関西に住んでいる筆者にとって、高遠城址公園はいささか遠い。朝一の電車に乗っても、到着するのは午後4時半過ぎになる。
それでも日が長くなってきているせいか、高遠さくら祭の昼間の写真を130枚ほど撮る事が出来た。しかしここの桜の写真は昼よりも夜がメインイベントである。白山観音から撮る桜の雲海がとても素晴らしい。
遠いのだからレンズ選びが重要になる。この日は3日間の旅程だったので、使えそうなレンズをありたけリュック型のカメラバッグに詰め込んで出掛けていった。どのレンズが有効かを作例を交えながら紹介していきたい。
重要なのはレンズの開放F値ではなく焦点距離
フルサイズ使用を前提に紹介していくので、APSーC機をお使いの方は、記事に記載されている焦点距離に0.66(キヤノンのカメラの場合は0.62)をかけると最適な焦点距離が導き出される。たとえば焦点距離200mmと記載されている場合は、0.66をかけて導き指された132mmの焦点距離をカバーしたレンズを使うと良いという事になる。
描写力の善し悪しはレンズの値段には出るが、F8からF11まで絞って撮ればそれほど描写力を気にする必要もないほどには綺麗に撮れるのではないだろうか。そして有り難いことに風景写真は絞って撮ることが多い。高いレンズを買う前に、まずはしっかりとした三脚と安いレンズで満足のいく画質で撮れるかどうかを試してみると良いだろう。
詰まるところは、有名な撮影スポットで撮る場合、どの焦点距離をカバーしたレンズが最適かという話になる。特に白山観音から撮る場合には、写る範囲を調整するためにカメラマンは前後に移動できない場所なので、レンズの焦点距離の選別が重要になってくる。
どのレンズと言っても、開放F値に限って言えばどのレンズでも良い。風景写真は昼間は三脚なしでも撮れるし、夜は三脚を使って撮るから、明るさを確保するため、また背景を暈かすためという目的がなければ、安いレンズでも問題なく撮れる。
高遠城址公園では超広角ズームレンズがお薦め!
高遠城址公園の桜。空を桜が覆うほどに咲き誇っている。こういう場合は50mmや85mmなどの単焦点レンズで暈かして撮るよりも、広角や超広角レンズで思い切り広々と撮った方が絵になりやすい。桜の花を標準レンズや中望遠レンズでクローズアップして背景を暈かして撮るなら、別にこんな遠い場所まで来なくても、近くの桜の名所でも撮れるのだから、こういう唯一無二の名所ではその特徴を捉えられるように広々と撮りたいところだ。
というわけで、Canon EF16-35mm L F2.8L Ⅱ USMを多用した。焦点距離は16mmが咲き誇る桜を余すところ写してくれるので最も映える。
同じ場所から24mmで撮るとこのような絵作りになる。
F4のズームでも良い。更には16mmから35mmをカバーしているレンズなら、キットレンズでも差し支えないだろう。ただAPSーC機の場合、16mmに0.62をかけて導き出される約9mm~10mmの焦点距離をカバーしたレンズとなると、安いレンズは存在しない。Canon EF11-24mm F4 L USMがかろうじてあるが、34万円と高額になる。出費を抑えたいなら、被写体である桜から距離を取って広く写るよう対処するしかなさそうだが、場所によっては距離が取れない場合もある点を留意しておきたい。
欲を言えばCanon EF11-24mm F4 L USMで更に広く撮ってみたかったが、このときはまだ所有していなかった。しかし24mmというのが少し引っかかる。35mm位の焦点距離があった方が、超広角から標準の一歩手前の広さで撮れて、色々いバリエーションが聞くのではないかとも思われる。とかく24mmは歪みがちであるから。しかし件のCanon EF11-24mm F4 L USMは比較的歪まないレンズとしても名を馳せているから、高遠さくら祭をいま一度撮ってみたい。
24-70mmの標準ズームレンズも使ってみたが、やはり超広角ズームで広く取りたいという欲が出ていたので、余りつけていなかった。
ややクローズアップ気味に撮るなら標準ズームレンズは重宝するが、せっかくの場所なのでなるべく全体像を撮りたいという気持ちの方が強かった。要は桜のクローズアップなら近所の桜の名所でも撮れるわけである。どこでも撮れるものを高い交通費を掛けて訪れた名所で撮るくらいなら、きちんと全体像を写しておきたいと思うのも当然だ。
200mmの望遠レンズで雪を被った山を狙ってみた。
桜雲橋と桜のハートが撮れる撮影スポットに最適なレンズ
高遠城址公園には有名なスポットが幾つかある。桜雲橋と桜がハート型に撮れる場所。どちらも焦点距離16mmが綺麗に収まる。
ハートの桜が撮れる場所は通路のような場所なので結構狭い。撮影スポットはたまり場にはなっているので、前後に距離は取れたかもしれないが、この撮影場所から24mmだと上の方の桜が切れて中途半端な構図になってしまう。
白山観音から高遠城址公園の桜を撮る時に最適なレンズ
次は白山観音から高遠城址公園の桜を撮るのに最適なレンズ。こちらも作例を見て貰った方が早いだろう。
結論から言うと、85mmが一番収まりが良い。これよりも短い焦点距離で撮影すると、余計な物が入りすぎるきらいがある。この場所は枯れ枝が方々に伸びていて伐採されている様子もないので、年々この枯れ枝が伸びていく可能性もあり、撮りづらくもある。画素数の多いトリミング体制に優れたカメラなら標準レンズでもなんとかなる。
次に200mmのレンズで大きく切り取ってみた。こちらも良いが、欲を言うなら135mmで撮影した方がズーミングしつつ、もっと多くの桜が入って収まりが良かったのではないかとも思われる。
ちなみに標準ズームレンズを使って撮るとこのような構図になる。
結局この場所のように、撮影者が前後に移動することでフレーミングをする事が適わない場所では、ズームレンズが威力を発揮する。70-200mmのズームレンズが最適なのではないだろうか。
70-200mmは開放F値F4のレンズもあるが、知り合いの若いレイヤーさんがその通しF4を使っていて、売ってF2.8に買い換えたいと言っていたので、もし購入するのなら、はじめからF2.8を買っておいた方がコスパ的に費用を圧縮出来る。
高級レンズを中心に紹介したが、その一部は筆者が所有して実際に使用したレンズを紹介している。所有していない製品を調べる気力がなく広告を貼り付けるのが面倒というのもある。今回もレンズのスペック情報は過去記事からのコピペで済ませた。紹介したレンズの焦点距離を参考にして代替が効くレンズを選択して頂ければ良い。要は上述した焦点距離をカバーしていればキットレンズでも撮れる。
こういう高級レンズを紹介していると、何でも批判・非難したがる輩というのはいるもので、希にTwitterにいるプロカメラマン兼ブロガーが嫉妬してブツクサとイチャモンツイートをつけてくるのもいて不快で面倒なのだが、その件に関してはまた別の機会に記事にする。
日中の撮影であれば手ぶれ防止機能も必要ないし、夜は三脚を立てて撮影することになるし、F値はどうせ絞るから大きくても問題ない。作例の焦点距離を参考にして頂ければ幸いである。