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黒田三十六計 現代では見られなくなった劇画タッチに戦国の気風が在り在りと溢れてくる気骨の作品群

黒田三十六計

羽柴秀吉の下で活躍し、後に関ヶ原の戦いにおいて九州で大暴れした安土桃山時代の名軍師、黒田官兵衛孝高の半生を扱った劇画漫画。中国の兵法三十六計に準えてストーリーが進行する。余所の国より流れてきた祖父の代から、黒田家が如何にして播磨の地に根付き、勢力を拡大していったか、奇想天外な策で様々な敵を翻弄し、様々な人たちを味方に引き入れていくその勇姿には溜飲が下がる。

最近では余り見かけない荒々しい線で描かれた漫画だが、戦国時代を描くにはとてもマッチしている。後の豊臣秀吉も登場するが、肖像画にソックリの皺クチャの猿顔に描かれていた。ここでの秀吉は、余り冴えたる武将に見えない。後年言われる様な戦を避けたがってなるべく平和裏に事を収める武将というよりは、信長の過酷な命にたた従順に従っている忠実な部下といった役どころ。官兵衛という名軍師が、秀吉に策を授け、如何に秀吉を天下人ならしめたかという事実を、直接的には描かないまでも、数々のエピソードを積み重ねることで匂わせている節がある。

ところどころ史実とは異なる描写もある。足利義昭の顛末や、書状にまだ幼年なはずの伊達政宗の名前が出てくる辺りは、いずれかの史料を元にしたものだろうか。武田信玄の病死説に至っては、大胆な脚色を試みている。

残念なことに絶筆となっているので、後半生の小田原合戦の説話や九州での縦横無人な活躍ぶりは描かれていないが、他の小説やウィキペディアでは知ることの出来ない詳しい経緯なども丹念に描かれており、戦国好きには寝食も忘れて耽読すること間違い無しの作品。

著者の平田弘史といえば、みなもと太郎の大河ギャグ江戸幕末漫画『風雲児たち』の題字も手掛けている。御年80歳を超えるそうで、ホームページも度々更新している。Macintoshの愛用者とのことだ。