今若いオタク女子に大流行のおそ松さん、そのおそ松さん併せのコスプレを撮ってきた。
原作の赤塚不二夫の「おそ松くん」よりもかなりぶっ飛んだギャグマンガで、第1話から「うたプリ」や「進撃の巨人」ほか様々なアニメのパロディでやりたい放題ぶっ放していた。そもそもツイッターで番組告知が回ってきた時は、こんな昭和のアニメ、今の若い世代に受けるんだろうかと疑念を抱いたのだったが、スタッフ自身そんな我々視聴者の不安など想定済みだったのだろう、見事に先回りして画面はモノクロ、自虐ギャグを噛ましてくれたのだった。
なぜこんな昭和テイストで単純な顔立ちの六つ子が、若いオタク女子に受けるのか。乙女ゲームにあるような涼やかなキラキラ輝いた目をしたイケメンキャラではなく、目が点でオモチみたいな顔のギャグマンガの主人公達が、なぜこんなにも若い女の子達の間で人気を席巻したのか。
聞きかじったところに寄ると、今をときめく男性声優陣の配陣と、それぞれのキャラクターの関係性に萌えるのだそうだ。それでもやはり男の自分には謎である。
というわけで撮ってきたのだが、6人となると、カメラマンとしても身構えなければならない。ピンやツーショを撮るのとはワケが違う。全員にピントを合わせなければならないという責務を負っている。
大型合わせの撮影をカメラマンは避けたがる傾向にある。その理由の一つに、集合写真のピントを合わせるのが難しい点が上げられる。他にも人間関係とか大勢の女の子が苦手とか一人で大勢の写真を撮るのが大変過ぎるとか色々理由が考えられるが、一番はピント合わせだろうなと思う。
ある熟年のカメラマンさんから聞いたのだが、出会い系の若いカメラマンが併せの撮影に混じっていたらしく、ピンショットは撮るのだが、集合写真は撮りたがらなかったそうだ。やる気のないカメラマンだと思っていたのが一転、撮影後のアフターでは名刺を配ったりして、女の子達に積極的にアプローチしていたという。
つまり余りカメラに興味がない、もしくはやる気のない人にとって、集合写真は難しく、しんどい。
実際に集合写真のピント合わせは難渋する。まずF値を絞らなければならないから、背景が暈けずに、全体的に平坦な写真になる。どれだけ絞っても、どれだけ集合写真の撮影に適切な焦点距離で撮っても、ピンぼけしてしまうものはピンぼけしてしまう。等倍で見ると、他のレイヤーさんよりもピントが甘い子が必ず出てくる。ピンショットやツーショットよりもピントの配置に頭を使わなければならない。しんどくないはずがない。
当然誰かが歪まないようにも気をつけなければならない。グループ撮影だからと言って、安易に広角レンズを使ってしまうと、両端の子の体が歪む。下手をすると顔がムンクの絵画「叫び」みたいな形になってしまう。
これらの注意点をすべて考慮に入れつつ撮影しなければならないので、まぁ当然気の張る撮影になる。大型合わせの撮影が終わると、体力も脳も消耗しきってしまうのはこのためだろう。F値やシャッタースピードや被写体と撮影者との距離やピントの位置などを考慮に入れつつ絵になるような構図をひねり出して撮影するのだから。
コスプレ撮影の大型合わせの集合写真と言っても、様々な撮り方がある。普通に記念写真風に真正面から撮る方法。これは定番の撮り方だ。風景を前にした時と同じような静かな心構えで撮れば良い。
横一列に並んで貰って、背景を暈かすという手もある。これならF値を上げなくても良いし、開放で撮っても全員にピントが合うので、背景を思い切り暈かすことができる。被写体も非常に際立ち、印象深い写真になる。
何も全員にピントを当てるだけが能じゃない。敢えて一人だけにピントを合わせ、他は暈かしてしまうという手法もある。
「集合写真では歪むから広角で撮っては駄目」という人もいる。そんな頭の固い意見は蹴飛ばしてしまえ。写真の方法論に駄目は存在しない。どのような世界でも、古いセオリーを破ることで、新しいセオリーが生まれてきた。
敢えて広角で撮って歪ませることで、ダイナミックな写真を撮ることが出来る。標準レンズで撮っていたがしっくりこなかったので、広角レンズに変えて撮ったら上手くいった。
また広角レンズでも、顔を中央に寄せて貰えばそんなに歪まない。
集合写真を撮る際のセオリーと言われている35mm-50mmの焦点距離だけでなく、超広角から望遠までのあらゆる焦点距離を稼働させることで、様々な表現の集合写真を撮ることが出来た。気がつけばこの日は1020枚も撮っていた。レイヤーさんに言わせると、シェー!のポーズを撮っていた時が一番ニコニコ嬉しそうにしていたそうだ。