カメラ初心者が最低限覚えておくと上手く撮れるようになる4つのこと

レタッチいらずの肌に撮る為の秘訣は?
中級者/上級者には当たり前のことでも、初心者にとっては難しい

先日2人の方から貴重なお話を耳にする機会を得た。大抵こういう話は意図したわけでもなく、話の流れで偶然耳に入れたりして天啓を得るものだが、話を聞いていて、筆者が初めて一眼レフデジカメを手にして風景を撮り始めていたときに疑問に思ったことや、煩わしいと思ったこと、撮り方に関する誤謬などを思い出すことが出来たのだった。

どのような習い事も上達するには一歩一歩経験を積み重ねるしかない。例えるなら 60階建ての高層ビルの頂上に向かうのに、いきなり足を大きく伸ばして1階から60階に到達することは出来ない。階段を一歩一歩着実に上っていけば、いずれ60階の頂上に着く。継続は力なり。頂上に到達する頃には知らず知らずのうちに技能が身についていて、見晴らしが良くなり、見えなかった景色が見えるようになる。

エレベーターを使えばすぐじゃないかと思いついた方もおられるかも知れない。ではお尋ねするが、実際の習い事で、エレベーターを使ってビルの屋上にあっという間に上るように、僅か短期間の内に技能を習得することが出来るだろうか。もしそれができたなら、未経験の者でも1ヶ月でピアノやバイオリンを上手に弾けるようになるだろう。英語がペラペラに話せるようになり、難解な方の英字新聞を読めるようになるだろう。例え話を正しく理解するのにも読解力やその源となるコミュニケーション能力が必須だ。

先述したお二人からのお話を聞いて、写真撮影の中級者や上級者にとっては当たり前のことでも、初心者にとっては全く分からない事があるというのを知った。この2者の差はやはり撮ることに慣れてくると気づきにくいものだ。例えば筆者はよく写真をお渡しすると「綺麗に撮ってくれてありがとうございます」と丁寧にお礼を言われることが多い。綺麗に撮る事に慣れている中級者や上級者にとってはそれほど難しいことはないことだが、初心者にとってはそれは撮影技法や使用している機材の両面で難しいところがあるし、分からないことがあるという事でもある。

さてよくこのような褒められ方をTwitterで交わしていると、綺麗に撮るのは誰にでも出来るだとか、綺麗に撮るだけでは駄目だとか揚げ足を取る連中が湧いて出てくる。挙げ句の果てには綺麗以外にこの写真のどこが良いか幾つかの点で説明出来なければ駄目だなどとマイルールを持ち出してくる野暮なボンクラまで現れる始末。そのどれもが胡散臭い、薄っぺらい、嘘くさいの三拍子が揃った身内でしか通用しない意見ばかりだ。

この手の話から導き出される凡庸で誰にでも思いつく答えのひとつが自己ブランディングだろう。拠り所を持たない胡散臭いネットビジネス界隈でよく見かけるありがちな言葉で、一昔前にも自己ブランディングが流行したが、今はTwitter上にこの自己ブランディングで厚化粧してキャラ付けしたアカウントがわんさか湧いていて、しかしその多くが書店のレジ先に並んでいる表紙やタイトルは異なるが中身が金太郎飴みたいにどれも似たり寄ったりで幾度も再生産されている自己啓発本や、清新で綺麗なイメージを膨らませた表紙で人を魅了するが中身は薄いエッセイのような、金儲け主義に堕したこれらの本のイメージと重なる。Twitterでしょっちゅうバズっているツイートにしてもnoteでよく見かけるエッセイにしても、タルトのように甘く耳に心地よい言葉だけで錬成されたエッセイのようで、そこに書かれていることが真実であるか否かは、ただ耳障りが良くて心地よくなりたい本人達からすればどうでも良いのだ。

