Canon 600EX Ⅱ-RTと430EX Ⅲ-RT、それぞれの有用性

キヤノンの電波通信方式のストロボが不調に陥った時の対処法。
Canon 600EX-RT系と430EX Ⅲ-RTのそれぞれのメリット。

スピードライトCanon 600EX-RTが3台、Canon 600EX Ⅱ-RTが1台の計4台体制になったので、4台のストロボを持っていき撮影に出かけた。実際の撮影での使い勝手はどうか、600EX-RT3台と430EX Ⅲ-RTを2台のライティング機材構成と比較して書き綴っていきたい。

ストロボを修理に出す

今年の春にCanon 600EX-RTのストロボ1台を三脚に取り付けたアンブレラホルダーにセットして透過させて使用していたのだが、折からの強い春風が吹いてアンブレラだったこともあり風の影響をもろに受けコンクリートの地面に倒れてしまった。今まで似たような感じでストロボを倒したことは何度かあったがかろうじて故障せずに使い続けることが出来た。今回は運悪くケースが外れて首回りの中のコードなどが垣間見えてしまう状態だったので、自分で直すと危ないという事もあり、しばらく修理に出さずにケースに入れて大切に保管しておいた。

同じ時期にCanon 600EX Ⅱ-RTを新たに購入し、600系のストロボ3台体制は崩れることは回避できた。以前と同じようにスタジオ撮影の際は430EX Ⅲ-RTを2台の計5台体制で撮影に赴くことになった。

しかし11月にCanon 600EX-RTのワイヤレス電波通信機能が不調を来たし、十数回光らせた後に、ワイヤレス電波通信が反応しなくなるという不具合が生じた。長時間休ませていると再び電波通信が反応するが、やはり十数回光らせるとうんともすんとも言わなくなる。

ということでキヤノンのサービスセンターに修理に出したのだが、そのついでに破損して放置していたもう1台のCanon 600EX-RTも合わせて修理に出すことになり、見積もりの時点で45,000円、実際にかかった修理が約35,000円だった。

再度不具合が発生して再修理

しかしワイヤレス電波通信の不調だった方の1台が再びフル発光症状やフル発光の設定で最小、Ⅰ/128の最小光量の設定でフル発光という症状を起こし、再び修理に出すことになった。

撮影開始時にフル発光であることに気づかず8人の大型撮影をしていたが、途中からフォーメーションを変えて母屋の前で撮影した際に、キヤノンのトランスミッターST-E3-RTで光量調整しても一番手前の被写体が明るく写りすぎることに気づき、撮影開始時のテスト発光でも、他のストロボと違いやたらとパシャッと眩しく光っていた事もあり、トランスミッターの光量を最大と最小に設定してそれぞれ試し撮りをして、フル発光症状であることを確認した。

再び修理に出して今度はキヤノンの側も気を遣ってくれて通常よりも短期間で戻ってきたのだが、撮影に持っていくと今度は再びワイヤレス電波通信が全く反応しないという不具合が発生した(後に修理から戻ってきたストロボの電波通信IDが変更されていたことが原因と判明)。ということでその日の撮影は仕方なくCanon 600EX-RT系の3灯で撮影することになった。そして二日後の撮影ではCanon 600EX-RTと430EX Ⅲ-RTのいつも通りの5灯体制で撮影。

Canon 600EX Ⅱ-RTとCanon 430EX Ⅲ-RT、ガイドナンバーの比較

色々アクシデントに見舞われたが、怪我の功名で各ストロボの利便性について見えてきたこともあった。

まずCanon 600EX-RT系は430EX Ⅲ-RTよりもガイドナンバーが大きく、光量が大きい。だからCanon 600EX-RTはスタジオ撮影でとても使いやすいし、野外撮影でもやや光量不足ではあるが威力を発揮する。Canon 600EX-RTを好む理由はこの一点にある。

Canon 600EX Ⅱ-RTは照射角105mm設定時(ISO100・m)でガイドナンバー54、Canon 430EX Ⅲ-RTは同じ設定でガイドナンバー43とキヤノンの公式サイトのスペック表にあるから、Canon 600EX Ⅱ-RTの方が光量は大きいことになる。

明るさを取るか、数を取るか。

ということで、Canon 600EX RT系を4灯持っていったときは、Canon 430EX Ⅲ-RTは家に置いていくことにした。まずCanon 600EX RTを4灯入れると、カメラバッグが満杯になり、それ以上ストロボを入れることが出来ない。

しかし実際に持っていって使ってみたことには、8人の大型合わせの際には4灯でギリギリだと感じたシーンに出くわした。襖の手前に人物2人、その奥の和室に人物6人、全体的に暗めで、更にその後ろの障子をカラーフィルターを着けたストロボで色をつけたいと言われたときに、4灯では足りないことを痛感した。和室のメインのソフトボックス2灯で光量を確保し、障子の後ろに三脚を立ててカラーフィルター付きのストロボを1灯、手前の2人を明るくテラスとなったときにアンブレラで1灯。欲を言えば和室の6人を両側のストロボで当てたいとなると5灯必要になる。

この件については何とか解決したのだが、どうも大人数の大型併せでストロボ4灯だと心許なさを覚えたシーンだった。

かといって、20人以上の白ホリゾントでの大型併せでは、Canon 600EX RT系3灯とCanon 430EX Ⅲ-RTを2灯の計5灯では光量がどうも今ひとつ足りなかったから、430EX Ⅲ-RTを2灯買うなら、そのお金でCanon 600EX ⅡーRTを1灯買っておけば良かったとぼやいたこともあった。

さて後日、別のコスプレイヤーさんを個撮する事になり、いつもの慣れた5灯体制でスタジオに出向くことになった。人ひとり通れるくらいの狭い廊下のような藤のブースで撮影した時のこと、女子キャラなので前にストロボ2灯、後ろにストロボ2灯を使って撮影。藤に向けた他に、背後から人物を照らしてリムライト代わりにしたので、後ろに2灯必要となった。

Canon 600EX RTよりも光量が小さいCanon 430EX Ⅲ-RTではあるが、充分に仕事してくれる。Canon 600EX RTとCanon 430EX Ⅲ-RTでは大きさが異なるので、ワイヤレス電波通信で同じグループにして発光させると光の大きさが異なってくるというデメリットはあるが、カラーフィルターで色をつけたり背景を明るくしたりするのには申し分ない。そしてカメラバッグに後1灯ストロボが残っているという安心感がある。心の余裕が持てた。

Canon 600EX RTを4灯持っていく代わりに、Canon 430EX Ⅲ-RTを2灯を600系と明るさや統一性の面でのトレードオフで代えれば、同じカメラバッグでも5灯のストロボを持って行けることになる。ストロボが多く必要になりそうな撮影では、むしろ小型のCanon 430EX Ⅲ-RTを持っていった方が融通が利く。

正直Canon 430EX Ⅲ-RTはあまり好きになれないストロボであったが、今回の機材トラブルにより比較撮影が出来たことで、Canon 430EX Ⅲ-RTの携帯性や表現の幅を広げてくれる面での有用性を実感することが出来た。