ポートレートやコスプレ撮影などで、モデルを前にした時に開放で撮るか絞って撮るか。この二つの選択は時と場合によりけりだろう。ピンショットなら開放で撮っても差し支えないが、ツーショットやスリーショットなら、どうしても絞らざるを得ない。
横一列に並んで貰えれば、開放で撮っても全員にピントが合うから差し支えないが、その際には、モデルの横に立ち、全員の顔、特に目の部分が前に出ていたり後ろに引っ込んでいたりしていないことを確認しなければならない。もし前後バラバラならモデルに立ち位置を指示する必要がある。
背景を暈かすかクッキリと撮るか。特にコスプレ撮影の場合は、スタジオのブースによっては背景をクッキリ写して欲しいという要望もある。イラストの再現写真を撮りたくて、ちょうどそのお目当てのイラストの背景が、スタジオのブースにある場合などがそうだ。
ゲームのイラストでは背景が開放で撮ったかのように暈けている場面は余り見かけない。同人誌のイラストで背景が暈けているのは何点か見たことがあるが、どうも写真のようで見ていて落ち着かない。京アニの「氷菓」は背景のボケ表現が上手かった。作品全体が美しい描写に溢れているせいもある。
アニメや漫画やゲームや同人誌一つ撮ってもこれだけ手法や印象に違いがあるので、一概にどれが良いかは断言できない。しかし今回はゲームのイラストの再現が欲しいということだったので、開放F1.4だけでなく、F4、最終的にF5.6まで絞って撮った。
モデル自身は非常にシャープで解像感の高い写り。そして背景は輪郭がぼやけない程度に程よく暈けていて、あからさまに主張していないのが良い。背景が主張しすぎるとメインの被写体が霞んでしまう。
絞って撮る。開放で撮りたい欲望を抑え、ストイックにトルクを回す。これこそがカメラの醍醐味であるかもしれない。