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株主優待制度 – 実質利回りで株価を見る

株主優待制度とは、或る上場企業の株を或る条件の下で所有していたら、その企業にゆかりのある商品が貰える制度の事を言います。企業が株主優待制度を設けていて、その企業が定めた枚数の株を購入し、配当権利落日の前日(権利確定日)に所有していることが、株主優待を貰うことが出来る条件です。実際の受け渡しには4営業日かかりますので、配当権利落日の4営業日前、権利付最終日に株を購入しておく必要があります。

株主優待制度の内容は企業によって異なります。保有株式数や保有年数によって貰える内容が優遇される銘柄もあります。株主優待制度を設けている企業の株を買うと、一単元の所有から株主優待の物品を貰えることが多いです。

株式取引における単元という単位の意味

或る上場企業の株を株式市場で購入する場合に、最低限買わなければならない枚数のことを1単元と呼びます。1単元が一株の銘柄もあれば、一〇〇株や一〇〇〇株の銘柄もあり、一単元の枚数は銘柄によって異なります。この単元の単位を基準に取引を行います。

ここ最近、様々な銘柄で一単元の株数の併合が進んでいます。東京証券取引所をはじめとした取引所は、投資家に分かりやすいように、またあまねく株を購入しやすいように、1単元の株数を100株に統一するよう、また1単元の価格が買いやすい価格になるよう、上場企業に推奨しています。

筆者が所有している銘柄も、1単元一〇〇〇株から一〇〇株に併合されました。それに伴い株価も150円から1,500円と10倍になりましたが、併合により所有数が1/10に減ったので、価値は同じになります。10倍になったという言い方よりも10倍表記になったと言った方がわかりやすいかも知れません。

併合とは反対に、十数年ほど前は株式分割が盛んに行われていた記憶があります。100分割などが実地された際には、分割後に市場に出回る新株にタイムラグがあり株価が吊り上がることがありました。一株を100分割すると、残りの新株99株が市場に出回るまでに2ヶ月ほど時間がかかるので、極端に株が不足し、需要と供給(買いたい人と売りたい人)のバランスが崩れ、株価が業績の善し悪しに関係なく釣り上がったのです。13営業日連日ストップ高だったでしょうか。釣り上がった株価はその後新株が市場に行き渡ると潮が引いたように下落しました。掟破りの100分割などと言われましたが、その企業はその後株式市場を揺るがす大事件を起こし、上場廃止になってしまいましたね。皆さんのよく知るところです。

今現在は株券がペーパレス化されていますので、タイムラグがなく需給バランスも崩れませんので、投資家にとって株式分割の旨みはなくなりました。

家族名義の口座を利用することで少ない投資額で多くの株主優待を貰う

株を購入するには1単元の枚数を購入しなければなりません。1単元の価格が5万円の銘柄もあれば、10万円、50万円、100万円、500万円と、その銘柄の株価によって様々です。5の倍数の価格で例を出しましたが、実際には株価に応じた様々な価格になります。1単元の価格=現在の株価×1単元の枚数と頭の片隅にでも覚えておいてください。

株主優待制度を設けている企業の株を購入することで、株主優待を貰うことが出来ます。半月に一回貰える銘柄もあれば、1年に一回貰えるところなど様々です。貰える商品もその企業にゆかりのある商品や商品券、クーポン券の他、余りゆかりのない商品が貰える銘柄もあります。Yahoo!ファイナンスを開いて、銘柄を検索してみてください。タブに株主優待とありますので、それをクリックすれば、その企業が株主優待制度を設けているかどうか一目で分かります。設けていた場合は、貰える物やサービスの他に、貰える条件が記載されています。

株主優待を設けている企業の株は、通常は1単元の購入から株主優待を貰える銘柄が多いです。枚数が増えて行くに従って、貰える株主優待の個数などが増えていく銘柄も多いですね。だいたい単元単位で購入枚数を増やしていくと、貰える株主優待の数も増えていきます。例えば一〇〇株所有だと商品券2,000円。五〇〇株所有で商品券5,000円といったように増えていきます。

上述した例のように、5倍の所有数になっても、株主優待の貰える数が5倍になるとは限りません。大抵の銘柄では、所有枚数を倍に増やしても、株主優待で実質貰える価値は倍にはならず、それより少ない倍率での増加数となります。

少ない投資額でより多くの株主優待を貰える方法もあります。親や配偶者、子供など別々の名義で株を購入するという方法です。小さい子供が証券口座を開くことができるかどうかは失念しましたので各自証券会社のホームページで調べて頂くとして、二十歳以上のご子息でしたら法律上成人ですので問題なく証券口座を開設できるでしょう。

1単元の所有で1,000円の価値のある株主優待が貰える銘柄があるとします。その銘柄を5単元購入すると2,000円の価値の株主優待が貰えます。

その代わりに親や子供などの別の名義の口座を作って、1単元購入すると、自分の名義と合わせて2,000円分の株主優待が貰えます。

1単元購入するのに10万円かかるとします。2,000円分の株主優待を貰うためには、自分だけの名義で購入した場合は50万円分の株を購入する必要がありますが、家族名義の口座を利用すれば、20万円分の株を購入するだけで済みます。

