コスプレ撮影をしていると関西のいろんなフォトスタジオに足を運ぶことになる。多いのが昭和40年代くらいに建てられたであろう古い雑居ビルやマンションの一室をスタジオに改装したところだ。
ストロボ撮影をしていると気づかないが、このようなスタジオの場合は、天井の明かりが撮影用のものではなく、一般の蛍光灯の場合がある。この蛍光灯がどういうときに問題になるかというと、例えばストロボを使いながらもF1.4の開放F値で撮るときだ。白系のスタジオで背景は明るいままで撮りたいときには、ストロボの光が背景を明るくしていた分だけISO感度も上げなければならないから、ストロボの光量を最小限にしたり、被写体から離したりして撮らないと、写真が真っ白になってしまう。
しかしストロボ光が弱まると、今度は天井の蛍光灯などの環境光が威勢を増す。古い蛍光灯などは演色性が良くない上に経年劣化により色もバラバラであることもあり、更にはフリッカー現象の影響にも晒される。
蛍光灯は、関東の場合は1秒間に100回、関西の場合は1秒間に120回点滅している。関東と関西でなぜ違うのかというと、電源周波数が静岡県の富士川と新潟県の大井川あたりを境(糸魚川静岡構造線)に、東日本は50Hz、西日本は60Hzとなっているからだ。
写真撮影で何が問題になってくるかというと、1/100秒よりも速いシャッタースピード(西日本は1/120秒より速いシャッタースピード)で撮影すると、蛍光灯が点滅している合間、点灯している時と点灯していない合間を捉える場合がある。だから写真によって明るさや色にばらつきが出てしまう。これをフリッカー現象という。
だから理論上、このばらつきを回避するためには、1/100秒(西日本は1/120秒)よりも遅いシャッタースピード、例えば1/80秒とか1/60秒といったシャッタースピードで撮ると、この現象は回避される。
だが蛍光灯によっては経年劣化で点滅の速度が遅くなっている場合も考えられ、フリッカー現象による写真の明るさのばらつきを避けるための理論上のシャッタースピードで撮っても、明るさにばらつきが出てしまうこともある。
明るさにばらつきが出ると、後から色温度などを調整して肌の色を整えるのも大変な作業となる。また古い蛍光灯の場合は演色性の悪さの問題もあるので、いくら後から色温度で調整しても綺麗で理想的な肌色が出ない。
解決策としては、蛍光灯の明かりを消してしまえば良い。問題は暗くなりAFでピントが合わせづらい点だが、回避方法の一つとしては、いくつかの蛍光灯のスイッチがあるなら、撮影場所の天井の部分だけ蛍光灯を消して、他はつけてその漏れた明かりでAFを合わせる。しかしこれだと完全に蛍光灯の影響を除外することにはならない点には留意しておきたい。
ストロボ光が強いときにはこの問題は表面化してこない。人物の顔を明るく綺麗に撮るために強いストロボを当てるということは、F値を大きくしてストロボ光がなければかなり暗めに撮れるようなカメラの設定にしているということだ。環境光は暗めのカメラの設定の場合はそのまま暗く写るから、演色性の影響が表面化しない。しかし背景をぼかすなどの手法で、F値を小さくすると、その分だけ全体が明るくなるのでストロボ光を弱めなければならない。そういった場合に環境光が明るくなり、ストロボ光よりも環境光の方が被写体への影響が強くなるので、以上のような問題が表出する。綺麗に撮るために気をつけておきたい点だ。
しかしまぁ、演色性に関してはそこまで気にはならないかもしれない。冒頭に上げた写真も、そんなに悪い色には見えない。むしろ綺麗な色で出ている。しかし実際にRAW現像の段階で色温度の設定をまとめて一括編集してみたら、一枚もしくは数枚ごとに色が交互に変わっていたし、肌色調整も難儀した。背景の壁の色再現も少し気になる。最後に撮り直そうかとも思ったのだが、皆さんもう満足した様子で写メ大会も始まったので、機材を片付けることにした。
理想的な肌色を追求するなら、環境光の演色性について頭の片隅に覚えておいても損はないだろう。今回訪れたスタジオの蛍光灯の演色性については機種を検索してみても出てこなかったので詳しくは分からなかったのだが、パナソニックの蛍光灯を調べてみたら、やはり演色性に優れていることを謳った蛍光灯(パナソニック 演色AAA昼白色リアルクス FL40SNEDL)も発売されている。
明るいカメラの設定で撮ってなんか色がおかしいな、写真ごとに色にばらつきが出るなと気になったら、蛍光灯を消して撮るのが手っ取り早い解決策だ。最近のカメラにはフリッカー対策の機能がついた製品もあるので、オンにするのもいいが、ポートレート撮影の場合は演色性のことを考えると蛍光灯を消してストロボ撮影、もしくは窓からの自然光のみで撮影するのが綺麗な写真を撮るためには確実な方法だ。