ではブランディングの1つとも言える見せ方はどうか。見せ方は悩むところではあるが、SNS時代の見せ方の1つとしては、写真とは直接関係の無い部分が陰で行われている。フォロワーを金で買い、フォロワー数を多く盛ることで人々の目を騙すという方法だ。カメラマンでこれをやっている有名所はすぐに暴かれたが、多かれ少なかれTwitterのフォロワーを金で買って、フォロワー欄が変なネットビジネスのアカウントで汚されていたりするのも目の当たりにしたりする。フォロワーを金で買って数字を盛り、人気があるように見せかけて騙す行為はこれも今に始まったことではなく、古のインターネット時代にも、ホームページのアクセスカウンターの数字を弄ってあたかも人気サイトのように装っているところがあった。

ブランディングと聞くとビジネスのイメージが湧くが、果たして写真表現はビジネスと相性が良いのか、作り物のキャラクターや中身で構築されバズっている写真にどれほどの価値があるのかはひとまず置くとして、綺麗な写真は誰でも撮れるのかという問題を少し突き詰めていきたい。

「こんな写真は誰にでも撮れる」

このセリフの中には、綺麗な写真は誰にでも撮れるという意味合いもあれば、フォトジェニックなロケ地で撮った写真を見て、「こんなのここに行けば誰にでも撮れる」という意味合いもあるが、根は同じだ。

では実際、壮大な絶景が広がっているフォトジェニックなロケ地に行けば同じ写真が撮れるのか。恐らく撮れるだろう。仲良しカメラマンが2人で同じフォトジェニックなロケ地に行き、同じモデルを立たせてシャッターを切れば、同じ写真が撮れる。至極当たり前のことだ。

撮れないと言っている人がいればそれはよほどの自信家か、現実に対する分析能力が足りないかのどちらかだろう。

桜にしても梅にしても彼岸花にしても、同じ時期に同じ場所に行けば同じ写真が撮れる。全然違う写真が撮れていたらそれは怪奇現象だ。Photoshopでそこには生じることがない光芒でも加工すればそれも可能ではあるが。

同じ写真を撮ろうと思えば、まずロケ地を調べて、撮影許可が要るかどうかを調べ、いるなら許可を取り、モデルさんを見つけて、カメラ・レンズ・ライティング機材を用意して、必要なら小道具なども用意して(ただし山などの野外ロケの場合は自然の生態系を乱すので植物は持ち込めない)、前日までに体調を整え、電車もしくは自動車でロケ地へと向かうという煩わしいが当たり前の行動を取らなければならない。

綺麗な写真を撮るのも同じ事だ。綺麗な写真を撮るためには、カメラ・レンズ・ライティング機材を用意して、モデルさんを見つけ、ロケ地やスタジオを見つけて手配する必要がある。コスプレ写真の場合はこれらの手配はレイヤーさんが執り行うことが多いが。コスプレイヤーの方もウィッグや衣装を用意する、また当日までに肌の調子を整え、メイクをしっかりとする。この一連の行動を既に経験した上でなら、その場所に行けば、花の開花状況や気候条件が揃えば、同じような写真は誰でも撮れるだろう。

それでも撮れないというのなら、それはやはり本人が撮れるほどの技量にまだ達していないという事ではないだろうか。例えば筆者のブログ記事の冒頭に載せている作例を見て、同じスタジオの同じブースで同じ構図、同じライティングで撮っても、顔が白飛びするほど雑なライティングの写真になってしまっているようなものだ。都心にあり、電車と徒歩で行けて、スタジオ代も4,000円前後と、そう難易度の高い場所ではないのに同じように綺麗に撮れないのなら、そのように漏らしてしまうのもまた宜なるかな。

(作例という言い方を何度もしたが、あくまで作品を例にして撮り方を紹介するにあたり「作例」という言い方をしているだけで、先述した連中が勘違いしたように、解説のためにただ綺麗に撮っただけという意味の作例ではない。その程度の言葉の知識は辞書で調べればお分かり頂けるだろう。)

もう少しシンプルにいえば、フォトジェニックな撮影スポット、手の込んだ小道具仕立てが必要なければ、そこに行けば誰でも同じような写真が撮れる。アンブレラなりソフトボックスなり、それらは既に特殊な機材でもないし、ストロボ撮影も当たり前となってきた昨今では、それらの安価で軽い機材を持っていけば、誰でも似たような写真が撮れてしまう。自然光なら尚更楽に撮れることだろう。撮れないならそれはやはり撮影スキルの差だ。真実はいつもシンプルだ。

