自分の撮った写真をSNSにたくさん上げてくれたのを見て、早速閲覧してみたのだが、そのうちの何枚かは色が薄かった。はてな、こんな色味でお渡しした覚えは無いけどと訝りながら、リンクが表示されていた等倍表示をクリックしてみると、不思議なことに今度はまた違う色味で表示され、こちらはお渡ししたときの色に近かった。
そもそもRetinaディスプレイで見ているために、サイトによっては表示設定にRetinaディスプレイの表示方法との齟齬があれば大きな画像でもなんだかガサガサした、中途半端にボンヤリした表示になってしまう。ハッキリとボンヤリした表示になればまだ諦めも付くのだが、中途半端にボンヤリなので、シャキッとしてはいないけれど、それほど悪くはない、まぁなんとか見ることは出来る画質だ。
それらの画像をダウンロードして、ファイルをダブルクリックしプレビューしてみると、何のことはない、きちんとシャープに撮れた、綺麗な色味の写真だ。お渡ししたJPEG写真とほぼ同じだ。
しかし或るサイトに上げたときの縮小された写真の方が色味が異なるのはどういうわけだろう。これはまたあのカラープロファイルとかいうややこしい奴が犯人に違いない。
というわけでPhotoshopにオリジナル画像の方をダウンロード画像をドラッグ&ドロップして表示させてみたら、左下のカラープロファイル表示バーにDisplay P3 (8bpc)との表記。sRGB IEC61966.2-1(8bpc)ではなかった。縮小画像の方はというと、タグのないRGB(8bpc)と表示されていた。
Display P3、調べてみると、あのadobe RGBと同じように、sRGBよりも色域が広く、adobe RGBがブルー・グリーン寄りに広いのに対して、Display P3はイエロー・レッド寄りに広くなっている。
Adobe RGBも、P3も、sRGBよりも色域(gamut)が広い。アップル製品がP3のカラープロファイルに対応したデバイスをたくさん世に送り出しているから広い色域のカラープロファイルが主流になるだろうというような事が、紹介先のブログでは述べられている。
ひょっとしたら編集したコスプレイヤーさんが、表現を豊かにしたい色があり、その色がイエロー・レッド寄りだったので、ディスプレイで再現するためにそのようなカラープロファイルで保存したのかも知れない。もしくはP3は最新のアップル製品が対応しているので、アップル製品のいずれかを持っていてその設定にしたのかも知れない。或いはお渡ししたデータが理想的な色が出ていない箇所があったので、編集時に色域の広いカラープロファイルにしてみたのかもしれないなど様々な原因が思いつくが想像の域を出ず定かではない。
ひょっとして自分がお渡しする際に何か手違いがあってP3のカラープロファイルでお渡ししたのかも知れないと思ったが、Canon Digital photo professionalのカラープロファイル関連の項目は弄っていないし、どこにあるのかも知らない。
試しに自分のブログにダウンロード写真をアップロードしてみたが、色味に問題は無かった。ブログにアップロードした写真をダウンロードしてみたが、カラープロファイルはP3となっている。ブラウザの問題ではないという事か。
この記事を書いた後日、再び別の人が同じSNSに写真を上げていたのだが、またしても縮小画像の方の彩度が低くなっていた。サイト内で「オリジナル画像を表示」(原寸大)をクリックして表示させると、彩度はカラフルになる。試しにオリジナル画像と縮小画像の二つをダウンロードしてPhotoshopに取り込みでみたら、オリジナル画像の方のカラープロファイルがDisplay P3(8bpc)で、縮小画像の方のカラープロファイルはタグのないRGB(8bpc)だった。他の画像でも試してみたが同じ結果となった。前回と同じだ。
ということは彩度が異なる原因はP3ではなく、タグのないRGBにあったということなのか。言われてみればP3はアップルのカラープロファイルで、アップル製品に対応しているので正しい色で表示されているはずだ。
ところが、縮小画像とオリジナル画像が同じ色味の画像もある。これらをダウンロードしてPhotoshopで表示してみると、オリジナル画像は「sRGB IEC61966.2-1(8bpc)」、縮小画像は「タグのないRGB(8bpc)」となった。彩度は薄いようには見えない。どちらもそこそこ濃い。この2組の事例の違いはどこに原因があるのだろうか。ますます謎が深まってしまった。
P3のカラープロファイルの画像をWindows機で見るとどうなるの?
