インテックス大阪で開催されたこみトレでコスプレ撮影をした際に、他のカメラマンが使っているライティング機材良いなと思ったのが、Round Flash Ringという製品で、早速注文した。ポイント還元なども考慮して選んだYahoo!ショッピングのコジマで11,660円だった。
そこそこするお値段だがProfotoのソフトボックスよりは断然安い。かといってNEEWERやGODOXと銘打たれた廉価なソフトボックスよりは高い。
果たして効果の程はどうかと、早速直近で入っていたコスプレ撮影で試してきた。まずは大満足。(2018/09/12 File.4756/File.4760)
作例は正面から撮影。1/80秒・F値5.6・ISO感度250。予想以上に効果的なライティングとなった。焦点距離は37mmと24mm。広角気味にモデルに思い切り寄って撮るとハプニング風の写真が撮れる。光の芯が強いのはモデルに思い切り近づいていて光源が近いからだろう。後から作例比較を出すが、これがソフトボックスとなるとやや離れ気味になるのでまんべんなく行き届いた柔らかい光となる。
製品の入っていたパッケージの持ち手のボール紙にRound Flash Ringで撮影した作例写真が載っていたのだが、どうも小型のディヒューザーで撮影したような質感の肌に仕上がっていたので、こういう写真しか撮れないならわざわざ使う必要はない、本当にソフトボックスやアンブレラのように綺麗な感じに撮れるだろうかと撮影前は一抹の不安を抱いていた。しかし実際に撮ってみると全く異なる美しい肌に撮れたので、杞憂に過ぎなかった。驚くほどの綺麗さだ。
通常正面から小型のディフューザーをつけて撮ると、ストロボを焚いて撮影した感が出てくる。ストロボを焚いて撮影した感というのは言葉でよりリアリティ豊かに説明しようとしたらどういうものになるだろうか。Round Flash Ringで真正面から撮影した写真もストロボを光らせた感は当然するのだが、小型のディヒューザーと異なるのは、ストロボ光がモデルの顔をノッペリとした平らで貧相な質感にしてしまわない点だ。通常正面から裸の状態もしくは小型のディヒューザーでストロボを光らせると、光で無理やり肌のリアルな起伏を押し潰したようなノッペリとした、それでいて何かストロボの光が肌に反射してしまい鈍い輝きが帯びてしまっているような美しさが損なわれた描写になる。Round Flash Ringを使うと、真正面から撮影してもそのような質感にならずに綺麗に撮れるのは、やはり小型のディヒューザーと比べて大きいからだろうか。小型のアンブレラに近い大きさがある。また光の通る形状が周を描いている上に、中が銀色になっていて光を何度も反射させて和らげてくれるせいかもしれない。こればかりは科学者ではないので厳密なことは分からないが、原理が分からなくても綺麗に撮れる。
気になる製品の大きさと組み立て方
製品の写真を見て貰えれば分かるように、ストロボ光をディヒューズする部分がドーナツ型になっていて、真ん中に空いている穴にレンズを突っ込むことになる。購入前は簡単にレンズを装着できて簡単に撮れるかなと予想していたのだが、撮るのが結構面倒くさかった。
組立自体は簡単だ。レフ板のように小さく折りたたまれていて、専用の袋に入っている。組み立てると言っても、レフ板のように広げて、マグネットのつっかえ棒を1つずつ縦に直していくだけだ。組立は非常に楽。しかしレンズを穴に突っ込んで撮影するのが結構面倒。星形のゴムの間にレンズを通すのだが、失敗するとパチンと強くレンズを弾いてしまう。この当たり、慎重に装着しないとレンズが凹んだり故障するかも知れないから注意が必要。ゴムの力を侮ってはいけない。
穴にはまったら、カメラの上に取り付けているストロボを、ストロボ固定用のバンドの輪に通してから、ストロボ専用の穴に挿入する。バンドはマジックテープで固定できるようになっている。
撮影はやや不便
