昔プロカメラマン主催の撮影会に参加した時によく言われたのが、モデルを褒めろということだった。撮影会に参加するアマチュアカメラマンの中には、ただ黙々とモデルを撮る人が多いという。
しかしいざ褒める、声をかけると言われても、慣れていないと小っ恥ずかしいものだ。本心から褒めるのも恥ずかしいし、かといってウソで褒めるのも後ろめたい。そもそも声をかけながら撮るのは、プロカメラマンみたいで何だかプロじみていて背伸びをしているようで恥ずかしい。
と長らく思っていたのだが、コスプレを撮るようになってからは、自然と声も出るようになり、モデルを褒めることが多くなった。黙って撮っていると、間が持たないというのもあるし、一度喋り出すと撮影そっちのけでベラベラ喋ってしまうという性格もある。
しかしそれでもモデルの声かけが本当に効果があるのだろうかと半信半疑でいた。そもそも撮影中にモデルを褒めることで、モデルの心境にどんな変化があるのだろうか。
先日撮り合いをしてきて、その心境が理解できた。8月も下旬にさしかかった日に、野外の公園で女の子と撮り合いに行ってきた。最高気温は38度、持ってきたペットボトルがぬるま湯のようになるくらい暑かった。
撮影も終盤にさしかかり、コッチはクタクタ。しかし向こうは有り難いことに撮る気満々である。とりあえずポーズを取ったが、暑さで気合いが入らない。どうやら死んだような表情だったらしく、彼女の方が声をかけ始めた。
「はーい笑ってー、あーいいいい、はいいいよー、あーそのポーズいいねー、あー可愛いよー。はいこっち向いてー。ハイイイネねーはーい撮りますよー」
撮っている間、延々と褒められた。写真館で子供を撮るカメラマンみたいな雰囲気の声かけで半分冗談みたいなテンションだったが、なぜか不思議とこちらのテンションも上がってきて、38度の灼熱の中で表情が甦っていくのが自分でも分かった。そうか、声かけにはこういう効果があるのか。昔、花に毎日「キレイキレイ」と話しかけたり、モーツァルトの音楽を聴かせていたら凄くよく育ったとか、それと似たような効果があるのだろうかとも思った。
褒め言葉はモデルの表情を活き活きとさせるスパイスだ。自分でも実際にモデルの側になってみて、まさかこんなに効果を実感できるとは思わなかった。皆さんも是非たくさんモデルを褒めて、モデルの活き活きとした表情を引き出してみて欲しい。