iMacのディスプレイで見るとこのような感じだった。ではP3のカラープロファイルの画像をWindows機のディスプレイで見るとどう見えるだろうか。実験してみた。
SNSのギャラリーで観ても色の違いは見て取れた。しかしどういうわけか、縮小画像の方が綺麗な彩度で、オリジナル画像の方はやや濃い彩度に見えた。同じように双方の画像をダウンロードしてPhotoshopに取り込んで見比べてみると、同じ結果。縮小画像の方タグのないRGB(8bpc)が自然な色合い、お渡しした際の理想的な色合いだ。Display P3(8bpc)の画像の方は、色がやや濃い。
ちなみにPhotoshopの「タグのないRGB(8bpc)」の画像の方に、P3の画像をレイヤーとして移動させると、P3の画像の濃い色味は、「タグのないRGB(8bpc)」の画像の色味と同じになった。
Windows機の方は6年使っていて、画面の調整などはしていない。iMacやWindows機の違いによっても、画面の色味は変わってくるという事か。となると、厳密な意味では、すべての人がディスプレイを介して同じ色味で写真を見るのは、不可能という事になる。iMacかWindows機、もしくはiPhoneかAndroidのどちらか一方に統一されないと、色味が異なって見える状態は解消されない。たとえキャリブレーションをしたとしても、趣味で写真を見ている相手方のディスプレイはキャリブレーションなんて金がかかる面倒くさいことはしないのだから、ディスプレイが経年劣化して色味が変わることも考慮に入れると、全員に同じ色で見せるのは不可能という事になる。写真をお渡しする側としては頭が痛い問題だ。
カラープロファイル「sRGB IEC61966.2-1(8bpc)」なら、iMac、Windows機共に同じ彩度で見えるかも知れないと思ったが、実際に確認してみたら、やはりWindows機だとiMacよりもやや濃いめの色に見えた。
そのSNSで確認できた現象と、iMac・Windows機の再度の違い
- 大きいサイズの画像をアップロードすると、メインのページでは自動的に縮小された画像が表示され、オリジナル画像を表示するためのリンクが表示される。
- 縮小画像とオリジナル画像で、カラープロファイルが異なり、縮小画像は「タグのないRGB」となる。
- オリジナル画像が「P3」で自動縮小画像が「タグのないRGB」になる場合、タグのないRGBの画像はP3の画像よりも彩度が落ちる。
- オリジナル画像が「sRGB IEC61966.2-1(8bpc)」で自動縮小画像が「タグのないRGB」になる場合、彩度は同じように見える。
- 縮小処理する必要の無い大きさの画像は、「sRGB IEC61966.2-1(8bpc)」「sRGB Ver1.31(Canon)(8bpc)」など様々なカラープロファイルになっている。
- iMacとWindows機では、Windows機の方が、彩度がやや濃く表示された
sRGB Ver1.31(Canon)(8bpc)というカラープロファイル
他のお渡しデータのカラープロファイルは大丈夫だろうかと、試しにPhotoshopで表示させてみたら、sRGB Ver1.31(Canon)(8bpc)とある。あれ、なんか見覚えのあるカラープロファイルでは無いな。とりあえずこれで保存しておいた方がウェブにデータを上げる際には色褪せしたり彩度が落ちたりしなくて無難という名前のカラープロファイルsRGB IEC61966.2-1ではない。
これも調べて見ると、キヤノン独自のカラープロファイルで、ディスプレイ上ではsRGB IEC61966.2-1との違いはほぼ皆無で、キヤノン製品のプリンターでプリントすることを前提とした場合に効果を発揮するとのこと。sRGB IEC61966.2-1との齟齬は気づくほどではないらしい。キヤノンからの回答も掲載されていて非常に参考になる。2009年の記事で9年前なので、対応プリンタの点などの事情はまた異なってくるだろう。
そういえば今までデータはDPPでRAW現像して、sRGB Ver1.31(Canon)のカラープロファイルでお渡ししていたことになる。しかし今までウェブに上げて貰っていた写真の色味は、こちらが渡した際の色味と違わなかったから問題は無いのだろう。
