このブログでしつこいほど、野外でポートレートを撮るときは逆光がむしろセオリーということを言い続けてきた。逆光で撮れば、人物の顔に影も落ちないし、柔らかい質感で肌が写るし、何より髪に光が帯び、リムライトの役割を果たしてふんわりと美しいイメージで撮れるから、というのが主な理由だ。
しかし最近野外で逆光でばかり撮ってきて、少し飽きてきた。確かに逆光が、ピント合わせ以外は一番楽で綺麗に人物を撮れるのだけれど、そういった絵作りばかりというのもなぁというのもある。それに世の中には絶対というものはない、と自戒することも度々なので、ひょっとして順光でも良い感じに撮れるんじゃないだろうかと最近は思うようになったのだ。
先日、ツイッターのTLに女性プロカメラマンが撮影した家族写真が酷いレタッチで納品されてきたというフェイスブックの投稿が話題になった。投稿内容の真贋はさておき、写真を見るとどうも良く晴れた真昼に順光で撮ったから顔に強い影が落ちたので、無理してレタッチを施した感がある。顔に落ちた影をPhotoshopのレタッチで修正するのは大変そうだ。影の部分だけ自動選択ツールで囲って、スタンプツールで側の肌の色を移植する…。想像するだけでやりたくない作業だ。Photoshopの使い方を習っていなかったプロカメラマンが、あのようなペイントみたいなレタッチになっても致し方ないのではないだろうか。
無理をせずに逆光で撮れば良いとも思えたのだが、順光でも良い写真が撮れるかもしれないと思いつつ、コスプレ撮影に赴いた。
撮影日は2月下旬。この日は良く晴れていた。冬も終わろうとする頃のやや暖かい天気の中で、撮影に励む。撮影は昼の12時から始まり、日差しもまだまだきついということで太陽に背を向けて貰って撮影した。顔に影の落ちない写真が撮れた。
昼の2時になり、自販機の前で撮ることになった。幸い人影も見られないのでパパッと撮っていこうとしたが、どうしても順光の撮影になってしまう。自販機を反対方向の向きに動かせるわけもなく、仕方なしに順光で撮っていたのだが、撮影したデータを見ると、顔に影は落ちていなかった。正確に言うと、鼻の下には強い影が落ちていたのだが、その他は綺麗なものだ。もう一人の子は、太陽に対して斜めに向いていたためか、強い影が落ちていた。例えばウィッグの影が強く落ちている。しかし男装だから影が落ちていてもそんなに気にはならないだろう。
太陽に対する向きによっては影が落ちてちょっと使い物にならないなという写真が撮れてしまうが、太陽に対してまっすぐの向きならば顔が綺麗に写る。ただし逆光での撮影と比べて、直射光が当たっているために、固いイメージになる。しかし被写体のディテールをしっかりと明確に写そうとするなら、順光は強い味方となる。
調子に乗って別の場所で半順光で撮ってみたりもした。ちょっと顔に影を落として雰囲気作り(掲載許可取り忘れで掲載できず。No.7480)。
池の欄干でも順光で撮ってみたが、こちらはなんだか顔が飛びやすくなって、後ろにいる子は逆に影で暗くなって絵作り的に首をかしげざるを得ない出来だった。しかし通常のポートレートなどではアリでは無いかとも思う。TVドラマでもこういった絵作りは見た覚えがある。
逆光のイメージも忘れずに撮る
逆光ではどのようなイメージになるか。作例を載せておこう。
昔は順光でポートレートを撮っていた事を思い出す出来事
あるレイヤーさんが、バックアップを取っていた外付けハードディスクが壊れてしまい今までの撮影データが飛んでしまったというので、過去のデータを外付けHDDから引っ張ってきて再送しているのだが、3、4年くらい前に撮影したポートレート写真が出てきた。京都で撮影したポートレートなのだが、この頃は太陽の位置に無頓着に撮っていた記憶があるので、順光の写真も多い。(ひょっとしたらその向きでしか取れないような場所だったのかもしれないが)。
しかしその順光で撮影したポートレートが女性モデルの若さと内に秘めたる芯の強さが出ていて、とても良い雰囲気だった。順光もまた良いのかもしれない。今度京都でポートレートを撮る機会があったら、初心に返って順光撮影にも挑戦してみよう。