混雑する観光地には、なるべく軽い荷物で赴きたいものだ。とは言っても初めての観光地ではどのレンズで撮影すれば素敵な写真が撮れるのか、なかなかわかりにくいところがある。
ネットで検索するという方法もあるが(ひょっとしたら今この記事を読んで頂いているあなたはネットで検索して訪問してくれているのかもしれないが)、実際のところ自分の足で赴いて体験しなければ知り得ないこともあるだろう。あとネットで検索するのが面倒くさいというのもある。今回は日時など公式サイトは調べたが、撮り方や持っていくべきレンズに関して調べる気持ちの余裕がどういうわけかなかった。
神戸ルミナリエは幸い地元なので、暇さえあれば何度でも足を運べるのだが、寒い冬の夜だし、同じものをもう一回見るのも面倒くさいし飽きがくるだろうから、やはり一度の感動で留めたい所。この日持っていったレンズは、Canon EF16-35mm F2.8 L Ⅱ USMとCanon EF24-70mm F4L IS USM、ZEISS Otus 1.4/85の三本。カメラはフルサイズ機のCanon 5DsR。
なんとか三本に止めることができたが、欲を言えば二本にまとめたい。まず超広角レンズは、神戸ルミナリエの光のトンネルを頭の中で思い浮かべると、かなり画角の広い描写が必要だろうな、それに超広角ならダイナミックな絵が撮れるだろうからということで選んだ。あと、超広角レンズならシャッタースピードも遅くできて明るく撮れるかもしれないという期待もあった。
85mmの中望遠レンズを選んだのは、ミルフィーユのように重層的なルミナリエをボカして撮りたかったからだ。
手振れ防止付きの標準ズームレンズを選んだのは、やはりシャッタースピードを遅くして、手持ちでもブレずに明るく撮りたいという理由から。それにズームレンズなら様々な絵作りに対応できるだろう。
結果から先に述べると、手振れ防止付きの標準ズームレンズは使わなかった。24-70mmという焦点距離だとどうも中途半端な絵作りになってしまうような気がして、レンズを装着する気になれなかった。出発点の大きな門は街路樹を入れないために近くで撮るなら24-35mmくらいの焦点距離が妥当かなとも考えたが、頻繁なレンズ交換は人々が少しずつ動く混雑した場所では面倒。人通りのない歩道に行けばできないこともないが、行ったり来たりもなんだか面倒。85mmの単焦点レンズで済ませた。街路樹の影が写り込んじゃってるけれど。
あとルミナリエ、明るすぎて、F1.4とかF2.8開放での撮影なら、ISO感度100〜300くらいでも十分明るく撮れる。ISO感度を1600にでも設定しようものなら白飛びしてしまう。とにかくせっかくのルミナリエなのでその光の美しさを取りこぼさないように記録したく、白飛びしないように注意して明るさを決めていたら、低ISO感度になっていた。少し暗いと感じたら、RAWで撮っているし、後から明るさをあげてやれば良い。
というわけで、手振れ防止付きの標準ズームレンズの存在は影を潜めてしまった。
超広角ズームレンズならルミナリエを広く入れることができる。正面の門は歪みなくまっすぐ撮りたかったが、まぁ面倒臭いから仕方がない。別に仕事で来てるわけじゃなし。超広角だとルミナリエが入る入る。ただこの歪みの表現がいいのかどうかはわからない。自分でも撮っていてちょっとパース効きすぎかなとも思う時がある。逆に11-22mmの超広角ズームレンズがあればもっと面白い絵が撮れたんじゃないだろうかという期待も膨らむ。でもあのレンズ確か40万くらいするんだっけかな。
5060万画素の5DsRなので、手ブレにはシビア。しっかり構えてシャッタースピードもいつもよりも余裕を持って設定しなければならない。群衆の中で撮るので周りの熱気や圧力で手ブレしやすくもある。16mmの時は1/60秒、85mmの時は1/200〜1/250秒とした。
中望遠レンズで撮る場合はルミナリエが遠くにあり人の頭で陰ってしまうので、人が写らないようにカメラを上にあげて、ライブビューモードでピントを合わせて撮るしかない。超広角ズームだとルミナリエのそばで撮ることになり、群衆もそう目立たないし、後からRAW現像でシャドウやブラックの値をマイナスにして群衆を黒く誤魔化すことも出来るから、ファインダーを覗き込んでAFで楽に撮影できる。
「ゆっくり動いてくださーい、後ろがつかえていますので立ち止まらないでくださーい」と警備員が促すが、皆立ち止まってスマホやタブレットやセルフィーで撮影しながら少しずつ動いていく。その止まっては動き、止まっては動きの流れに合わせて撮影していけばいいだろう。この日は意外と一眼カメラを持っている人はあまり見かけなかった。人も多いし、きっと面倒臭いのだろう。
光のトンネルを抜けると、広場に出るが、ここで超広角ズームレンズが大活躍した。少し距離を取らないと全てが入りきらないくらい広かった。ルミナリエは年ごとにデザインも変わるからどのレンズがいいかは一概には言えないが、でもやはり広い空間を活かしたデザインになるだろうから、超広角ズームレンズは鉄板だ。
撮影全般を通して、開放F値で撮影。ISO感度は100から160。白飛び防止に気を使ったためやや暗めではあるが、後からRAW現像で明るくすることを想定しておけば良い。1段半ほどパソコンの後処理で明るくしたが、ISO感度が低いのでノイズは目立たない。
現場の背面液晶画面で見たら十分明るく見えたのだが、夜の暗闇の中でのデータ確認だからだろうか。実際に家に帰ってパソコンで見るとやや暗めだったのだ。カラフルな電飾のため、この明るさでも十分目立つのが錯覚を誘引したのかもしれない。
ちなみにビルなどの普通の夜景はルミナリエを撮るときのカメラの設定では暗すぎた。やはりISO感度を1600まで上げないといけないようだ。
神戸市役所の市庁舎24階にある展望室からも撮影できる。85mmが収まりが良い。
ではまた来年、訪れる機会があれば。
※この記事の作例はフルサイズで撮影しているので、APS-C機をお使いの方は、記載されている焦点距離を1.5(キヤノン機は1.6)で割った数値を参考して頂きたい。例:焦点距離85mm→約56mm。