午後3時過ぎの日中でも、夕焼けのように撮る方法!

午後3時半過ぎに撮影した写真。思い切って夕焼けのように撮ってみよう。
午後3時半過ぎに撮影した写真。思い切って夕焼けのように撮ってみよう。

夕陽の出ている時分のイメージで撮るには、何も夕陽の出ている時間帯に撮る必要はない。日が傾きかけた時間帯に、夕焼けのイメージで撮ることも出来る。

今回の撮影場所は大阪南港のATC。大阪中心部から電車で20分ほどの人工島にあるこのショッピングモールでは、週末になるとコスプレイベントが開催されている。賑わっているかといわれれば、全盛期ほどではない。昔は1000人以上のコスプレイヤーが参加していた時期があったそうだが、今日見た限りでは50人もいなかったように思う。

人づてに聞いた話によると、賑わっていた当時はテニスの王子様が流行していて、皆交流目的で集っていたそうだ。建物前の広場がコスプレイヤーで埋め尽くされていたという。そういえば一年ほど前にミュージックバンドのSEKAI NO OWARIがATCで無料ライブを開催した時は、いつもは閑散としている建物の前が群衆で埋め尽くされていた。賑わっていた頃のATCのコスプレイベントは、あの時に見た光景のようだったのだろうか。どうも信じがたい。

今現在のATCは、野外は子供向けの遊具やペイントなどで色々と改装が施されている。この一連の改装の流れがどうもコスプレ写真が撮りづらい場所になったという印象を与えているようだ。

とはいうものの、まだまだ撮れる場所がある。以前から海の燦めきを使ってコスプレ写真を撮りたいと思っていたので、今回挑戦してみた。

夕焼けのように撮る為のカメラの設定方法

1月下旬の午後3時過ぎ。まだ日は明るく、空はオレンジに染まっていない。カメラのオートホワイトバランスも、普通の日中の色味で撮れる時間帯だ。

カメラの設定を見ていこう。ホワイトバランスはケルビン指定の【K】。ケルビンの数値は上限の10000を選んだ。

ホワイトバランスをKモードにして、自分で色温度の数値を指定するという事は、写真の色味を自由に変えるという事だ。数値を高くすれば、暖かい色(暖色)に、低くすれば寒い色(寒色)にすることが出来る。

今回は夕陽っぽい色にしたかったので、ケルビンを上限の10000Kまで上げたというわけだ。これが例えば夕暮れ時で全体的にオレンジ色っぽい空になっていれば、ここまでケルビンを上げる必要はない。むしろオレンジ色が強過ぎて不自然な色合いになっていたことだろう。

光の色温度とホワイトバランスの関係

本来は、その場に溢れている光の色温度に合わせて、ケルビンの数値を指定する。蝋燭の炎の色温度は1800K、白熱電球は3200K、日中の太陽光は5500K、晴天の日陰は7500K。その場の光に合わせて、光の色温度を指定することで、色被りを防ぎ、自然な色合いの写真に仕上げることが出来る。

自然な色合いと言えば、語弊があるかも知れない。ライブハウスのタングステンライトの光源下で撮影した色被りのあるライブ写真は、人がその現場で目にしたのと同じ色合いだ。コレが自然と言えば自然な色合いのライブ写真だろう。その場のリアルな雰囲気が伝わってくる写真だ。キヤノンの新オートホワイトバランスは、光源の色のリアルを再現できる「雰囲気優先」が用意されている。

だからここではキヤノンの新ホワイトバランスの名称に従って「ホワイト優先」の色味とでも言い換えておこう。キヤノンのデジカメでは、ホワイトバランスを「ホワイト優先」に設定すれば、どの光源下で撮っても、同じ自然な肌の色の、無難な写真にしてくれる。

なぜカメラにはホワイトバランスという機能があるのか。人間の目は白を白と認識できるが、カメラは出来ない。だからホワイトバランスで調整して、どのような光源下でも人間の目で見たのと同じ自然な色合いの写真を撮ることが出来る。

調整のやり方は、カメラの性能にお任せのオートホワイトバランスだったり、自分で白の写真を撮って、その写真を元に設定するマニュアルホワイトバランスだったり、ケルビン指定だったり、白熱電球、晴天、日陰などの直截的な指定だったりする。

コスプレ撮影で日中に夕焼けのように撮るにはワケがある

というわけで、日中の晴天の透明な光の中で、ケルビンの数値を10000Kまで上げて撮影したら、見事に夕焼けっぽい写真が撮れた。

ケルビンの数値を大胆に変えたら、夕焼けのように撮れた。影の伸び率は切って誤魔化す。
ケルビンの数値を大胆に変えたら、夕焼けのように撮れた。影の伸び率は切って誤魔化す。

どうせなら夕焼けの時間帯に撮った方がリアルじゃない?写真ってリアルを追求するものじゃないの?本物の夕陽で撮った方が良いよ、と思われるかも知れない。

だがコスプレイベントには終了時間が設けられている。この日は17時で撮影終了、17時半には更衣室を完全退室しなければならなかった。実際にはコスプレイヤー達が更衣室に戻る時間も考慮に入れないといけないから、16時45分で撮影を終えなければならない。

夕陽になるのを待っていては、撮影時間がほとんどない。また終了間際は何かとバタバタしてしまい、焦りが生じて落ち着いて撮れない。

それに、秋の日は釣瓶落としという諺にもあるように、秋冬の夕陽というのはあっという間に沈んでしまうから、撮りたいフォーメーションでたくさん撮れない恐れもある。

また、太陽を反射した海の燦めきの範囲が変化する問題もある。今回はこの海の燦めきを上手く使いたかった。この季節のこの場所で夕暮れ時になると、海の燦めきの範囲が狭くなってしまうのだ。夕暮れ時になるのを待っていたら、海の燦めきをダイナミックな形で背景に入れることが出来なかっただろう。

午後3時頃のATC沿いの海。
午後3時頃のATC沿いの海。
午後4時47分のATC沿いの海。海が燦めいている部分が細くなってしまった。
午後4時47分のATC沿いの海。海が燦めいている部分が細くなってしまった。

それに我々が普段目にしている写真や映画にしても、案外色温度をいじって日中なのに夕暮れ時のように、昼なのに夜のように撮っているかも知れないのだ。自然の色に反するからといって、恐れてはいけない。表現には絶対こうでなければならないという事はない。