当然家族間のこととは言え、証券口座の開設にはご家族の承諾が必要ですし、株式取引への理解も必要です。勝手に妻の名義で証券口座を開いてお金を入れて取引するといったことは出来ません。妻の名義の証券口座なら、そこに入っているお金や株券は妻の所有物になります。奥さん自身で口座を開設して、奥さんのお金を入金し、奥さんが取引することになります。

この方法ですと、少ない投資額でより多くの株主優待を貰うことが出来ます。

株を購入すると半期に一度、もしくは1年に一度、配当金が貰えますが、株価に対する配当金の割合を配当利回りと言います。銀行の預貯金の利回りと同じです。

配当利回りの計算

一株当たりの配当金 ÷ 株価 × 100 = 配当利回り(%)

仮に一株当たりの配当金が1,000円として、株価が10,000円とします。上の計算に当てはめると、配当利回りは10%になります。かなり高いですね。配当利回りが10%ということは10年持ち続けていれば、1万円で購入したとして株価が1万円のまま変わらなければ、投資した金額の元が取れるという計算になります。

通常日本株の配当利回りは1%から2%の所が多いです。3〜5%ですと日本株では高配当銘柄と言えます。5%を超えるところはなかなかありませんが、相場全体が大暴落した時は一時的に5%を超える銘柄も出てくることがあります。アメリカですと株主還元に対する意識が強いですので、配当利回りはもっと高いらしいですね。

株主優待制度というのは日本独自の制度だそうで、ということはアメリカやヨーロッパにはこの制度はないということです。配当利回りがアメリカに比べて低い分、善意ある日本企業は株主優待制度を設けて、株主に還元しているという図式になります。

この株主優待制度で貰える物品の価値を金額に換算して、配当利回りに加えて導き出される数値を、実質利回りという言い方をすることがありますが、正式ではありません。あくまで便宜的な名称です。

物品などは金額として換算しても、実際にそのままの形でお金として入ってくることはないので、配当利回りとは分けて、優待利回りという言い方で、株主優待の価値を金額に換算して計算する方法もあります。

レアな優待利回りならその手の市場で高く売れる可能性もありますが、その価格が明確ではありませんので、配当利回りとは分けて計算した方がより投資冥利の実態を掴みやすいというのもあります。

どちらにしても配当利回りと優待利回りを合わせた実質利回りで現在の株価を見ることで、その銘柄が割高か割安かを探ることも出来ます。株主優待を合わせて10年で元が取れるとしたら割安とも言えるでしょう。

株主優待の問題点

投資家にとって実にお得なイメージのある株主優待ですが、デメリットもあります。それを分かりやすく箇条書きに記すと

  • 株主優待は永続的なものではなく、企業の都合で廃止されるリスクがある
  • 人気の株主優待を設けている銘柄の株価は割高なことが多々ある
  • 株主優待狙いで株を購入すると逆に損することがある

といった点です。1つずつ解説していきましょう。

株主優待制度は企業の都合で縮小または廃止されるリスクがある

株主優待はあくまで企業が独自に設けている制度です。ですから企業の業績が悪くなったりすれば、企業の都合で簡単に株主優待を縮小もしくは廃止することができます。このような事態を俗に改悪と言います。

すると先ほどの実質利回りの視点から見た場合、旨みのなくなる銘柄も出てくるわけです。配当利回りが極端に低くて、株主優待の方が充実していたケースがそれに当てはまります。

また株主優待が廃止されると、株価が下がることも懸念されます。逆に株主優待が増えた場合には株価が上がったりもしました。たとえばハピネットなどがそうです。株主優待制度が改善されて1,200円くらいから2,400円くらいまで上がって、結局1,400円に戻ってしまいましたけどね。

株主優待が増えれば株価が上がるという事は、その逆もまたしかりという事です。

また最近は投資会社やヘッジファンドなどが或る企業の株を買い占めて、その影響力で以て企業に経営改善や投資家還元策を具申し、株価が上がると売り抜けてしまうといった事例も見られます。そのような投資会社に対する対抗策として株主優待制度を充実させ、個人投資家を呼び込んでなんとか経営権を乗っ取られないようにするという企業もあると聞きます。もし仮に投資会社の企みが巧くいかなくてその企業から手を引いてしまった場合、対抗策として打ち出していた株主優待制度が改悪もしくは廃止される恐れもあります。その株主優待制度がどのような事情で設けられたのかという点にも、個人投資家は常に目を光らせておかなければなりません。

