開放F1.4やF2のような設定で写真を撮っていると、やはりピントが合っているかどうかがとても気になってくるわけである。フィルムカメラの時代なら多少ピントが合っていなくても確認する術もないしピントが合っているように見えたのだろう。デジタル全盛の時代でも、縮小表示すればピントが合っているように見えるが、等倍表示してみたら、微妙にピントが合っていなかったりすることがある。
ピントが合っていないとかガチピンじゃないってどういう基準ですか?と撮影現場でデータ確認していた折に、コスプレイヤーさんに聞かれたことあった。等倍表示して、ピントを合わせた目のカラコンの模様がクッキリ写っていたらガチピン、ややボヤッとしていたらピントが合っていないという風に答えた記憶がある。
等倍表示でややボヤッとしていても、半分の大きさに縮小して目がシャープに写っていれば及第点だろう。たとえば5000ピクセルの画像を2500ピクセルくらいに縮小して目がシャープなら実際の使用には問題ない。この場合の実際の使用とは、Twitterやブログを主としたインターネット上に掲載することだ。iMacのRetinaディスプレイにまで考慮に入れると、横幅1000ピクセルの画像表示を想定した場合、2000ピクセルあればシャープな画像で掲載される。
要は現場での撮影で開放F1.4やF2のような設定でもガチピンに撮れれば問題ないのだが、それはなかなか至難の業である。AFでも合焦いづらいのに、マニュアルフォーカスのみのレンズでガチピンで合わせようとするのは労力を要する。
最も簡単なのはライブビューモードに切り替えて撮影することだが、歩留まりは良くなるが、撮影に手間がかかるし、撮影後のプレビューからライブ画面への切り替えが遅くてテンポが悪くなるし、いつもと異なる持ち方をするのでカメラが重く感じられる。長く撮るのが難しい。
そこで独自に編み出した方法でピント合わせをするのだが、これもまた微調整が必要だったり、AFと同じで暗いとピントを外しやすかったり、なかなか思い通りに合わないことがある。
ならいっそファインダー越しに目をこらしてピントを合わせてみてはどうだろうとやってみた。視力は恐らく1.5か1はある。やってみたが合う時もあれば合わない時もある。55mmのOtusでもなんとかピントの山は掴めるものだなと思ったが、確実性を担保するなら、自ら編み出したピント合わせの方法が、撮りやすさと正確性のバランス面から見ると最も最適だ。これが相手のいない撮影なら、ファインダー越しのピント合わせで、失敗すれば何度も撮り直しが出来るし、じっくりとトルクを回してピントを合わせるスリリングな体験を味わえるが、相手がいる撮影なので、ポーズを撮っているモデルさんを待たせるわけにはいかない。いっそのことコスプレ撮影はAFレンズで撮ろうかなと思うこともしばしばある。やはりピント合わせでモデルさんを待たせてしまうことがあるからなのだが、開放F1.4で撮る時はOtusに並ぶレンズがないので、どうしてもマニュアルフォーカスのみのレンズを選択してしまう。一度その描写性の高さにとりつかれると元に戻れないのだ。
しかし最近はキヤノンも開放からの撮影でも収差を抑えた高性能レンズを送り出してきている。高性能だがやはり値段が高くなる。もともと50mmのような標準レンズは高くても15万円くらいが相場だったが、収差をなくすことを目的にすると、新マウントのRFレンズのように倍の30万円に跳ね上がる。
キヤノンの場合はデジタルレンズオプティマイザの機能もあるので、あとからRAW現像で(最新のキヤノンのカメラはカメラ内で)収差などの描写の欠点を修正することが出来るようになったから、果たしてマニュアルフォーカスのみのレンズにこだわる必要があるだろうかとも思うのだが、そのようなデジタル処理技術も、まだ完全に収差を取り除くには至っていないように思われる。
F1.4の設定でのピントあわせのしづらさに、コスプレイヤー側のポージングが原因である場合もある。ポーズをコロコロ変えると、顔を突き出して人差し指を唇に押し当てたりするポーズを撮ることもある。当然ピントが外れるから、ピント合わせし直さなければならない。ポーズの変更により顔の位置が前後したことに気づかないと、ピントが合っていないことにも気づかない。素早くピントを合わせる必要がある。あぁ難しや、難しや。