で約10万本のコスモスが咲いているという。予定していた藤原宮跡はどうだっけとTwitterで検索してみたら、藤原宮跡花園に300万本!? こちらの方が多いからそちらに行くことにした。

藤原宮跡に行くには、近鉄大阪線の大和八木駅か、その1つ行ったところの耳成駅で降りる。どちらが近いかといったら耳成駅の方が5分か10分ほど早く着ける。大和八木駅から徒歩35分、耳成り駅から徒歩22分。

しかし耳成駅は小さな駅なので各停しか止まらない。夜に仕事があるので早く帰らなければならず、帰りの電車の待ち時間が気になる。

とりあえず行きは耳成駅で降りた。空が広い田舎の舗装道路で、角を曲がるとこちらの道路も舗装されているがガードレールがなく歩道が狭いから、車と接触しないように注意して歩かなければならない。

20分ほど歩いて見覚えのある場所に到着。春にも菜の花と散りかけの桜を撮りに来た場所だ。そこから南西に歩くと、藤原宮跡の花園に辿り着く。

しかし春に訪れた時は何も咲いてなかったスペースにこんなにたくさんのコスモスが咲いているとは。早速カメラを取り出して撮影していった。

あいにくこの日は曇り。天気予報では奈良は晴れ時々曇りとあったが、雨雲レーダーには雨雲がハッキリと写っていて、今雨が降ってますと投票している人が9割。なので12時半過ぎに付くようにのんびり出向いたのだが、着いた時は雨こそ降っていなかったものの、太陽は出ていなかった。

花というのは曇りの日の方が撮りやすいとはカメラの教本に書いてあった記憶がある。白い花びらだと飛びやすいし、真上からの光や順光なら硬いイメージになる。しかしやはり陽光が降り注いでないとドラマティックに撮るのが難しいと感じた。そもそも普段花は余り撮らない。花撮りなら女性の感性の方が巧く切り取れるんじゃないだろうか。

仕方なしに撮っていく。モニターで見るとなかなか良い仕上がり。しかし家に帰ってからパソコンで取り込んでみるといかにも曇りの日に撮ったコスモスで色味もどんよりとしていた。

85mm | F1.4 | 1/3200s |  ISO100
85mm | F1.4 | 1/3200s | ISO100

この日持ってきていたレンズは5本。11−24mm、24-70mmのズームレンズと、55mm,、85mm、200mmの単焦点レンズ。我ながら重装備だが、いつものコスプレ撮影と比べたらライティング機材とストロボ5灯がないだけ楽。ストロボは念のため1灯だけ持ってきていた。

さて望遠で撮るか中望遠で撮るか標準で撮るか。はじめは望遠で撮ってみたい。花も遠い場所にあるし。F3.5でも200mmだから背景が良く暈ける。しかし何か物足りない。後から夕陽が沈む前に同じ場所・同じレンズで撮って気づいたのだが、やはり太陽の光が足りないのだった。

昼1時頃撮影。どんよりしている。
上の写真と同じ場所・同じレンズで夕暮れ時に撮影。
上の写真と同じ場所・同じレンズで夕暮れ時に撮影。

85mmに変えて撮影。上から撮ったり真横から撮ったりしてみる。F1.4で撮るかF2にするか迷う。背景を思いっきり暈かしたいし、かといって花びらはできるだけ暈かしたくないクッキリ撮りたい。F2でも結構暈けてしまう。

85mm | F1.4 | 1/4000s |  ISO100
85mm | F1.4 | 1/4000s | ISO100
85mm | F2 | 1/1000s |  ISO100
85mm | F2 | 1/1000s | ISO100

花びらをもっと大きく写すには最短撮影距離がより短い55mmに変えた方が良いかしらという事でレンズチェンジ。歩きつつ撮っていくことにしたのだが、宣伝写真でよく見かけるコスモス畑花いっぱいな感じの写真が撮れる場所はどこだろうとキョロキョロ探してみたが、コスモス畑は初めてなので分からない。

55mm | F1.4 | 1/1600s |  ISO100
55mm | F1.4 | 1/1600s | ISO100
55mm | F1.4 | 1/1000s |  ISO100
55mm | F1.4 | 1/1000s | ISO100

しばらくあっちこっちへ行っていたら、遠くの方に三脚を立てたカメラマン達の姿が見えた。どこがベストスポットか分からない時は、ベテランカメラマンのいるところに行けとはまさにこのこと。テクテク歩いて行ったら、耳成山を背景に見渡せる場所だった。それにコスモスの花もこちら側を向いている。ひまわりと同じで恐らく太陽の光が差し込む方に向く習性があるのだろう。

