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葵祭 – まほろば探訪 第67回

葵祭の主役である斎王代。
葵祭の主役である斎王代。

TwitterのMKタクシーのアカウントに京都で明日葵祭が開催されるという告知が写真付きであり、平安装束を身にまとった500人くらいの行列が観られるというので、早速翌日に春冬期間限定のいい古都チケットを使って行ってきた。

以前からこのような歴史衣装に身を包んだ行列を観てみたかったので念願叶うことになったが、実際に京都御苑の堺町御門から出てくる公家達の煌びやかな行列を目の当たりにすると新鮮な興奮と感動が入り乱れテンションは否が応にも高まったのだった。

行列は朝の10時30分から始まるとのことだったが、この日は少し寝坊してしまい、京都市営地下鉄烏丸線の丸太駅に降りたのが40分頃で、京都御所の門の前に着いたときには既に行列がしずしずと練り歩いているところだった。

しかし現代の建物が建ち並ぶ街中で馬や牛がゆったりと歩いているのを観るのは異世界に迷い込んだかのような錯覚を催させて現実の憂さを忘れさせてくれるひとときでもあった。季節は五月中旬だったが、快晴の空で、まるで夏のような汗ばむ暑さだった。しかし夏になれば更に暑くなるだろうから、おそらく盆地の京都は今時分が最も過ごしやすい時期なのだろう。

500人ほどの行列は御所を出て丸太町通を進み、鴨川に突き当たる前の角を左へと曲がると、そのまま下鴨神社へとゆるゆると進んでいく。その行列が下鴨神社に収まるのが11時40分頃で、それから約2時間半後の14時20分に今度は下鴨神社から北西にある上賀茂神社へと出発する。

とりあえず彼方此方動き回るのも疲れるので京都御所の堺町御門あたりで見物していたのだが、行列の最後尾が行ってしまったので、後を着いて下鴨神社の方へ行ってみた。しかしなかなか追いつかないし、追いついたところで河原町通に至ると現代的な街並みが背景になるので写真を撮るのもなと諦めて行列を見送り、下鴨神社へと向かった。

着いてみると、長い道にロープが敷かれており、白と水色のストライプの涼しげな幕が張ってあった。聞いてみると馬が走るという。そういえばTwitterで流鏑馬の写真を見たことがあるが、これは僥倖と陣取っている観光客達に交じって「走馬の儀」なるものが始まるのを初夏のゆるい暑さの中で待った。

隣にSONYのカメラを持ったおじいさんがいて「良いカメラですね」と話しかけられる。開始の時間には間に合わなかったとかうちもそうだとか、お互い走る馬を撮るのは初めてで、それからしばらくあれこれと雑談していよいよ走馬の儀が始まる。目の前を馬がゆるゆると歩いて行くが、それだけで結構な砂埃が舞う。そして僕が歩いてきた方から馬が走ってくるのだが、これが想像以上の速さで疾駆し馬の乗り手も格好などをつけてまるで黒澤明の映画に出てくるワンシーンのように迫力があって思わず「ウワーカッコいい!」という言葉が漏れた。

おじいさんは2周ほど撮ってから次の目的地へ向かい、僕もおばあさんにスペースを譲って後ろから撮ることにした。しかし後ろからだとやはりギャラリーが写り込んでしまうので難しい。またスペースが空いたので、そこに入らせて貰うことになった。

最後の周には若くてチャーミングな女性の乗り手もいたのだが、写真を撮っているときは必死だからそのことに気づかない。後から写真で見ると、これが見目麗しくて溌剌としたお顔立ちをしている。もう少し撮っておけば良かったと後悔。

神社の奥へと進むと舞台があり、狂言が催されていた。しばし眺めつつ神社にお参りして、美人水なるものを飲み、可愛い巫女さんから御朱印を買って、平安行列の再開の時刻が迫っていたので、神社を出ようとするも、通行規制などが施されておりぐるっと遠回りして外へ出る。

下鴨神社の美人水。
下鴨神社の美人水。

混雑する歩道を歩いていくと、神社を出ようとする行列に行き当たるが、人混みで袋小路となってしまい、行列も通るから信号が1時間ほど渡れないということで他の観光客の「交通整理のお巡りさんが通れませんて事前に言ってくれたらいいのに」という不満を耳に挟みながら元来た道を戻り、対岸の歩道に出て東西を走る北大路通へと向かった。あたかも物知り風に書いてはいるが、この辺りの地理には疎いので、観光客が混雑を避けようと住宅の多い路地にまばらに歩いているのを後を追うようについて行く。途中にまるでマラソンの給水所のように都合良く氷を張った桶にジュースやビールを入れて冷やして売っているスーパーがあったので2本買って先へと急ぐと、北大路通に出て行列と出くわした。

北東の高野川と北西の賀茂川がよくTwitterでも見かける鴨川デルタと呼ばれる三角州の場所で繫がると、その先は鴨川と名称を変えて南へと流れていく。これがまた幾つかの川と重なり最終的に阪神の衛星都市から大阪へ通勤通学する人たちが日毎目にしている淀川となって大阪湾へと注ぎ込む。今回鴨川デルタを通り過ぎて京都家庭裁判所の方へと渡ったので写真は撮り損ねたが、北大路通りの交差点を賀茂川沿いに曲がると緑に囲まれた道路に出るので、行列の雰囲気も俄然良くなる。狭くて混雑はしているが京都御苑前程ではなかった。

そこでしばらく写真を撮って、行列が行ってしまうと、午後3時半を過ぎていた。鋭い光を放っていた太陽も気がつくと憂いを帯びはじめたので、上賀茂神社へは向かわずに、しばし賀茂川を眺めてビールを飲みつつ、リュックサックや荷物の埃を払い、団欒の景色にも飽いてきたので、烏丸線の北大路駅に向かって帰路についた。