振り返ってみればこのブログは、ニッチな撮影技術だったり、微に入り細をうがつ記事だったり、痒い所にまで手が届く撮影にまつわる話を、これまで270回に渡ってお届けしてきた。しかし、写真撮影の基礎的な話となると、余り書いてこなかったように思う。
そんな話はわざわざうちのブログで取り上げなくても、ニコン辺りのサイトや他の写真ブログに図解入りで分かりやすく書いてあるし、そちらを見て貰った方が分かりやすいから書くまでもないかと思っていたのだが、せっかくアクセスして頂いていることだし、これからはカメラの基礎的な話もちょくちょく書いていこうかと思う。
それに自分自身では既に理解しているから当たり前と思っていることでも、カメラ初心者にとってはチンプンカンプンということが大半である。それを当たり前のこととして取り上げないのは不親切であるし、ブロガーとして怠慢でもあるだろう。
今回は焦点距離の違いについて解説していきたい。カメラに装着しているレンズの焦点距離により、写真というのは見え方が異なってくる。簡単に解説すると、焦点距離が短い程、写真に写る範囲は広くなり、焦点距離が長い程、写る範囲は狭くなる。
短い焦点距離とは
焦点距離が短いとはどういうことか。広角レンズで撮っているということだ。広角レンズで撮ると、広々と写る上に、遠近感の強調された歪みのある写真になる。風景写真などによく見られる。35mm以下辺りまでの焦点距離を広角と呼ぶ。
焦点距離が短いと、手ブレしにくい。手ブレしないシャッタースピードのセオリーは1/焦点距離×2なので、遅いシャッタースピードでも手ブレせずに写真を撮ることが出来る。
また背景が暈けにくいので、写真の端から端までシャープに写っているパンフォーカスを狙った写真を撮る際にも重宝する。
人の視界と同じと言われている焦点距離とは
50mmの焦点距離は、よく人の視界と同じと言われている。35mm説も聞いた記憶があるが、ここではとりあえず50mm説を採る。焦点距離50mmのレンズは、標準レンズと呼ばれている。非常に一般的なレンズで、よく50mmの単焦点レンズを買って、写真を勉強しろとも言われる焦点距離である。人間の視界とほぼ同じ領域が写ると言われており、風景でもポートレートでも花でも無理なく撮れる。広すぎず、狭すぎず、スナップ写真にも最適だろう。
先ほどの超広角レンズで撮影した写真と比べると、歪みもなく、非常に素直にありのままに撮れている。しかし逆に言えば、ありきたりで退屈な写真とも言えるのが、焦点距離50mm標準レンズの落とし穴でもある。
長い焦点距離とは
焦点距離が長いということは、望遠レンズで撮っているということだ。望遠レンズで撮ると、遠くの物を近くに引き寄せ、写る範囲は狭くなるが、被写体を強調して写真を撮ることが出来る。こちらはポートレートやスポーツ、野鳥などの分野の写真でよく見られる。85mm辺りから600mm以上が望遠領域と位置づけられている。
望遠レンズは圧縮効果を生かした写真撮影と相性が良い。圧縮効果とは背景を被写体の背後に引き寄せて撮ることが出来る効果のことで、被写体とカメラの距離を大きくとることで生じる。望遠レンズを使うと必然的に被写体と距離を取ることになるので、圧縮効果が生まれやすい。圧縮効果を操ることができれば、背景を何層にも折り重なるようにして撮ることが可能だ。
また背景が暈けやすいので、背景がキラキラした写真を撮る際にも重宝する。
ただし望遠レンズは手ブレしやすい。手ブレしないシャッタースピードの設定のセオリーで行くと、焦点距離200mmの望遠レンズでは、1/320秒以上のシャッタースピードが必要となる。F値の設定によっては、適正露出を得るために野外撮影でもISO感度を上げる必要があるだろう。
まとめ
焦点距離が短い
- 広い範囲を撮れる。
- 遠近感のある写真が撮れる。
- 背景が暈けにくい。
- 手ブレしにくい。
焦点距離が長い
- 被写体を引き寄せて撮ることが出来る。
- 必然的に被写体と大きな距離が生じるため、圧縮効果で背景を被写体の後ろに引き寄せて撮ることが出来る。
- 背景が暈けやすい。
- 手ブレしやすい。
乱暴にまとめると、焦点距離が長くなるに従い、被写体が大きく寄ってきて、同時に背景も引き寄せられ、写る範囲は狭くなり、被写体がより強調され、写真が歪みなく真っ直ぐに写るようになり、背景は暈けやすくなり、手ブレに気をつけなければならないということになる。
どの焦点距離が最適かは、撮影シーンにも寄る。広角レンズが好まれる風景写真の分野でも望遠で撮ることがあるし、中望遠レンズが好まれるポートレート写真でも超広角で撮ることもある。撮影シーンに応じて、撮影者が意図した写真を生み出すために、自分の頭で最適な焦点距離を選択する事が肝要だ。