etoile studio

写真とフラグメンツ

model:Ui
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コスプレ撮影に赴く前にコスプレイヤーさんから、当日のキャラの性格や関係性や由来、背景などが記されたメッセージが送られてくることがある。

お手すきの時にでもお目を通して頂ければ、ということで、時間の空いているときにさっと読む。そして撮影時にはすっかり頭の中から抜けてしまっている。

結局の所、ポーズや構図などは、そのキャラについて最も詳しいレイヤーさん任せの所があり、好きでそのコスプレをやっているのだから、当然ながらポーズもその方が決まるわけだ。ここでカメラマンがしゃしゃり出てきて、あれこれポーズ指定したらおかしな事になりかねない。

というわけでカメラマンのやることといったら、理想的なライティングになるよう機材を設置し、或いは自然光を読み、こっちを向いたらライトが当たって綺麗に写る、こっちに向いたら影のある感じになる、というライティング関係の指示を出す事くらいだろうか。構図についても求められているイメージに合うようあれこれと引き出していく。ツーショットの場合は二人が離れすぎていて不自然だったら近づけたり、背景に写したくない物がある場合は体で隠して貰ったりと位置指定をする。後は持てる機材とレンズとスキルを駆使して、レイヤーが好みそうな写真を撮影していく。その間、送って貰ったキャラの性格や関係性、背景のことはすっかり忘れている。あるのは刀の魅力、男らしさを引き出すにはどう撮れば良いかという事だけ。目の前にある被写体の姿形に集中する。

基本として目の前にある被写体に興味があることが前提。どんなことでもいい。髪型、衣装、誰々の刀、メイク力、容姿など。興味を抱けないようなら気が抜けてうまくは撮れない。

ライブ感覚で、ぶっつけ本番という感じ。現場で対峙して新しいものを求める。必要であろう機材などは事前に揃える。どんな要望にも応えられるように万全を期す。人事を尽くして天命を待つ。

何事も役割分担をした方が上手くいくことが多い。負担が減るからだ。ようは頭の中のメモリが空くのでその分アイデアも生まれやすい。

レイヤーさんはポーズや構図、エモい背景になりそうな場所を見つける。カメラマンはライティングをしっかりとやる。所望された構図をしっかりと撮る。それ以上の絵が撮れそうな場合は、指示以上のことをやる。

撮り始めは惑うことが多いが、撮っていくに従い緊張がほどけていき調子が乗ってくる。するとアイデアもポンポンと浮かんでくるようになる。

問題は集中力。大体人間の集中力が持続する時間は4時間くらい。仕事でも朝の内はバリバリこなせるが、昼食をとった後は、気怠くなってくる。食事が眠気を誘うのもあるかも知れないが、4時間過ぎるといくら休憩を取っても集中力は回復しそうにない。

しかしこれがテレビゲームとなると別なのは、楽しいからだろう。ゲームと同じで撮影も楽しければ集中力が持続し長時間でも苦にならなくなる。ただし腹ごなしは必要だ。集中力を持続するためには、楽しい撮影であるという事が最も重要だ。後は適度の休憩と水分補給。

撮影中大半は送られてきたキャラの性格や背景については頭からスッポリ抜け落ちているのだが、時々思い出すこともある。どう撮るか迷ったときだ。今回は古の刀が現代にタイムスリップしてきたかのようなポートレート風。言わんとしていることは分かるしイメージできる。ふと深夜アニメで見た高橋留美子の『ファイヤートリッパー』という作品が思い浮かぶ。あれは胸にグッと突き刺さるタイムトラベル物の名作だった。

普段ポートレートは撮り慣れていないので惑う。そこでどのようなキャラだったかを思い出す。しかし背景は現代で、ミスマッチ感を演出したいという要望。う〜〜〜ん。頭の中で物語を独自に作り出すしか無いかとも思えてきたが、その時間も余裕も無い。結局キャラの性格のことは忘れ、レイヤーさんが撮るポーズに対して、焦点距離やF値の設定を駆使しつつ、レイヤーさんが臨んでいるであろう様々な絵を引き出していくスタイルにした。断片的に物語を紡ぐようにして。フラグメンツだ。