お魚にはあまり興味がないので水族館に行くのが特段好きというわけでもないのだけれど、ウェブで検索して出てきた京都水族館の写真を見たらとてもフォトジェニックな場所だったので、試しに行ってみることにした。はじめは興味がなくても写真を撮りたいという思いが背中を後押しし、思いもかけず楽しかったりする。この日はクラゲの水槽や熱帯魚、ペンギン、イルカのショーなども見た。特にイルカショーは想像以上にエキサイティングで、宙を優雅に舞うイルカを撮るのは本当に楽しかった。何がきっかけで今まで興味のなかったことが好きになるか分からない。人生とはそういうものだ。
一度海遊館で撮った事があるのだけれど、残念なことにパソコン本体のハードディスクがクラッシュしてしまいバックアップも撮り損ねていたのでデータが残っていない。今回は2度目の水族館撮影。京都水族館を作例に、水族館で撮るのに最適なレンズや焦点距離、スキルなどを紹介していきたい。記事の最後にはスマホで撮影した写真も掲載している。スマホでの撮影方法が気になる方は記事の最後まで飛んで頂きたい。
水族館での撮影マナー
まずは基本的なことを2点。
- 場所を長時間占有しない。
- 三脚・一脚は使わない。
長い時間同じ場所に居続けるのも他の観光客に迷惑なので、パパッと撮ってしまう。もしくは頻繁に別の場所に移動したり後方で休んだりして、人が空いたら戻って撮る。
三脚・一脚を使わないのは言わずもがな。常識的に考えて、混雑する事が容易に想定できる場所で、三脚一脚など邪魔で使えるわけがない。
フラッシュは光らせないのが無難
フラッシュ撮影については、水族館ごとに対応が分かれるそうだ。京都水族館はフラッシュ禁止。水族館の規則に従おう。
フラッシュが魚の健康に害を与えるという説もあるが、定かではない。
ただ基本的にデジタル一眼カメラを使って水族館で撮る場合、フラッシュ(ストロボ)を光らせて撮っても、水槽に光が反射して綺麗に撮れないのではないか。人に向かって直接ストロボ光を当てた時と同じように、いかにもストロボを当てた感のする、平ベッタリとした写真になる可能性もある。実際に水族館でストロボを当てて撮ったことがないから断言は出来ないけれども。
ISO感度を調整したり、開放F値の小さい明るく撮れるレンズで対応するなど、光らせないことで綺麗に撮る方法があるので、後ほどその方法を詳しく解説していきたい。
撮りやすい場所と撮りにくい場所がある
まず京都水族館に入ると京の川と呼ばれる空間があり、小さなお魚や生きた化石と呼ばれるオオサンショウウオがいる。苔などがむす緑の空間。ここは写真を撮るよりも眺めていた方が癒やされる空間だ。というか先を急いでいたので京都水族館の名物の1つオオサンショウウオ撮り忘れた。若干混んでいて撮るのが面倒くさかったというのもある。
さて次に向かうと、パッと明るくなり、オットセイやアザラシと出逢える水槽がある。オットセイがもの凄いスピードでビュンビュン水槽の中を弾丸ロケットのように泳いでいく。結構クルクル動き回るので撮るのが難しい。ここも眺めていた方が楽しそう。円柱の水槽が独立してあり、トンネルをくぐってアザラシがお目見えしたりする。
最初はマニュアルフォーカスの標準レンズで撮っていたのだが、やはりピント合わせが難しいということでAF対応の24mm単焦点レンズに付け替えて撮影した。それでもオットセイの動きが速すぎてピント合わせが難しい。ピントが合いやすいようにF3.5まで絞ったが、そもそも構図が難しい。スマホで撮った方が楽なんじゃないかっていうくらいだ。
階段を上ると同じ水槽を上から見ることが出来る。岩場に登るときもあるそうだが、この日はビュンビュン泳いでいた。ここも岩場に出てこないとうまく撮るのが難しい。作例は焦点距離24mm。水槽を駆け泳いでいく最中に顔を出すオットセイのショットを狙ったが、岩場に出てくるようなら、もう少しアップ目で撮っても良いかもしれない。
京都水族館名物の京の海
さて次はいよいよフォトジェニックな写真が撮れる京の海。海遊館にも似たような空間があった。あちらは大きなジンベイザメが泳いでいたが、こちらは大きなエイがひらひらと泳いでいる。光を浴びた姿がとても神秘的。
