ホワイトバランスの設定で写真のイメージを変えてみよう

ホワイトバランスを絶妙に変えることで、写真から伝わってくるイメージも変わる。
ホワイトバランスを絶妙に変えることで、写真から伝わってくるイメージも変わる。

ブライダルをテーマにした写真を撮ったのは二度目だったと思う。一度目はラブライブ!のウェディング衣装のコスプレで、それ以来ブライダルフォトを撮る機会に恵まれなかった。以前からブライダル写真を撮りたいとは思っていたが、なかなか実現しなかった。

今回はジューンブライドがテーマの創作写真ということで、雨っぽい写真にして欲しいと言われた。なかなか難しい注文だった。幸せな花嫁だけれど雨。この花嫁はどういう心境なのかということを、撮影前にもう少しヒアリングしておけば良かったかも知れない。

しかしスタジオでもロケでも、一度場所が決まると撮れる写真は限られてくる。作品に合う考えられうる限りの小道具やその他の装置を使い切った場合、他に何か手立てがあるかと言えば、ホワイトバランスを変えることだ。

JPEG撮って出しではなく、RAWモードで撮ることの意義がここで発揮される。JPEG撮って出しが一部の初心者に信奉される理由は、肉眼で見たのと同じ色の自然な写真が撮れるからというセンチメンタリズムに囚われた考えがあるからだ。

実際にはカメラの心臓部である映像エンジンがJPEGとして保存する際に色味やノイズなどの処理を施しているので、カメラメーカーの映像エンジンによって色づけは異なるし、そもそもピクチャースタイルを変えれば、写真の色もガラッと変わる。

またオートホワイトバランスに設定してカメラ任せに撮ったとしても、いくら最新のデジカメのオートホワイトバランスが優れているとは言え、場所によっては人間の目で見たままの色に出ないこともある。

作品作りには、ホワイトバランスを事後的にでも自由に設定することで、イメージをガラッと変えることが出来るRAWモードでの撮影は必須なのだ。

それではさっそく、ホワイトバランスを変えてみよう。RAW現像にはキヤノンの純正現像ソフトDPPを使用している。現場でのカメラの設定と同じ感覚でRAW現像できるからだ。

下の写真は午後一時半の磨りガラス越しの夏の太陽の光を利用して撮影した。カメラの設定はオートホワイトバランスだ。やや温かみのある色となっている。

暖かい太陽の日射しに包まれているイメージ。
暖かい太陽の日射しに包まれているイメージ。

ホワイトバランス微調整を変えることで、自然な色合いに変えることが出来る。B-A(ブルー・アンバー) -4.5、M-G(マゼンタ・グリーン) 2.5とした。要は温かみを緩和するために、水色の中間色の方にホワイトバランスを持って行ったわけだ。

先ほどの写真よりも透明感がある。
先ほどの写真よりも透明感がある。
B-A(ブルー・アンバー) -4.5、M-G(マゼンタ・グリーン) 2.5
B-A(ブルー・アンバー) -4.5、M-G(マゼンタ・グリーン) 2.5

更にB-A(ブルー・アンバー) -9、M-G(マゼンタ・グリーン) 6に持って行くことで、透明感のある曇りの日の光を再現してみた。上げすぎると緑が濃くなりすぎ不自然になるので、調整時にはその辺りを注意する。

緑が仄かに強調された、梅雨時のジューンブライドの色。
緑が仄かに強調された、梅雨時のジューンブライドの色。
B-A(ブルー・アンバー) -9、M-G(マゼンタ・グリーン) 6
B-A(ブルー・アンバー) -9、M-G(マゼンタ・グリーン) 6

次に色温度を指定してみよう。ホワイトバランス微調整を元に戻して、3400Kまで下げ、窓の外は雨が降っている感じを演出。

窓の外には雨雲が垂れ込めているイメージで。
窓の外には雨雲が垂れ込めているイメージで。
色温度:3400K
色温度:3400K

ホワイトバランスを変えるだけで写真のイメージがガラッと変わることが伝わっただろうか。創作写真を撮る時は、RAWで撮ることを心がけよう。1枚の写真でも表現の幅が広がることだろう。