さて実際に撮影となるとこれが結構面倒くさくて、Round Flash Ringの穴にレンズがスッポリと収まっている状態でレンズを手で持てないから、いつもとは違い両手でカメラを抱えることになり慣れないスタイルでの撮影となる。要は腕が疲れる。この日はCanon 1DXとCanon EF24-70mm F4L IS USMだった。ズームレンズの焦点距離を変えようにもRound Flash Ringを少し押しださないとズームリングを回せないのが不便だ。マニュアルフォーカスのみのOtusも持ってきていて試してみたが、トルクがレンズの真ん中辺りにあるのでピント合わせのために穴の中に手を突っ込まなければならず、けっこう不便。どちらにしてもRound Flash Ringを使って撮影する場合は35mm以下の広角で撮った方がいい絵になるので、Otusは除外して、Canonのズームレンズで撮っていった。
一度焦点距離を決めて固定して撮るという方法もありズームリングに触れる必要がないから、実際的には厳しい。前へ移動したり後ろへ移動したりして撮りたくもなるからどうしても焦点距離を変えたくなる。
37mmで撮った写真は、Round Flash Ringの黒い布地が写り込んでいた。テレ端の方に焦点距離を変えないと、広角気味だと写り込みやすくなる。24mmで撮影した写真は余り写り込んでいなかったので、工夫次第では写りこみは防げそうだが、Round Flash Ringでは広角気味でモデルに思い切り近づいて撮った方が絵になるから、なんとかしたいところだ。トリミングでRound Flash Ringの写り込みを切ってしまうか、Photoshopの各種スタンプツールで消してしまうか、どちらかの方法を取る必要がある。最近のPhotoshopのスタンプツールは優秀なので、複雑な背景でもなんとかなりそうだ。またRound Flash Ringはピンクやブルーなど何色でも良いのだが背景一色のシチュエーションで背景を暗めに落として撮ると絵になるので、黒の布地の映り込みは後処理で修正しやすいから、そこまで気にする必要はないのかも知れない。敷かしそうでない撮影のシチュエーションもあるだろうから、気になる点としてあげておく。
Round Flash Ringの効果的な使い方
作例はピンクの壁を背景にして撮影したが、背景を暗く落とし込んだ方が、直近距離からRound Flash Ringを使ってストロボ光を当てたモデルの明るさとのコントラストが強くなって、非常にスキャンダラスな絵が撮れる。本当に綺麗に写っている。ソフトボックスでも同じ感じで撮れるのだろうが、ソフトボックスは大きいので真正面において撮るのがセッティング上難しい。要はカメラマンを真ん中においてその周囲をソフトボックスで埋め尽くせば良いのだろうが、数もさることながらライトスタンドの設置も大変だ。Round Flash Ringを使えば大がかりなライティングを組まなくても、真正面からストロボを当てた美しい写真が簡単に実現できる。
20年くらい前に藤原紀香と稲森いずみが主演のフジテレビの月9のドラマ『ハッピーマニア』があったが、あのドラマのエンディングで稲森いずみが踊っているシーンのライティングと似通っているように感じた。あのドラマでは二人の顔がクローズアップされた際に目にハートマークのキャッチライトが入っていたりして面白かった。いやハートマークのキャッチライトが入るのは、『お水の花道』だったか。まぁどちらにしてもそんな感じの写真が撮れるとイメージして頂ければ。分かる人には分かるだろう。ちなみにキャッチライトはドーナツ型なので二重丸。これもいつもソフトボックスやアンブレラで撮る時とはひと味違うキャッチライトが入るので、女の子達のウケも良かった。思い切り近づけばとても大きなキャッチライトが入り、少し離れればやや大きめのキャッチライトが入る。
ソフトボックスとの違い
ソフトボックスとの光の質感の違いを見ていこう。まずはRound Flash Ringを使ったスリーショットの写真。正面から光が来ているから被写体に影がない。ソフトボックスで撮影したものと比べると正面からストロボを光らせている感があるが、そのことが逆にスキャンダラスな効果を演出してくれる。撮影前にラインで水着でパリピなイメージで撮って欲しいとだけ言われたので、それならば真正面からストロボを光らせて撮れるRound Flash Ringがきっと役に立つだろうと踏んでいたが、予想通りの効果を出すことが出来た。