ここで使用したレンズはCanon EF24mm F1.4L Ⅱ USMとCanon EF16-35mm F2.8L Ⅱ USM。やはり広角レンズでないと、水槽全体を収めることが出来ない。
はじめに断っておくが、以下に上げる京の海の写真はRAWモードで撮り、後からキヤノンのRAW現像ソフトDPPで、明るさを+2か+3上げている。やはり明るいレンズでとってもそこそこ暗い。
後ろに下がって撮るか、前の方に出て撮るかで、最適なレンズの焦点距離も異なってくる。後ろから撮ると、16mmで撮影した場合は水槽を余裕で収めることが出来るが、横の案内板まで写り込んでしまう。前の方に出て撮るなら16mmの焦点距離が良い仕事をする。
後ろから撮ると人も写り込むが、大体黒い影となるので、誰だか判別できなくなるから問題ないだろう。そうでなくとも皆水槽の方を向いているので顔が写ることもまずない。
人の写りこみを避けるなら、前の方に出るとよい。しかしそうなると水槽全体を収めるためには焦点距離の短い広角レンズで撮る必要が生じる。標準レンズでアップ目の写真を狙うのも良いが、せっかくの京都水族館メインの大水槽なので、全体像をダイナミックに写したい。
F値は1.4〜2.8。それぞれのレンズの開放F値で撮影したが、F1.4でピントが合わせにくいようなら、F2.8まで上げても良い。ISO感度の項目で詳しく解説するが、暗室のような場所とはいえ、光が注ぎ込んでいるので水槽は思っていたよりも明るい。
シャッタースピードは16mm〜24mm〜35mmの焦点距離で撮る場合は、1/50秒や1/60秒などのやや遅めのシャッタースピードでもブレない写真が撮れる。手ブレしない写真を撮るためのシャッタースピードのセオリー、1/焦点距離×2を常に念頭に入れつつ、現場の状況に応じて判断する。
ISO感度は、F値に応じて800〜1600。水槽に光が注ぎ込んでいるのでISO3600や6400まで思いっきり上げなくても撮れるが、やや暗めのなので、スキューバダイビングのような明るい澄んだ青い海のような写真が欲しいなら、3600まで上げるのもアリ。ただしRAW現像が出来る環境にある場合は、JPEGと併せてRAWモードでも撮影して、家に帰ってからパソコンで明るさを上げるのも良い。この方法を採れば、ISO感度800〜1600辺りで撮影したそんなにノイジーではない写真と、RAW現像で明るさを+3上げた澄んだ青の明るい写真の二通りを手に入れることが出来る。ということで、今回はノイズが気になるのでISO3600までは上げずにRAW現像で明るさを後処理した。DxO Photo Labのノイズ処理primeを使えば、高感度撮影でも他のRAW現像ソフトでは出来ないハイレベルなノイズ処理を行ってくれる。
やはりRAWモードで採るのは何かと便利。入場料も2000円するし遠くから来た人は頻繁に訪れることも出来ず、ある意味失敗が許されない撮影現場だろう。ただ京都水族館は年間パスも用意されていて、4000円で購入できるので、頻繁に行く人は年パスを購入しておくと良い。
RAW現像できる環境にない読者の方もおられるかと思われるので、JPEGモードのみの撮影、いわゆるJPEG撮って出しを前提にカメラの設定を解説していく。
ピクチャースタイルは、キヤノンの場合は風景モードにすると、青の発色がとても良くなった。色の濃さは+2に上げると更に青が映える。他のメーカーのカメラをお持ちの方は、ピクチャースタイルを色々試してみると良いだろう。
ピント合わせに関しては、ワンショットAF、測距点は一点中央。カメラの設定はマニュアル露出モード。F値、シャッタースピード、ISO感度の数値を自分で決める。大水槽に注ぎ込んでいるのは太陽光だろうか。だとすれば天候で明るさが変わる可能性があるので、もし変われば、ISO感度で調整する。
構図に関しては、縦でも横でもよい。縦構図で撮れば海の深さを表現でき、横構図に撮ればパノラマに拡がる大水槽を表現できる。ただし真っ直ぐに、水平、垂直に撮ること。
京の海で撮るときのカメラの基本的な設定
- マニュアル露出モード(M)
- ワンショットAF・測距点は一点中央
- 焦点距離16〜24mm