人気の株主優待制度を設けている企業の株価は割高なところがある

人気の株主優待、たとえば東京ディズニーランドのオリエンタルランドや回転寿司のくら寿司、みんな大好きマクドナルドなどの銘柄も株主優待制度を設けていますが、現在の株価はやや割高に感じられます。アベノミクスが始まる2012年以前ですと株価が低迷していたので、その時期に買っておけば実質利回りも高くてお得感があり、更にはアベノミクスによる株価上昇でキャピタルゲインも得られたでしょうが、今現在は日経平均が22,000円〜23,000円前後で高止まりな上に、魅力的な株主優待制度を設けている企業の株は割高感があり、どうも手が出しづらいです。ここから業績が伸びればまた株価も上がりますので割安感は出ますが、アベノミクスも6年目に突入し、モリカケ問題などで政局が何かと混迷していたり、日銀もあれだけ自信ありげに定めていた物価上昇率の目標が達成できなくなった今現在、日本経済の先行きが不透明なところもあります。2012年から株価は大きく上がったが、ここから先はどうなのか、どうも投資しづらい環境にあるようです。

一方で、充実した株主優待制度を設けている企業の株価は下がりにくいという特徴もあります。企業の業績が今ひとつでも、株主優待制度が株価を下支えしているという面もあります。例えばPER50倍の割高感のある銘柄でも、株価はなかなか下がりません。配当利回りに株主優待利回りを合わせた実質利回りで見ると、最低水準にあるのかも知れません。

つなぎ売りをした際の逆日歩発生で割高な株主優待になるリスクがある

これは少し難易度の高い上級者向けの投資方法で、いわゆる買いと売りの両建てで決算をまたいで、株主優待を頂くという方法があります。つなぎ売りと呼ばれている手法です。

配当金や株主優待欲しさに、配当権利落日が到来するまでに株を現物で買うとします。配当権利落日の前日にその銘柄を所有していれば配当金と株主優待をゲットできますが、同時に配当権利落日の日は株価が配当利回りの分だけが下がることが多いです。大勢の投資家が似たようなことを考えていて、配当金や株主優待の権利を取り終わったら売ってしまうせいでしょうか。以前からその銘柄を所有していれば特に問題ありませんが、権利が貰える直前に配当金と株主優待をゲットするために株を購入すると、配当利回り分だけ含み損を抱えることになります。

そこで信用売りで借りてきた株を株式市場で売り(空売り)、配当権利落日に株価が下がった時に現物を買い戻し、株価下落の差額で埋め合わせるという手法を用います。これがつなぎ売りです。実にややこしい方法ではありますが、株主優待を株価下落のリスクを負わずにゲットできます。

ところがこの手法にはひとつ問題があります。株を売り立てる(空売りする)場合は、株券を証券会社から借りることになりますが、品貸料(逆日歩)が発生することがあります。利息のようなものです。証券会社は自身がその株を所有していることもありますが、大株主から株券を借りてそれを売り立てたい投資家に貸します。筆者のような弱小投資家でも、所有している株券を証券会社に貸し出して利息を得ることが出来ます。ただし決算期をまたいでしまうと配当金や株主優待が受け取れないというデメリットもあります。

この品貸料が問題になります。例えば皆考えていることが同じで、投資家達が皆一斉に権利落日直前に株主優待ゲット目的で、或る銘柄を空売りすると、株不足が生じ、品貸料(逆日歩)が発生します。するとどうなるかというと、借りている株の利息を払わないと行けなくなります。この品貸料が、空売りが集中して株不足が生じたことで一気に上がってしまい、2,000円相当の優待を貰うつもりが、30,000円の品貸料を支払う羽目に陥ることがあります。実際に権利落日直前に両建てする手法が裏目に出て、高い品貸料が発生してしまい、実質3万円のポテチを買うことになったとTwitterでも話題になりました。

逆日歩を支払わなくて良い取引方法もあります。信用制度には制度信用取引と一般信用取引の二種類があります。制度信用取引を用いて空売りすると逆日歩がかかりますが、短期の一般信用取引を用いて空売りすると、逆日歩がかかりません。

このようにつなぎ売りによる短期売買で配当金や株主優待を得る取引を、俗に優待のタダ取りと言ったりもします。配当金に関しては空売りしている銘柄には配当落調整金・配当落調整額がかかりますので、実質的にはゼロになります。

銀行に預けるよりも株に投資した方が良いとは言うけれど・・・

配当利回りや株主優待の話題でよく言われているのが、銀行に預けているよりも株に投資した方がリターンが高いという話です。銀行の普通預金だけでなく利率が高いと言われている定額預金でさえ、今現在は雀の涙のような利息です。1980年代のように郵便貯金に預けていれば、10年で預金が2倍になると言われていた高利回りの時代もありましたが、失われた20年を経て今はその面影は全くありません。

それなら株に投資した方が利回りが良いという話になります。配当金を出している健全な経営をしている企業の銘柄は低くても配当利回り1%、高くて4%の銘柄もあります。そこに株主優待利回りも加えれば10%を超える銘柄も出てきます。

しかし目先の利益に囚われていると落とし穴もあります。株価は下落するリスクがあるという事です。貯金はローリスク・ローリターンですが、株はハイリスク・ハイリターンです。配当利回りや株主優待利回りで取り戻すどころか、大損をするリスクもあります。株主優待制度にしても企業の都合でいつでも縮小したり廃止したりすることが出来ます。株式投資の世界は我々の予想とは異なる展開になることの方が多いです。この点を留意して取引する事が重要です。