気になってみたので2つのカラープロファイルでJPEG変換して、Photoshopに取り込み、ヒストグラムの各数値を確認してみた。RGB、レッド、グリーン、ブルー、輝度、カラー、すべての項目が全く同じ数値。
次にブラウザによる見え方を探ってみた。Safari、GoogleChrome、Operaは2枚とも色に違いは無かったが、Firefoxは、sRGB IEC61966.2-1の方の写真だけ色が濃くなった。この色の濃さは他のブラウザと違いが分かるほどだった。sRGB Ver1.31(Canon)の写真は、どのブラウザでも同じ色だった。
Firefoxで表示させた各カラープロファイルの画像のスクリーンショット比較
つまり、iMacのディスプレイで見ることを前提とした場合、Firefox以外のブラウザで見る分には、どちらのカラープロファイルでも同じ色の写真で表示されるので、問題は無いが、Firefoxで見ると、sRGB IEC61966.2-1は彩度の濃いヴィヴィッドな色になる。原因を検索してみたがこれといった回答が出てこない。(Chromeで見ると色が違うという話が出てきた。Windows機だとまた見え方が異なるのだろうか。検証を要する。)
ではsRGBのカラープロファイルで保存した方が無難なのだろうかとも思ったが、どちらにしてもウェブ表示する場合は、Firefoxだけ色味が濃くなるだけの話なので、その点だけ気にならなければ、どちらでもいいという事になる。彩度が濃くなったからといって不自然な色味になったわけではない。
P3のデータのみでも同じ事を試してみたが、こちらはどのブラウザで見ても色味は変わらなかった。どのブラウザで見ても色が変わらないsRGB Ver1.31(Canon)と同じ結果だ。
ではsRGB IEC61966.2-1とsRGB Ver1.31(Canon)、何が問題になってくるのだろう。iMacでどのブラウザで見ても色味が変わらないなら、sRGB Ver1.31(Canon)のカラープロファイルでお渡しした方が良いのでは無いかとも思えてくる。
sRGB IEC61966.2-1がウェブ標準と言われているから、こちらのカラープロファイルになるようJPEG変換保存した方が良いのだろうか。しかしiMacのFirefoxで見ると彩度が濃くなるという結果になるのなら、どの主要ブラウザで閲覧しても同じ色になるsRGB Ver1.31(Canon)で保存した方が良いようにも思える。
お渡ししているコスプレ写真の主要目的は、TwitterやSNS、ブログなどWebに掲載することだが、プリントしたいという需要もある。
sRGB Ver1.31(Canon)とsRGB IEC61966.2-1、Firefoxでの色の違い比較
以下はiMacのディスプレイで、Firefoxで写真を閲覧すると色の違いが出るけれど、SafariやGoogle Chromeで見ると同じ色に見える作例。Firefoxで閲覧した場合の、それぞれのカラープロファイルの写真の色の違いを比較してみた。Firefoxで閲覧してみて欲しい。
DPPで保存した写真と、DPPで保存した写真をPhotoshopに取り込んで、再度保存した写真の比較を掲載している。お渡しした写真をPhotoshopでレタッチして保存することを仮定して、どの組み合わせで写真の彩度が変わるのか実験してみた。
Canon DPPで保存 左sRGB Ver1.31(Canon)・右sRGB IEC61966.2-1
- DPPでICCプロファイル埋め込みにチェックをいれて保存すると、PhotoshopでsRGB Ver1.31(Canon)と表示され、Firefoxでは色がPhotoshopと同じ色で表示される。
- DPPでICCプロファイル埋め込みにチェックを外して保存すると、PhotoshopでsRGB IEC61966.2-1と表示され、Firefoxでは色がPhotoshopより濃く表示される。
Photoshopで保存 左タグのないRGB・右sRGB IEC61966.2-1
sRGB Ver1.31(Canon)の写真をPhotoshopで保存時に、sRGBに変換を実行。
- カラープロファイルを埋め込むのチェックを外すと、カラープロファイルがタグのないRGBと表示され、Firefoxでは色がPhotoshopより濃く表示される。