55mm | F1.4 | 1/2000s |  ISO100
55mm | F1.4 | 1/2000s | ISO100

しかし問題は、太陽の方に向いている(カメラマンの方に向いている)ということは、順光で撮ることになるという事だ。順光で撮るという事は、花が硬いイメージで撮れてしまうということでもある。試しに何枚か撮ってみたが、太陽が雲に隠れていたので、硬いイメージにはならなかった。

撮り方に迷う場所である。というかコスモス、雑多な伸び方していて難しい。クネクネといろんな方向にいろんな高さで伸びている。これはカメラマンの切り取り方すなわち腕が試される。

85mm | F2 | 1/1250s |  ISO100
85mm | F2 | 1/1250s | ISO100

暈かす?パンフォーカス気味に撮る?明るく撮る?それとも暗く?暈かす暈かさないは現場で決めないと、後処理では変更できないから、明確にしておくとして、明るさは後処理でなんとかなるから、白飛びしないようにやや暗めの設定で撮っておく。あとは広く写すか狭く写すかの問題だが、レンズ交換で対応した。

どうも答えが出ない。やはり太陽の光が降り注いでいないからだろうか。と思っていたところへ雲から太陽が顔を出し、コスモス畑に降り注いだ。やはり写真の印象もなんかパッと明るくなったかなという感じ。

55mm | F8 | 1/320s |  ISO100
55mm | F8 | 1/320s | ISO100

しかし順光であるし、夕陽の出る時間帯をイメージした場合、硬い写真になってしまうのではないだろうか。実はそこにいた他のカメラマンは皆バズーカ砲みたいな超望遠レンズを装着していたベテラン勢だった。さすが長年の撮影経験からコスモス畑の真ん中辺りにある花に焦点を当てて、他は思いっきり暈かすという絵作りなのかなと思ったが、漏れ聞こえてきた話によると、コスモスに鳥が止まる所を狙っているらしい。あぁなるほど。

というわけで別の場所を開拓してみる。北の方に足を運んだのだが、どうも咲き具合が写真に合わない。アップで撮れば絵にはなるが、コスモス畑として撮ろうとしたら、家とか小学校の建物が背景に入ってしまう。そろそろ太陽が傾きかけてきた。ひょっとしたらと先ほどの耳成山が背後に見える場所に戻ってみたが、やはり順光だと硬い光のイメージの写真が撮れた。

55mm | F1.4 | 1/3200s |  ISO100
55mm | F1.4 | 1/3200s | ISO100
55mm | F1.4 | 1/6400s |  ISO100
55mm | F1.4 | 1/6400s | ISO100

これはもう逆光で撮ることにしようと決断し、足早に一番はじめに来た場所に戻る。途中で夕陽が光を増してコスモス畑に降り注ぎ始めたので、200mmの望遠で撮っていくと、求めていた絵が出てきた。

200mm | F3.2 | 1/500s |  ISO100
200mm | F3.2 | 1/500s | ISO100
200mm | F3.2 | 1/1000s |  ISO100
200mm | F3.2 | 1/1000s | ISO100

一番はじめの場所。夕陽はあっという間に山に沈もうとしている。とりあえず200mm、85mmで撮っていった。やっと求めていた絵が出てくる。最後に11-24mmに付け替えて撮ってみたら、宣伝ポスターと似通った写真を撮る事が出来た。ここだったのか。

11mm | F11 | 1/50s |  ISO100
11mm | F11 | 1/50s | ISO100

先々週あたりの台風の影響で、コスモスの茎がゴッソリと横倒しになっているところが多かった。この場所も写真を見て貰えればお分かり頂けるだろうが、前の方が横倒しになっている。Twitterでも台風で横倒しになっていると聞いていたので行く気が失せていたのだが、それでも十分綺麗な景色だった。この場所でポートレートを撮ったら映えるだろうなぁ。ということでポートレートモデルを募集しています。

日も沈んだので帰路につく。コスモス畑に囲まれた帰り道、カメラマンが下から写真を撮っていたので、僕も真似て撮ってみる。巧そうなカメラマンの行動を真似ろとはこのこと。

85mm | F1.4 | 1/200s |  ISO100
85mm | F1.4 | 1/200s | ISO100

帰りは大和八木駅を目指したが、耳成駅周辺よりは都会じみている。ラーメンチェーン店、ドコモショップ、しかしどれも人工的で田舎の地域でありながら都会的な冷たさを感じる。しかし中学生の頃に加古川に遊びに行った時に、そのように開発されていく清新な風景にどこか憧れていたのだ。今はどうも、そのようなめまぐるしく更新される風景を愛でる気持ちの余裕がない。

道の方はというと、やはり歩道が狭いところがあるから車に気をつけなければならなかった。藤原宮跡西にバス停があったが、少し待っていれば大和八木行きのバスに乗れたかも知れない。歩いて30分超はややきつい。