Canon EF135mm F2L USMが早速届いたので撮りに行ってきた。購入動機や購入ショップ、価格については前項で記したとおり。今回は作例を交えつつ第一印象や描写力などの実感を書き綴っていきたい。
お取り寄せ状態になっていたので届くまでに時間がかかるかと思ったが、翌日には入荷して、注文日から4日目に届いた。
届いたレンズを物撮り!
さっそくレンズ本体の物撮りを。いつも面倒くさい幟時間が無いので止めておこうかと思うのだが、化粧箱から出したばかりのレンズを写真に収めておきたいという欲もあり、アンブレラを広げてストロボを使い撮影した。
拡大表示で描写力を探る
レンズを撮ったら今度はCanon 5DsRにレンズを装着して、とりあえずダイニングにある物を撮ってみる。描写力を確認するためにトリミング。
花びらと瓶の文字の作例。これだけシャープに写っている。5,060万画素、画像サイズは8688x5792ピクセルとなるが、果たしてiMac5k Retinaディスプレイで見たときに、レンズが持つ解像力について目視で判別できるものだろうか。
Canon EF135mm F2L USMは発売日が1996年4月とあるから、2019年11月の時点で23年前のレンズとなる。古いレンズが5,060万画素の実力を引き出せるかどうかだが、結局の所、5k Retinaディスプレイで見る限りでは判別が着かない。言えることは当該ディスプレイで写真を等倍鑑賞してみると、細かい所まで綺麗に写っている。他の高性能ディスプレイだとどう写っているのだろうかという点が気になる。たとえば以前使っていた国産WindowsパソコンのフルHDディスプレイ表示(1920ピクセル×1080ピクセル)では、当初は綺麗に見えたものだが、iMacに買い換えて5K Retinaディスプレイを知ってからは、WindowsパソコンのフルHDで見る写真が粗が多くギザギザのような、ゲーム機で例えるなら、スーパーファミコンとPS2のような違いの差があり衝撃を受けたのだった。Retinaディスプレイに1度触れるとフルHDディスプレイには戻れない。
夜景撮影作例
一通り撮り終わったので、どこか撮りに行こうかと以前から計画していた摩耶山の掬星台へと向かった。家から電車とバスとロープウェイを乗り継いで大体1時間20分ほどかかったので、掬星台の展望台に到着したのは午後4時43分頃となった。
とりあえずその日はレンズを7本持っていっていろんなレンズで掬星台から見える夜景を撮りたかった。200mm、400mm、85mm、55mm、24−70mmF2.8、11−24mm、そして今回購入した135mm。
さて、とりあえず日はまだ明るかったので、神戸のビル群を撮ってみたのだが、液晶表示で確認するとどうも描写が甘い。あぁこれはやはり20年以上前に設計された古いレンズだから5DsRの超高画素には対応していないのだろうかと思ったのだが、何のことはない、ピントが緩かっただけだった。AFでピントを合わせていたが、どうしてもピントが合わないからマニュアルフォーカスに切り替えてライブビューで撮影した。するとどうだろう、先ほどと異なり細かい描写を要するビルがシャープに写っているではないか。すっかり有頂天になって135mmで撮り続けたのだった。
※以下にあげる作例は、閲覧ユーザーの負担を軽減するため、ファイルサイズを圧縮させて、Canon DPPで画質を10段階中最低の1に落としている(Photoshopでは画質60%相当)。2048ピクセルのJPEG画像をウェブブラウザ上で1024ピクセルで表示させることで、精彩且つ画質の劣化が目立たないようにしている点をご考慮頂きたい。つまりあなたが以下の画像をダウンロードしてご自身のパソコンで表示させると結構粗い。スマホで見る場合は荒さは目立たないだろう。
シグマのArt135mmを差し置いてCanon EF135mm F2L USMを選んだ理由
Canon EF135mm F2L USMで神戸の夜景を撮影していてふと浮かんだのがOtus1.4/55の存在だ。40万円するレンズだが、このレンズの性能を引き出せる一眼カメラはないのではないかと言われたことがある。5DsRは5,060万画素と一眼カメラの中で購入当時最高峰の画素数を誇っていたが、現今の一眼カメラではOtusの実力を引き出せないと言われる一方で、古い設計のレンズは最新の超高画素カメラの性能に追いつかないとそこかしこで言われていた。このような理由から、5DsRだからそのポテンシャルを引き出せると巷で言われているシグマの最新レンズ135mm Artにしようか迷ったのだが、やはり純正の方が良いのではないかというこだわりと、シグマのレンズよりも2,3万円安いというコスパの面の他に、シグマのレンズが大きくて重いという評判から追加で持っていくレンズになるならば小さくて軽いという気持ちが強かった点、キヤノンとシグマ両方のレンズを試し撮りしたユーザーが、描写の違いが良く分からなかったからキヤノンを選んだとレビューしていた点等を考慮して、キヤノンのレンズを買うことにした。
シグマが開放F1.8、キヤノンが開放F2ということで、その差の明るさは1/3段と僅か。ボケ具合はどうだろうか。写真家のイルコ氏がYouTubeでレビューしていたのでそちらの方を参照頂きたい。
今回このOtus1.4/55で撮影してみた。そしてCanon EF135mm F2L USMとの描写の違いを確認しようとしてみると、やはり遜色ないように思われる。つまり23年前に設計された古いレンズが5DsRのようなカメラに装着して描写が甘くなりはしないだろうかと心配していたのだが、iMac 5K Rethinaディスプレイを通して目で見る限りでは問題ないように思われた。
