多灯ストロボで撮影をしていると、冒頭のような写真が撮れた。写真の半分が真っ暗になっている。
撮ってデータを確認してビックリした。1DX、修理に出したばかりなのに、また故障したのかと焦った。
そういえば以前にも別の場所で多灯ストロボで撮影した時、同じような写真が撮れた事があったなと思い出した。もう2年も前の事だ。
あの時はストロボが保証期間内だったので、キヤノンのサービスセンターに点検に出してみたが、何の問題も生じていないという事で帰ってきた。
この黒い幕は何だろう。レンズの絞り羽根?カメラのシャッター幕?
レンズの絞り羽根ならこんな真っ直ぐな形で写り込むはずは無いと思いつつ、レンズに問題があるのではないかと訝り、85mmに変えて撮ってみた。ちなみに変える前のレンズと変えた後のレンズは、どちらもサードパーティ製のレンズだ。
85mmに変えてしばらく撮ってみたが、写真の半分が黒くなる現象は再現されなかった。
なのでレンズに問題があるのではないかと始めはそう考えた。確か前にこの現象が出た時もこのレンズを使って撮っていたときだ。1度強くぶつけてしまった事があり、ネジが緩んで鏡筒の上半分がハズレかけている。小さなネジも一個外れて出てきてしまったから修理に出そうかと悩んでいたところなのだ。
嫌な予感を胸に秘めながら撮影を続行。撮影していく内に1つ思い当たる節があった。ひょっとして、ストロボ使いすぎじゃない?
この日は朝からバシャバシャ多灯ストロボで撮っていたので、そろそろストロボの電池が切れる頃だ。連続して光らせていたら、メインのストロボが光らない事が何度かあった。そこでメインのストロボの電池を替えてみた。そして先ほど問題の写真が撮れた際に使っていたレンズに再び付け替えて撮影を続行した。
そうしたら写真の半分が暗くなる現象は、その日は一度も発生しなくなった。
原因の考察
考えられる原因は何だろう。85mmの方に付け替えると、写真が半分暗くなる問題は発生しなかった。つまり問題の発生した際のレンズとカメラとストロボの相関関係で何らかの問題が発生するのだろうか。ストロボの電池が充分あるときは発生せず、ストロボのどれか1灯が電池が切れそうなときに、シャッター幕とストロボ光の光るタイミングのズレの問題が生じるのだろうか。もしくは焦点距離(この場合は中望遠と標準)の問題だろうか。
或いは使用しているストロボの方に問題があるのかも知れない。一度コンクリートの地面に強く落とした事があり、振ると中で何かの小さな部品がカラカラと鳴る。
問題の写真の露光量を3段めいいっぱい上げてみたが、被写体はうっすらとは写っているがほとんど確認できない。薄手の黒い幕を通してみたような描写だ。
黒い影の正体はシャッター幕?
縦構図の写真では左右のどちらか半分が暗くなり、横構図の写真では上半分が暗くなった。という事は、黒の影の正体はシャッター幕である可能性が強い。
シャッター幕は、前幕シャッターと後幕シャッターの二枚で構成されている。シャッター幕とストロボの関係を動画で解説しているキヤノンのサイトをご覧頂ければ理解しやすい。
キヤノンのサイトを元に、ストロボで撮影する際のシャッター幕とストロボのメカニズムを簡単に説明するとこうだ。前幕シャッターが降りきった全開の所でストロボが閃光発光し、後幕シャッターが降りてきて全閉となる。
件の写真のシャッタースピードは1/125秒だから、低速時のシャッター幕とストロボの動きとなる。ハイスピードシンクロ時なら、キヤノンのサイトにあるように左右を黒い影に挟まれた細い帯状の写真が撮れていたはずだ。
横構図では上下どちらか半分が、縦構図では左右どちらか半分が真っ黒に写るので、キヤノンのサイトにある動画からも、シャッター幕の前幕シャッターもしくは後幕シャッターが黒い影の正体である事はほぼ確定といって良いだろう。
では何故このような現象が起こるのか。やはりストロボを強く落としてしまった事による不調か。それともバッテリーが残り少なくなったので、ストロボとカメラとの連携を促す為の電圧が足りなかったのか。思えば物凄く速いタイミングでストロボ光をシャッター幕の全開時に同調させて発光させているわけだから、バッテリー不足が原因のように思われる。電池を替えたらシャッター幕が写り込む現象は一切発生しなくなった事からも、バッテリーの減少で有る事はほぼ間違いないだろう。
ストロボ撮影で黒い影が映り込む写真が撮れた時の解決方法はストロボの電池交換
このような現象が生じた場合の解決方法としては、第1にストロボの電池を交換する。それでも減少が発生するようなら、ストロボを交換する。この2つを試してみると良いだろう。
さて今回シャッター幕について解説してみたが、この現象の原因を調べようとウェブで調べるまで、僕はシャッター幕とストロボ光のメカニズムについて全く知らなかった。元来僕は写真は撮るが、メカについては詳しくない。怪我の功名とは、まさにこのことだろう。カメラの機構や写真が撮れるメカニズムについて詳しくなる事も、不意のトラブルの解決や写真上達の第一歩だと痛感した。