- ISO感度800〜1600
- F値1.4〜2.8
- シャッタースピード:1/40~1/60秒
- ピクチャースタイル:風景(Canon)
- ピクチャースタイルの色の濃さ:+2
ペンギンの撮り方
ペンギンコーナー。ペンギンは海遊館でも明るい所で展示されていた。人物を撮る時と同じカメラの設定で撮れるが、背景はぼかすべきかどうか。やはりペンギンを目立たせないなら、暈かして撮るのもアリだろう。F1.4やF1.8の設定で撮ってみた。使用レンズの焦点距離は55mm。引きだと85mmで撮りたい場面もあった。
ケープペンギンといって、南アフリカに生息しているそうだ。ペンギンと同じ目線で見ることが出来る造りになっている箇所もあれば、上から見下ろせる箇所もある。ペンギン目線で撮るとよりペンギンが際立つし、上から目線で撮ると小ささや可愛さが際立つ。こういうの見ていると南極で撮りたいなぁとか思ってしまう。
先へ進むと、通路から見下ろす形で、先ほどのフォトジェニックな大水槽、京の海が再び現れる。55mmで撮影。
クラゲの撮り方
クラゲのコーナー。照明が灯ったり消えたり。明るい水槽は開放F1.4で、ISO感度をそんなに上げなくても明るめに撮れた。
F2.0まで上げて撮ってみた。クラゲの模様が綺麗に写っている。
クラゲ大水槽。引きぎみに、観光客が途絶えた隙を狙って撮影。上下の壁が暗いので、映画館のスクリーンのように撮れた。
小さな生き物の撮り方
ウーパールーパー、別名アホロートル。思ってたよりも小さかった。多分同じ時期に大流行したエリマキトガケのCMとイメージを混同していたのだろう。これはトリミングで大きく見せる。F2.0でも前からの撮影なので、目以外は結構ボケる。
出ましたチンアナゴ。小さくて細いためピントが合わせにくいので、F2.0で撮影。
イルカショーの撮り方
本日のメインイベントのイルカショー。1日に数回やっていて、実演は大体20分ぐらい。想像していたよりも楽しくて時間があっという間だった。イルカが飛び跳ねたり、プールサイドの上に乗ったり、イルカに乗ったお兄さんがプール内を馳せていったりと見せ場がたくさん。
プール会場に着いたら、すでに大勢の観光客で席が埋め尽くされていた。今日はこんなに大勢館内にいたんだと気づく。
イルカを格好よく撮るには、やはり場所をどこにするかも重要だろうか。200mmの望遠レンズを持ってきていたので、最後尾で撮影した。55mmでは全景が入るが演者達がやや小さすぎる。かといって200mmではクローズアップしすぎて、飛び跳ねるイルカがフレームアウトしてしまいがちになる。
どこからイルカが飛び出てくるか予想がつきにくく、ショーもあっという間に終わってしまうので、なかなか難しい撮影になる。荒ぶるイルカたち。
カメラの設定はワンショットAF、測距エリアは中央一点スポットAFとした。親指AFでAFボタンを押し続けていれば自動的にピントが合うAIサーボAFでも撮影してみたが、AFエリア内全体がピントの対象となるゾーンAFで、ピントが合いにくかった。しかしとっさに出てくるイルカにピントを合わせるには、AIサーボ、ゾーンAFが楽だ。連写で撮影したら、何枚かはヒントが合っていた。筆者自身がAIサーボを使い慣れていないせいもあるだろう。
ピクチャースタイルは引き続き風景モード。キヤノンのカメラの場合は、青がより青くなる。またキャスト達が来ている服が子供が好むカラフルな色なので、こちらもヴィヴィッドになる。
暗い水族館でもスマホで撮れる!
最後にiPhone7Plusで撮影した写真を見ていこう。カメラの設定でフラッシュをオフにする。あとはいつもの要領でシャッターを押すだけで、自動的に撮れる。F値やシャッタースピード、ISO感度などカメラの細かな設定が出来ないことが逆説的に簡単に撮れてしまう要因となる。通常スマホのカメラは広めに撮れるので、風景写真を撮るのに適しているが、水族館で魚を撮るのにも最適だ。以下、無加工の作例を上げていく。
お魚やペンギン、イルカたちを間近で見られて、とても楽しい京都水族館。お魚の種類や水槽のコンセプトなどについて詳しく知りたい方は、京都水族館の公式ホームページでどうぞ。