Otus1.4/55の作例は以下になる。
以前Canon 5DsRの特設サイトに、当該カメラの性能を引き出せるお薦めレンズ一覧が表示されていたのだが、リンクがどこにも見当たらなくなり参照出来ない。そのページがあれば5DsRの性能を最大限に引き出せるレンズを知ることが出来るのだが、結局のところレンズ開発者でもカメラ開発者でもない筆者には判別が着かない。例のあのグラフを見れば気休め程度にはなるのだろう。
そもそも55mmと135mmで同じ大きさに撮れたビルの描写を比較するにしても、遠近の違いがあるから空気の層なども描写に影響を与えるであろうし、正確な比較にはならないが、夜景に関しては、大きく引き寄せて写せる分だけ細かい所も描写できていて綺麗に見える。こうして比較してみると遜色ないのだから、Canon 135mm F2L USMは古い設計であってもとりあえず問題は無いだろう。
一つ言えることはOtusは開放F値1.4の描写で収差がほとんど確認されない点だ。輝度差がよっぽど激しい場合はその縁に僅かに色が乗るが、その他では色収差が確認できない。これがキヤノンEFレンズの50mm、85mmのF1.2での撮影だと収差が目立つし描写があまりシャープでない。その違いにマニュアルフォーカスレンズという不便さを差し置いてもOtusを使う意義がある。Otusを使って風景写真を撮る場合はF8まで絞る。これ以上絞ると回折現象の影響が徐々に現れてくるように感じるがその検証はまた別の機会に譲る。
そしてまたカメラの話になるが、超高画素カメラの利点としては、都会の夜景のような密集したビル群を細かく描写できるということがあるが、これもまた1DXとの比較を要する。超高画素はそれほど意味があることなのだろうか。しかし実際四日市市の工場夜景をiMac 5K Retinaディスプレイの壁紙にしたり、SONYの4Kテレビで閲覧してみるとその精細さに驚かされる。iMac5K Retinaディスプレイに画面いっぱいに1枚の写真を表示させる際に必要な横5120ピクセルというと、Canon 1DXの画像サイズとほぼ同等だから、1DXで撮影した写真をiMacで壁紙として使用すると、ちょうど良いサイズになる。このサイズよりも小さいとボンヤリとしてしまう。画素数がオーバースペックで余裕がある方が、Retinaディスプレイで表示させた場合でもより精細な写真に仕上がっているように感じられる。今後更にRetinaディスプレイの解像度が増した際には1DXで撮った写真でも壁紙にしようとしたら解像度が足りないという事態が生じかねない。
掬星台の名の由来と俯瞰した夜景における135mmの画角の有効性
掬星台という場所は「星を手で掬えそうなほど夜空が近い」という意味や、「星を手で掬えそうなほどの夜景が遠くまで広がっている」という意味があるらしい。ロープウェイに乗っていると女性の声で再生されたアナウンスが流れてくる。どちらの説を採っていたか失念したが、どちらにしても現代の都会は光害で星空は見えないし、夜景も山を少し挟んで広がっているから手で掬えそうではないがロマンティックな地名ではある。そしてまるで異国の物語に出てくるアラブの財宝の宝石箱をひっくり返したかのような煌びやかな夜景が緩やかな弧を描く地表に連綿と横たわっている。
この夜景を総て収めようとCanon EF11-22mm F4L USMで撮っていたのだが、広くは撮れるが夜景の輝き自体が小さすぎる。かといって200mm等の望遠レンズを使って大きく写そうと思えば今度は夜景の全体が見えないというジレンマに陥る。ここは間を取って85mmや55mm、もしくは24−70mmの標準ズームレンズを使い程よい感じで頭と尻尾は犠牲にして夜景を撮ることに力めたのだった。そういう意味では135mmもまた程よく夜景を切り取ってくれるし、山からの花火撮影にも200mmよりも広い画角は効果を発揮しそうだ。
それらの解説はまた新たに項を設ける事にして、135mmの作例に移りたい。
昼間の街中写真
夜景撮影はどうしても絞り値を絞らなければならない。F値を大きくする必要がある。やはり開放F値の描写も知りたいので、翌日病院に逆流性食道炎の薬を貰いに行くついでに景色を撮ってこようと出掛けていったら病院の方が臨時休業で診て貰えず、仕方が無いので買い物をしつつ街中で何か良い被写体はないかとぶらつくことにした。
F2で撮影。ピントは交通標識に背景は銀杏。
開放F2からもシャープで、F値を大きくすると解像感が豊かになる。鳩の写真など、これまでに見たことないほどにシャープで豊かな解像感だった。
ススキをサイド光で撮影してみた。光の乗った部分の縁に色収差だろうか、僅かな赤や緑の線が確認できる箇所があるが目立つほどではない。
同じ条件でOtusで撮影した場合に違いがあるかどうか気になる所だが、この日は軽い気持ちでレンズを試したかったので持ってきていなかった。
公園の滑り台。F9とF2で撮影。F9の方はクリアでシャープな画質だが、F2の方は滑り台の梯子の縁に赤い収差が出ている。
スーパーに寄った帰りに公園を通りかかると中学校のブラスバンドがチャリティコンサートを開いていた。ちょうど逆光になる位置で背景の木々も紅葉していたので撮影してみたら、これがとても良い。135mmのレンズの立ち位置から可能な圧縮効果が、指揮者と奏者達の一団を重層的に表現できた。写真掲載は控えさせて頂く。
以下街並みの作例を掲載。
丸ボケの描写とF値によるボケの形の違い
最後に丸ボケの違いを見ていく。撮影場所は掬星台、夜景を敢えてボカして撮影してみた。