ソフトボックスをメインライトにする撮影を始めてから、たまにアンブレラが恋しくなってくる。ひょっとしたらこのシーンではアンブレラで撮った方が光の周り方が綺麗なのではないだろうかという思いに駆られることが度々あるからだ。
ここでもう一度ソフトボックスとアンブレラのメリットやデメリットを考えてみることにしよう。
ソフトボックスの長所
ソフトボックスの長所は、なんと言っても被写体に影が着けやすいところだろう。光の面が真っ直ぐなので、どの角度でソフトボックスを設置したら、被写体にどういう風に影がつくかを想像しやすい。たとえ想像がつかない場合でも、単純に角度をつけてやれば、被写体に影が付いて立体的な描写になるので、分かりやすい、光を扱いやすいというのがソフトボックスのメリットだ。
アンブレラと比べて、ソフトボックスの向きを変えて光を調整するのが感覚的に楽しいというのもある。楽しいのは光の向きを変える事でカンタンにモデルの描き方を変えることが出来るからだ。簡単にできることは快楽に繋がる。ソフトボックスの利点と言えるだろう。
これがアンブレラだと、その丸い形状のためか難しい。モデルに影を着けたくて四苦八苦した記憶がある。光が広がり過ぎて、思ったように影を着けづらいのだ。
更にソフトボックスにはグリッドを着けることが出来るので、光の指向性を更に高めることが出来る。背景にソフトボックスからの光が届きにくいようにしてくれる事で、被写体をより立体的に際立たせることが出来る。
また光をボックスの中で逃がさないためか、アンブレラに比べると光量が大きい。数万円台のフラッシュで光量が大きくなるのは、背景を暗く、被写体だけを明るく照らしたい撮影の際には重宝する。
ソフトボックスには、中にシートが付いているタイプの製品もある。このシートがストロボの光を一度バウンスさせるので、光が柔らかくなる。というのが理屈なのだが、果たしてアンブレラと比べると光の質はどうなのだろうというのが実際の所だ。実験していないので何とも言えない。
狭いスペースでも場所を取らないのもソフトボックスの良いところだ。アミューズメントスタジオのような多種多様なブースが設置されている通常のスタジオで撮るなら、一般的によく使われているソフトボックスの大きさは60cm×90cmだが、短辺の60cmはSサイズのアンブレラよりも短い。更には30×90のようなリムライト用の縦長サイズのソフトボックスもあるので、狭い場所でも設置しやすいというメリットがある。
ソフトボックスの長所をまとめてみよう。
- 被写体に影が着けやすい
- 光量が大きい
- 光が柔らかい
- 狭い撮影スペースでも場所を取らない
アンブレラの長所
これだけソフトボックスの長所を並べ立てたところで、アンブレラの長所を見いだせるだろうか。頭を捻らせてやってみよう。
まず組み立てが楽。傘を開いてアンブレラホルダーに填め込むだけで良い。ソフトボックスに比べて設置が楽、片付けが楽、荷物も嵩張らずに軽いというのがアンブレラの利点だ。2灯必要な時も、ソフトボックスと比べて荷物が極端に重くなるということがない。気軽にアンブレラを2本持って行ける。
それでいて、ディヒューザーよりも肌を綺麗に写してくれる。ソフトボックスの光とも遜色ない。ひょっとしたら光が漏れる分、ソフトボックスよりも光の周り方が綺麗かも知れない。
値段の安さもメリットとして上げたい。Profotoのソフトボックスはだいたい2万円~3万円超する。対して同じメーカーのアンブレラSサイズは8,000円程度だ。ソフトボックスだと、24,000円するスピードリングアダプタも必要なので高額になるが、ストロボとアンブレラを取り付けるアンブレラホルダーは4,000円程度だ。
また、アンブレラを支えるライトスタンドも、値段の安い軽い製品が使える。ソフトボックスだとその重量を支えるためにシッカリとしたライトスタンドが必要になる。
つまりアンブレラは総合的にコストパフォーマンスに優れている。
- 重量が軽くて、荷物が嵩張らない。
- 設置や撤収がカンタンで撮影準備に時間がかからない。
- 本体、オプション品含めて安いので複数設置に経済的/心理的負担が軽い。
- ソフトボックスと遜色なく、モデルを綺麗に撮ることが出来る。
コストパフォーマンスの面から言えば、有名メーカーのアンブレラを一本買うのと変わらない値段の安価なソフトボックスのセットも販売されているので、甲乙付けがたいところがある。
ソフトボックスか、アンブレラか、何とも悩ましいところだが、男と女、1灯と2灯、白ホリと黒ホリそれらのシチュエーションでどちらが被写体をより綺麗に写せるか検証が必要だろう。面倒臭いのでカメラ雑誌の特集で実験して貰えないだろうかと願う日々だ。