- カラープロファイルを埋め込むのチェックを入ると、カラープロファイルがsRGB IEC61966.2-1と表示され、Firefoxでは色がPhotoshopと同じ色で表示される。
sRGB Ver1.31(Canon)をsRGB変換してPhotoshop保存
左タグのないRGB・右sRGB IEC61966.2-1
sRGB Ver1.31(Canon)の写真をPhotoshopで保存時に、sRGBに変換を実行。
- カラープロファイルを埋め込むのチェックを外すと、カラープロファイルがタグのないRGBと表示され、Firefoxでは色がPhotoshopより濃く表示される。
- カラープロファイルを埋め込むのチェックを入ると、カラープロファイルがsRGB IEC61966.2-1と表示され、Firefoxでは色がPhotoshopと同じ色で表示される。
Photoshop保存 左タグのないRGB・右sRGB Ver1.31(Canon)
sRGB Ver1.31(Canon)の写真をPhotoshopで保存時に、sRGBに変換しない。
- カラープロファイルを埋め込むのチェックを外すと、カラープロファイルがタグのないRGBと表示され、Firefoxでは色がPhotoshopより濃く表示される。
- カラープロファイルを埋め込むのチェックを入ると、カラープロファイルがsRGB Ver1.31(Canon)と表示され、Firefoxでは色がPhotoshopと同じ色で表示される。
DPPでJPEG変換して保存した画像をPhotoshopに取り込むと、左下にカラープロファイルが表示される。それらの画像を更に保存すると、保存方法によって、カラープロファイルがタグのないRGBと表示される画像が生成される。具体的には、カラープロファイルを埋め込むのチェックをオフにすると、カラープロファイルがタグのないRGBと表示される。
そしてタグのないRGBの画像の方が、Firefoxでは彩度の濃い色委で表示され、「カラープロファイルを埋め込む」にチェックを入れた画像のカラープロファイルはsRGB IEC61966.2-1となり、こちらの方は今度はPhotoshopや他のブラウザ、ビューワーなどで見たのと同じ通常の色で表示される。
DPPで保存したsRGB IEC61966.2-1の画像はFirefoxでは彩度が濃く表示されるのに、Photoshopで保存したsRGB IEC61966.2-1の画像は、sRGB Ver1.31(Canon)と同じ普通の色味で表示される。
Windowsパソコンのディスプレイではどう見えるか
Windows機ではどう見えるだろう。2012年頃に購入した国産のハイスペックPCのFirefoxで閲覧してみた。すると色味はどちらのカラープロファイルでも変わらなかった。ただ、当記事トップから2番目の比較画像、スクリーンショットをPhotoshopに取り込んでJPEG変換して保存した画像は、右の「DPPでsRGB IEC61966.2-1で保存」の画像の方が赤の色飽和を起こしていた。画像のプロファイルはDisplay(8bpc)と表示されているし、スクリーンショットなので、とりあえずデータお渡しとは関係のない事項なので、ひとまず置いておく。
それにしてもまた久しぶりにWindows機で自分のブログを見たが、iMacのRetinaディスプレイに日々触れていると、Windows機のディスプレイ表示がギザギザに見える。文字もギザギザだし、画像もフワッとしていてシャープネスが足りないように思われる。使っていた頃は綺麗だと思っていたディスプレイだったが、やはりRetinaディスプレイは凄い。1ヶ月もすると飽きるというレビューもあったが、写真を頻繁に撮りに行っている身にとっては常にアップデートされるので、飽きることがない。特にWindowsパソコンのディスプレイに戻ったときなどには、Retinaディスプレイの圧倒的な描写力の差を強く実感せざるを得ない。
閲覧実験をしたブラウザのバージョン
- Firefox 60.0.2 (64 ビット)
- Safari バージョン11.1 (13605.1.33.1.4)
- Google Chrome バージョン: 66.0.3359.181