etoile studio

コスプレ写真を撮る時の考え方

model:Kai
model:Kai

作品を知っていたり好きな作品だからといって上手く撮れるとは限らない。結局の所、所有しているレンズやストロボなどの機材、構図力ほか諸々の積み重ねてきた経験や知識を総動員して、どのように撮るかという事が重要になってくる。

この日は住友セメント工場跡地でのコスプレイベントだった。往復の交通費4000円とイベント代5000円の計9000円といつもよりもややお高めの費用がかかる撮影となったので、何としても良い写真を残したい。そこでコスプレイヤーさんが着替えている1時間半の間に、ロケハンを試みた。

敷地内をぐるっと回って廃墟の写真を撮っていく。後からレイヤーさんに見せて、どこでどのように撮って欲しいかをイメージして貰う目的もある。

廃墟写真はあんまり撮ったことがないし、廃墟といえども許可なく他人の敷地の中に入るのは不法侵入になるので、なかなか経験が積めない。しかし今日はイベント側が交渉して許可が下りているので普段門が閉ざされて入ることが出来ない廃墟を存分に撮る事が出来る。代わりに所有者と交渉して許可申請してくれるイベント様々である。この日は片道30分の無料送迎の他に温かいうどんやラーメンも無料で提供されていたので、それらのことを勘案するとイベント代5000円は該当な値段に思われてきた。

レイヤーさんの着替えも終わったので、温かい昼食を取ってからいざ撮影。爆撃を受けて荒廃した戦後のベルリン市街を彷彿とさせる廃墟の建物が作品のイメージとピッタリだったので、それを背景に撮ることにした。

ところが実際に撮ってみると想定していたような絵が出てこない。はじめの2枚は超広角レンズで撮ったが決まらなかったので、とりあえず圧縮効果を狙って400mmの超望遠レンズにつけかえて撮ってみた。ところが全く以てフレームに廃墟の二階部分が入ってこない。そして構図も決まらない。作品を知っていて大好きなのにである。行きの電車の2時間の間にiPhoneで画像検索してどのように撮るか頭に思いを巡らせていたにもかかわらず。

よくよく考えてみればそのような参考画像と同じ構図を目指したところで、背景が異なっていれば背景の系統がたとえ似ていたとしても、うまく決まった写真が撮れるわけがない。現場の背景を吟味して構図を練らなければならない。3分割4分割日の丸などを何の考えも無しに当てはめるように脈絡なく選んだ構図は大抵は失敗する。良い構図になるためには、何かしらの理由が必要である。

どうも決まらない、普通っぽい写真が続く。気の抜けた写真だ。後から聞くとレイヤーさん側も初出しのキャラクターで、どのようにポーズを撮って良いのか戸惑っていたという。普段は男装のコスプレばかりしている女の子なので、ポーズを取るのになれていないというのもあるのだろう。先日創作合わせの撮影をしてきたのだが、普段ポートレートのモデルをしている女性を撮った時は、本当にこちらが気怖じしそうなくらい撮られ慣れていた。そのような女性はポーズを取っただけでパッとオーラが出るのである。それと比べると、この日の彼女のポージングには戸惑いが見られた。そういう所がすべて写真に出てしまっていた。

400mmを85mmのレンズに変えて廃墟の二階部分が収まるようにし、再び圧縮効果を狙って200mmのレンズに変えてみたが、やはりどうも決まらない。この建物に固執していてはいけないのではないかという思いが強くなってきた。それに初めての場所ではやはりどう撮ったらいいのか戸惑うものである。動きが欲しいがどうも写真に動きがない。これは中望遠から望遠で撮っているせいだろうか。

雨が強くなってきたので場所を変えて撮影。建物の中へ。上手く撮れなかったのでどうも気分が沈みがちだ。今日は撮影枚数に恃んで新しいロケ地に慣れなければならないと感じた。とりあえず廃墟に溶け込まなければならない。構図にしても、試行錯誤しないと良い構図は導き出されない。一つの構図に決めて撮ってしまうと、それで思考が固定してしまう。教科書的な考えではなく、柔軟な発想が求められる。その為には示唆された一つの構図に固執しないで数を多く撮る必要がある。

狭い建物内を広く写すために超広角レンズに付け替えて撮ってみると面白い絵が撮れた。少しだけエンジンがかかったような気がした。良い写真が撮れると士気も高まる。ストロボを後ろから付け足したり、ストロボをオフにして自然光で撮ってみたりと試行錯誤を繰り返す。

月の花を使って撮った写真がストロボを使って想像以上に神々しく撮れたのですっかり気をよくして、別の場所に移動。超広角レンズを使って動きのある写真を撮っていく。持ってきたレンズを取っ替え引っ替えしてF値も変えて撮っていくとようやく求めていた絵が撮れるようになってきた。レイヤー側もポージングに慣れてきた。

月の花のシーンをイメージして撮影。
月の花のシーンをイメージして撮影。

撮影を開始した頃はロケハンは意味がないのではないかと思われたが、最終的に壁の方に場所を変えた時に、撮りたかった場所で良い写真が撮れたので事前にロケハンしておいて良かった。はじめに狙っていた廃墟の2階部分を背景に入れた写真も、場所を変えると巧く撮る事が出来た。

動きにくそうな衣装と装備のレイヤーさんに頑張ってよじ登って貰った。
動きにくそうな衣装と装備のレイヤーさんに頑張ってよじ登って貰った。

今回の撮影で実感したのは、冒頭にも述べたように、作品を知っていたり作品が好きだったとしても、良い写真が撮れるとは限らないという事だ。持てる機材とスキル・テクニックを駆使して、どう撮るかという事をきちんと念頭に置いておかないと、気の抜けた写真になってしまう。レンズ、ストロボ、ライティング、構図、ポージング、その他諸々の知識と経験を現場の雰囲気に溶け込ませながら生かすことで、ようやく求めていた写真を撮る事が出来た。