カメラの設定はF7.1・ISO感度800・シャッタースピード1/100秒。作例の写真は足下まで明るく写っているが、Round Flash Ringはそんなに大きくないので直立しているモデルを脚立に登って縦構図で撮ると、どうしても足下が暗くなりがちだ。気になるのはその点くらいだろうか。後は中望遠の焦点距離で離れて撮ると、F値が大きい場合にはどうしてもストロボ光が足りなくなる。
ソフトボックスとアンレラの3灯で撮影した写真は次のようになった。こちらのカメラの設定はF7.1・ISO感度400・シャッタースピード1/100秒。。後処理で目分量で+0.2程、レイヤーさんが明るくしている。
肌の色の違いに関しては、Round Flash Ringとprofotoソフトボックスの紗幕の色の影響かと思われる。Round Flash Ringで撮るとホワイトバランス(ホワイト優先)で撮影したような白重視の写真になるが、profotoソフトボックスで撮るとやや暖色気味の肌になる。おそらく紗幕の色の違いが出たのだろう。
自動調光E-TTL Ⅱで撮るべきかそれともマニュアルか
ストロボと被写体の距離が、撮影者が動くことによってコロコロと変わるので、当然マニュアル設定でストロボの光量が固定されている状態だと明るさも変わってくる。なので自動調光モードで撮ってみたのだが、こちらの方が極端に光量が暗くなったりしたので、いつもの慣れているマニュアルモードに戻した。自動調光E-TTL Ⅱは余り使ったことがない。結婚式の撮影のようにストロボをカメラの上に取り付けて撮影する際には、被写体との距離がコロコロと変わるから、自動調光E-TTL Ⅱの設定にして撮るとどこかで聞きかじったか見囓ったことがあるが、実際に使ってみると光の明るさに結構ばらつきが出てしまった。そこから更に調光補正(露出補正のストロボ版)をするとなるとかなり面倒だ。またマニュアルモードでも+3、-3のような補正方式の場合は、光量が足りなかったので、いつも使い慣れている1/1から1/128の光量調整の方式で撮影していった。結局一番慣れているストロボ調光方法が一番楽だし、ストロボ光量&カメラの設定の変更も素早く出来る。
撮った写真が想定よりも明るかったり暗かったりすれば、RAW現像時に明るさ調整で何とでもなる。結構明るく撮った写真もRAW現像で暗くすることで階調を損なわずに明るさを整えることが出来た。ただし後処理を前提とする場合はRAWモードで撮影することは必須だ。それが出来ないなら現場で厳密に明るさを決める必要がある。
スリーショットもイケる!
ツーショット、スリーショットと間近から撮ったが、三人共に光が行き届いていた。問題は離れて撮る場合だ。撮影者が離れればカメラの上に乗っかっているストロボも離れる。→ ストロボと被写体の距離が離れる。→ 被写体に届く光量が弱くなる。→ 暗い写真になる。ここからはソフトボックスとアンブレラの出番だ。Round Flash Ringを取り外してカメラの上のストロボをトランスミッターに付け替え、ソフトボックスとアンブレラの3灯でモデル達を撮影していく。
モデル達からやや離れたところにソフトボックスやアンブレラをおいているから、全体に光が均等に行き渡っている。間近で撮った時のような光の強い芯のような質感は感じられないが、自然な光で綺麗に写っている。三人ともコスプレ用のウィッグなので、地毛の黒髪で撮った場合にどのようなリアリティ溢れる質感で撮れるのかが気になるところだ。
ソフトボックスやアンブレラでも思い切りモデルに近づけて撮れば、Round Flash Ringを使って撮影したような写真は撮れるのだろうが、先ほども述べたようにセッティングが難しいし、機材が嵩張る。Round Flash Ringはレフ板よりも小さくて荷物にならないコンパクトな製品で手軽さもさることながら、簡単にストロボを使った印象深い写真を撮る事が出来る点でも優れている。撮影時はズームリングやカメラのホールドなどやや扱いづらい所があるし、撮影者と被写体の距離によって明るさも変わるのでの、たくさん撮るならアンブレラやソフトボックスを使った方が楽だが、コスプレイヤーのウケも良くまたこれで撮って欲しいと言われたので、常備する事にした。というわけでソフトボックスやアンブレラの表現にちょっと飽きてきて、アクセントをつけた写真を撮りたい場合は超オススメ。