寝起きシーンの朝の光を再現する方法

朝の光を演出する。

12年程前に大阪阿倍野のイベントスペースに赴いたことがあったが、あれは古民家だっただろうか。天王寺の駅に降り立ち少し歩くと、テレビのバラエティ番組か何かで見たことがある250円程度のカレーライスを提供している店があった。駅の階段を登ったその先にどのような光景が広がっていたかハッキリとは思い出せないが、少なくとも今のように綺麗に整備された街並みではなかったように思う。あべのハルカスが出来てからすっかり様変わりした。

昔の方が良かったと言うつもりもないが、12年前はそれほど昔でもない。しかしここ10年で梅田も天王寺も新しいビルが建ち並びすっかり街並みが様変わりしてしまった観がある。今回は阿倍野の古民家で撮影したが、場所に着くまでに古い民家が建ち並んでいると想像していたものの、駅からの幹線道路以外は普通の住宅が建ち並び、それも最近建てられた新しい一戸建てが多かった。そんな合間にひっそりと古民家が建っている。

家から駅までの道すがらにも、恐らく建てられた当時は羨望の的であったろう木造の古い日本式邸宅の敷地内に、色だけはエコな武骨な格好のショベルカーが居座り家屋を壊している最中だった。数日後には一部を残して更地になっていたが、門を備えた立派な日本庭園の残骸もあり、金満家の邸宅であったことが窺える。このようにして古い建物は徐々に取り壊されて街は新しく再生していく。もう子供の頃に見かけた日本家屋というものはあと10年もしたら街から全て消えてなくなっているかも知れない。

新しい場所での撮影という事で、どのようなライティングで撮れば良いのか、はじめ惑うところがあった。相手の言葉を受け取り、それをどのようにして映像化するか。今回は撮影の過程をつまびらかにすることで、理想的なライティングの導き出し方を見ていきたい。(全文:2,500字)

今回の撮影で使用したレンズ