コスプレアミューズメント施設では様々なシチュエーションのセットが用意されている。コスプレイヤーにとっては魅力的で「ここで撮りたい!」と思うセットでも、カメラマンにとっては苦手なセットであることも往々にしてある。
ストロボを駆使するカメラマンにとって撮りやすいセットは、アンブレラやソフトボックスを自由自在に置ける程、空間に余裕がある所だ。
先日ここで撮りたいということでセットに向かったが、一番苦手としている場所だった。まず通路が狭い。アンブレラやソフトボックスを端に置いて撮ることも出来るが、ほぼ真正面からのストロボ照射となるので、ディヒューザー効果を勘案しても、いかにもストロボを炊いた感じの平らな表現になってしまう。
それはそれで悪くはないのだが、どうもストロボを炊くと、壁に埋め込まれている格子柄の電球の光を相殺してしまいセットの魅力を削いでしまう。ここでそういう風な絵を撮るのは飽きた。
しかもこの日は4人の併せで、配置も前後に立ったり座ったり寝ころんだりとバラバラで、全員の顔に均一にストロボを当てようと思ったら、なかなかに難易度が高い。ソフトボックスとアンブレラで上と下から当てようかとも思ったが、8時間の撮影も終盤ということで疲れも出てきて、思考を逡巡させてセットするのが面倒臭くなってきた。
というわけで、あれこれ考えるのをよして、ストロボのスイッチをオフにし、手っ取り早くISO感度を上げて撮ることにした。幸いにしてレフ板がスタジオに用意されていたので、大きいレフ板を持ってきて手前に置き斜めに傾けて撮影した。
ISO感度を上げて環境光のみを頼りに撮影すると、場所によってはどうしても被写体の顔に影が落ちるというデメリットの心配もあるが、デメリットよりも背景の電球の魅力を引き出せる写真が撮れるメリットの方が大きいように感じた。幸いにして廊下の光の絨毯が、顔を明るく照らしてくれたようだ。
ISO感度は自分的に許容範囲上限の1600。なるべく明るさを保つために、手ブレ防止機能付きのレンズでシャッタースピードを1/60秒まで下げ、全員にピントを合わせるため、開放F4のレンズで、絞りをF5まで絞り、テレ端にならないよう注意してズームリングを回し、最適となる構図を決めた。結果、焦点距離は42mm。
せっかくなので後ろからストロボを1灯光らせることにしたら、なかなか良い感じに仕上がった。
長時間の撮影で疲れている時や、ライティングが面倒臭くなったら、手を抜いて撮るのも良い。思わぬ発見に出会えることもあるだろう。