日中でも夕暮れっぽく撮る為には、ホワイトバランスを色温度(ケルビン【K】)に設定して、ケルビンの数値を高くすれば良い。それだけで簡単にオレンジ色っぽい写真が撮れる。
問題は、ケルビンの数値を高く設定してオレンジっぽく撮った写真が、夕暮れ時の雰囲気を上手く醸し出しているかどうかだ。何も考えずにただケルビンの数値を高くしただけでは、心許ない。よりリアルな夕暮れ時を演出するには、背景を作り込む作業が必要だろう。
作り込むと言っても、今回は海を背景にした野外撮影なので、物で飾ったりストロボで光を演出したりは出来ない。背景に海を持ってくるのは良いとして、どうせなら日中の光を反射してキラキラと燦めいている海の範囲を、背景に持ってくる事にした。
使用レンズは圧縮効果を強調するためにも望遠がいい。200mmの単焦点望遠レンズ、Canon EF200mm F2.8L II USMで撮影した。望遠レンズを使うと、フレーム内に主題を入れるために必然的に被写体から距離を取って遠くから撮影することになるので、圧縮効果が生じる。
圧縮効果で、背後の海が被写体の後ろに引き寄せられ、キラキラとした輝きで被写体を飾り立てている。
背景を綺麗に写す為の理想的なF値は?
さて、この場合、F値の設定をどうするかで、背景の描写も変わってくる。開放もしくは開放付近で撮るべきか、絞って撮るべきか。違いを見ていこう。
F6.3で撮影した写真は、海のキラキラが小粒になっている。
一方でF3.2で撮影した写真は、海の燦めきのボケが若干大きくて、丸ボケが互いに相殺し合って繋がり、白い塊を形作っている。シャッタースピードの上限である1/8000秒で撮影しても明るくなったので、RAW現像ソフトDPPで、F6.3で撮った写真と同じ明るさにした。
被写体の明るさを決める
次に、メインの被写体を明るく撮るか、暗い影のように撮るかの問題もある。明るく撮れば、背景の海は白く飛んでしまい、ボケの効果が、ほぼなくなる。
被写体を暗く撮れば、背景の海のキラキラがシッカリと描写されるが、肝心のメインの被写体は暗くて顔がよく見えなくなってしまう。しかし雰囲気写真としては上出来だ。叙情味溢れた写真に仕上がった。背中ならぬ、影で語るという奴だ。
明るくもなく、かといって影のように暗くもない写真が、今回は正解のように思える。
というわけでRAW現像で明るさ調整をしようと思ったが、影の写真も捨てがたいので、モデルであるコスプレイヤーさん達の編集にお任せすることにした。ISO感度100で撮影しているので、露光量を上げても、そんなにノイズは出ないはずだ。