真田丸第5回「窮地」感想

真田丸 前編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)

放送開始から、京都市長選当確のニュース速報テロップが画面上に大きく長々と表示されていた。確か「龍馬伝」の時は、クライマックスの龍馬暗殺のシーンで長々デカデカと愛知県知事当確の選挙速報テロップが流れたことがあり、あの際にはNHKに苦情が1900件も寄せられたそうだ。この後の8時45分のニュースを放送するのだから、5分くらい待てばいいのにと思ったが、NHKのスタッフは融通が利かないのだろうか。

今回は冒頭だったからまだマシなものの、ストーリーの最中に字幕でニュースが出たら興醒めしたことだろう。

正直な話、愛知県知事とか京都市長の当確とか、興味がない。これでも選挙は欠かさず投票に行き、政治にも幾分か興味がある方だが、当確速報は本当に興味が湧かない。これが地元の神戸市長だったらどうか?正規のニュースが始まる45分後に知ればいいことだ。地震のように急ぐニュースでもない。

これが阪神大震災や東日本大震災、来たるべき東南海地震、関東大震災クラスの津波を伴う地震なら、即刻ドラマを中断して臨時ニュースに切り替えるべきだろうが、地方の首長の当確ニュースなんて1時間くらい遅く知っても別に困らないし、何なら翌朝の朝刊でもまだ早いくらいだ。命に関わることでないニュースを速報でやられてもと思う。NHKは特に民放と違って50分ごとにニュースを放送しているのだから、それだけでも十分速報性はあると思う。どうもせっかちで何事も早く済ませなければならない現代人の悪い気質を体現しているような気がしてならない。

家康の神君伊賀越えがコミカルで見もの

さて本編。今回は徳川家康の神君伊賀越えの模様が途切れ途切れに挟み込まれる。繰り返しが多用されていて面白い。さすが三谷幸喜の脚本だな、笑いのツボを心得ている。服部半蔵が登場し、家康一行を伊賀経由で本拠地三河まで無事に送り届けるのだが、一行が落ち武者狩りに遭遇する度に、家康に話はつけているのかと聞かれ、「全力で押し通りまする!」を繰り返すばかりで、どうも頼りなくて笑える。

それにしてもいいロケ地だ。急な坂道がいい。大河ドラマは予算の都合からか、野外風に見立てた屋内セットのシーンが度々見られるのだが、余りにもセットですといった感じの草木で興をそぐのだ。今回の真田丸は風光明媚な野外ロケが多い。見ていてとても心が洗われる。僕もああいう所で戦国無双とか戦国BASARAのコスプレ写真が撮りたい。
今回は榎本孝明演じる穴山梅雪がキーマンのはずだったが、落ち武者狩りに殺されるシーンは省かれ、「この後二度と三河に戻ることはなかった・・・」とのナレーションだけで、梅雪が殺されてしまったことが示唆される。榎本孝明と言えば、角川春樹監督の映画「天と地と」で上杉謙信を演じた名優だ。その後もサスペンスドラマなどで二枚目の役をたくさんこなしている。その榎本孝明が禿げズラをかぶって、「あれは向こうが勝手に裏切ったのじゃ。そなたは我らから誘った。同じ裏切り者でも格が違う」と家康に宥められ複雑な表情を見せたり、家康と袂を分かつ段になって、アレと一緒にいては命がいくつあっても足りぬと吐き捨てたりと、なかなかダークな役どころだった。

そして一番期待していた、史実にある痔であった為に馬に乗れず家康と別行動となったシーンは、腰痛持ちということに話が変えられた。その腰痛も家康と袂を分かつ為の方便であるらしい。

何でもトーク番組「スタジオパークからこんにちは」で、「アナ雪と呼んでください」と言ったとかで、お茶目な一面も併せ持っている二枚目俳優である。

さて、昌幸の方は、頼みにしていた織田信長が本能寺の変で斃れた為に、今後どうすればいいのか必死になっていた。息子の信幸に聞かれ、「さっぱりワカラン!!!」と怒鳴り飛ばす昌幸に爆笑。「どうすればいいのじゃ!ワシはどうすれば良い!!」吐逆に息子信幸に迫り、あげくは信長をボロクソにけなす逆ギレぶり。面白いドラマだ。

小県郡の小領主が集まっての軍議。いったいどこにつくべきまま寄っているところへ、西村雅彦演じる領主が信幸に向かい「黙れ小童(こわっぱ)ぁ!!」と怒鳴りつける。前回でも同じセリフで怒鳴りつけていた記憶がある。

家康一行も命からがら本拠地三河に辿り着いた。服装がボロボロである。畳の上に倒れ込む家康。こんなコミカルな家康は記憶の限りでは見たことがない。後年陰険な策謀を張り巡らせる狸親父と何かと嫌われ者になるが、果たしてこのコミカルな演技はどこまで続くのだろうか。

と書いたところで、主役の信繁について全く言及していないことに気づいた。視聴したのが1週間以上前なので、信繁が何を言っていたのかサッパリ忘れてしまった。堺雅人も今は人と人を繋ぐ役割と割り切っているらしい。物語はまだ始まったばかり、信繁の存在感はこれから増していくことだろう。