阪神なんば駅(近鉄難波駅)の改札を通り抜けてエスカレーターを上がった先に書店がある。駅のそばにはたいていこの手の、通路の奥のスペースにすっぽりと収まったこじんまりとした書店が存在するが、いつもそういった書店の店頭に並べてある話題の本に視線を泳がせていくのが、密かな楽しみだ。今売れている目新しい装幀の本や話題の本のタイトルが書店員の手作りPOPとともに踊る。流行を知ることが出来るし、社会の空気を踊り乱れる活字を通して肌身で感じることが出来る。
女の子と待ち合わせしている間に、ふらっと書店へ寄ってみると、ギリシア人の物語が山積みされていて一際目立っていた。塩野七生著。以前から読んでみたいと思っていたローマ人の物語を僕は既に電子書籍で購入して読み始めたところだった。ローマ人の物語ギリシア人バージョンがリリースされた記念に電子書籍版が軒並み20%で売り出されていたからだ。
今目の前に話題のギリシア人の物語が置いてある。何でもこの人の著作はビジネスマンに大変人気らしく、学べることが多いらしい。らしいというのは、まだ触りしか読んでいないから、本当にそうなのか分からないからだ。
難波を行き交う読書好きもそうでないビジネスマンも、この書店を通りかかって1冊買っていくのだろうか。
僕が購入したのはHontoの方だったが、amazonの一部の電子書籍には今のところ消費税がかからないので、2万円以上するまとめ買い購入だと、amazonで購入した方がお買い得感が出てくる。Hontoもクーポンやポイントキャンペーンの合わせ技を駆使すればお安く手に入るので、こういうセール時に買っておくべきだろう。
ローマの歴史の知識については、最近世界史のマンガで読んだ程度なのだが、さっそくローマ建設の伝説が出てきたりして面白かった。女を掠奪し妻に迎え、取り戻そうとした部族間との戦争中に、掠奪された女達が間に入って仲裁するというくだりや、オオカミに育てられた二人の子どもの話など、ああ、あったあったと思い起こされた。伝説のオオカミが二人の赤子に乳を与えている銅像の写真を見て、どこかで見た記憶があった。
「知力ではギリシア人よりも劣り、体力ではケルト人やゲルマン人よりも劣り、技術力ではエトルリア人よりも劣り、経済力ではカルタゴ人に劣るローマ人」が、なぜ強大な国家を建設し得たのか、読み進めていく内にその謎が紐解かれていくのだろう。
すべての道がローマに通ずるのと同じく、ヨーロッパ文明の源泉であるローマで活躍したシーザー、アウグストゥス、ネロ、マルクス・アントニウスなどの英雄譚が読めるのだから、面白くないわけがない。