他人を真似る、他人よりも映える写真を撮ろうとして真似た上で更に工夫を重ねる。そのようにして他人を出し抜くことを目的にして血眼になっていると、それこそその写真に良いところはあるのか、ただマウントを取るという人間性の醜い部分が写真に顕れるだけで他に良いところは何も残らないのではないかとすら思えてくる。

そもそも真似られた側の作品には、撮影者やモデルが込めた想いなり好きという気持ちなりがあったはずだが、真似た作品を出し抜こう、マウントを取ってやろうという薄汚い魂胆で写真や動画を撮ることに血眼になれば、そもそも元の作品の内奥を見るという事すらせず、その写真に込められた想いを汲み取ることも怠るのなら、鑑識眼も養われはしないだろう。そのような不真面目な鑑賞者に他人の写真から何かを汲み取ることが出来るのだろうか。他人の写真を批評する資格があるだろうか。そもそも他人よりも映える写真を撮ることばかりに血眼になり、見せ方ばかりに気を奪われて、目の前にいるモデルのことなど見てもいないのではないか。

「綺麗な写真」と呼ばれる写真の奥に込められた想いや意図、そこを読み取ろうともせずに、狭量な価値観に自らを堕するのは、古い神話にあるように自らの両目を突き刺し盲目にするようなものだ。諸刃の刃とはよく言ったもの。

前置きが長くなった。初心者に取っては分からないことでも、中・上級者にとっては慣れていて当たり前。しかし他の人の話を耳にすることで、自分にとって当たり前のことが、他人にとっては当たり前でないことに気づく。

写真の上達に近道はあるか。どのような習い事にも近道はないが、少なくともスピードを速めることくらいは出来るだろう。筆者自身が初心者の時にこれだけのことを抑えておけば、一期一会の撮影機会が訪れたときなどにもっとうまく撮る事が出来たのではないかと思うこともしばしばだ。

今回は教科書的な小難しくて実施の撮影ではあまり役に立たない知識ではなく、実践的に役に立つこと、初心者がすぐにでもステップアップ出来る様な知識を最小限に絞って、ただしどのようなジャンルの撮影でも役に立つことを紹介していく。

お話を伺ったお一人の方は、スマートフォンで写真を撮っている方だった。写真を見せて頂いたが、これがセンス溢れる写真で、スマホでも一眼カメラと同じように撮れると思ったものだ。筆者もこの構図で撮っておけば良かったと後悔したが、この話はまた項を改めて詳しく書く。

その方が言うには、一眼カメラは設定がたくさんありすぎてややこしいから、スマホが良いという事だった。かといってスマホのオートモードで撮っているわけではなく、マニュアルモード、一眼カメラと同じF値、シャッタースピード、ISO感度の3つを設定して撮っていた。これなら理論上、三脚を付け足せば星空も撮れるのではないかと思ったが、まさに天の川を撮っておられた。という事は理論上、バルブ撮影機能も追加されれば、花火の写真も一眼カメラと同じように撮れることになる。最近更にスマホ(Xperiaだっただろうか)の画質が上がったという。近い将来、一眼カメラは売れなくなるのでは無いかと思った瞬間だった。

また同時に、やはりMモードで撮るのが上達の近道だとも感じた。「初心者にいきなりマニュアルモードを教える奴は〜」などと馬鹿にしてるセンスゼロの写真撮ってる輩の戯言は傾聴に値しない。

F値、シャッタースピード、ISO感度については、別個記事に載せているのでそちらを参考にして頂いて、写真が上達するための最小限の知識の解説に移りたい。(全文:9,000字)

https://etoile-studio.com/photographing-technique/f-stop/

https://etoile-studio.com/lighting/relation-between-speed-light-and-shutter-speed/

https://etoile-studio.com/photographing-technique/iso/