ロールオーバー – NISAの非課税枠を5年延長できる制度

遂にこの年がやって参りました。NISA口座のロールオーバー。早いものでNISA制度が始まってから5年経ったことになります。NISAで購入した株は5年間経つとロールオーバーの手続きをする必要があります。このまま非課税口座であるNISAに保有し続けるか、課税口座に移すか、NISAの5年の期間が到達する前に、すなわち譲渡益に20%の税金がかからないうちに市場で売却するかの3択を迫られます。通常なら非課税枠を継続できるロールオーバーを選ぶところでしょう。他の選択肢を選んでも何のメリットもありません。

ロールオーバーする場合は必ずその意思表示を書面で行わなければなりません。NISAに保有し続けている株がある場合は、証券会社からロールオーバーの手続きに関する書面が届きます。筆者の元にも2ヶ月くらい前に証券会社からA4サイズの封書でロールオーバーの意思表示に関する書類が届きました。ロールオーバーを希望する銘柄にチェックをつけて即座に返送しました。期限までに手続きが遅れると自動的に課税口座に移行するからです。

ロールオーバーで新しいNISA口座に移し替えることで、更に5年、非課税期間が延びます。譲渡益と配当が無税になります。

NISA口座で購入できる株の額は120万円が限度ですが、ロールオーバーして新しいNISA口座に入れる場合は、既に所有しているNISA口座の株の時価が例えば値上がりで2倍になって120万円を超えている場合でも、そのまま新しい非課税口座に引き継ぐことが出来ます。

NISA制度は国民を貯蓄から投資へと促す政策の一環らしいです。低迷しいてる日本株の底上げを狙った制度とも言われています。英国の制度を参考にして導入されたそうですが、一投資家としては、今回のように手続きが若干分かりづらいのと、口座を開設する時も手続きがいるので手間がかかるといった不便を感じます。証券会社から届いたロールオーバー手続きのパンフレット説明書にも新しいNISA口座に移管するとありましたが、新しいNISA口座ってどういうこと?という疑問が湧きましたし、ロールオーバーにしても、5年を迎える株の時価が上限の120万円を超えている場合は、超えた部分は新たに非課税口座に入れられるのか、それとも全額分の株を課税口座に移すしかないのかとパンフレットが届くまで疑問と不安だらけでした。譲渡益にかかる税額20%というのはかなり大きいです。売却するタイミングを間違えば利益は大幅に減ってしまいます。

なぜ譲渡益や配当に対する税額が大きいと感じるのか、それはやはり株がハイリスク・ハイリターンだからです。リスクが大きい割りには儲かった時の税額が20%というのは、やはり割に合わないと感じます。100万円の譲渡益が出たら20万円は税金に持って行かれます。日々これだけ上がったと、着実に1歩1歩上がっていると自分の相場観が的中したことを喜んでいても、そのうちの20%分は持って行かれると考えると、株価が2倍になっても上げ幅の20%持って行かれたことになります。

貯蓄から投資と言いますが、儲かれば良いですが、損をする時は大きく損をします。特に初心者は相場の空気を読むのが難しいので、余りよく分からずに手を出して損をします。投資信託にしたって証券会社が手数料を取るだけで、投資家は儲からないというイメージが強いです。そもそも今はアベノミクスで株価が上がっているから良いですが、日本株は外国株と比べて弱い。昨今はどの企業も過去最高益と持て囃されていますが、日経平均株価のPERは割安圏内です。にもかかわらずアメリカなどの外部要因で突き崩され簡単に大幅安を演じてしまいます。

日本の株価が外国の動向に左右されるのは、日本株の投資家の7割が外国人だからとも言われています。外国人投資家の顔色を窺うような政策をおおっぴらにしないと日本の株価は上がらないという印象もあります。

1990年や2000年のバブル崩壊、2007年のリーマンショックを経て株は危ないものという意識が日本人に浸透した感があります。配当利回りもアメリカと比べると総じて低いと言われています。初心者がこれから株をするにはやはり旨みがないというのが現状かも知れません。だから株よりも分かりやすくて値動きが絶好調だったビットコインに流れるのかも知れませんが、仮想通貨はもっと危ないのは先般の大暴落を見ても分かるとおりです。Twitterの笛吹きに煽られて買ってみたら半値に暴落して阿鼻叫喚のツイートがTwitterに溢れました。儲かる儲かると煽って新規の投機家を呼び込み値上がりを見込んでいた笛吹き達は、暴落する前にすべて売り抜けていた可能性大でしょう。

譲渡益や配当が非課税になるNISAも時限制度なので、2023年までに終了します。NISAなんて面倒くさい制度を導入するなら、いっそのこと一年間の譲渡益や配当が500万円以内なら非課税にするといった政策にした方が投資家としては手続きが減るので楽です。そもそも株式取引で儲かったお金で何か物を買って市場にお金が回るなら、それ自体が政府が打っている様々な還元策や景気刺激策の代用にもなるのではないか。株式取引をお金持ちだけではなく庶民にもあまねく浸透させたいのなら、貯金好きの日本人を本当に貯蓄から投資へと促したいのなら、それくらいのダイナミックな政策を打った方が、効果的なように感じます。どうもNISAは非課税額といい期間といい、若い新規の投資家を呼び込んで株式取引を活発化させるには中途半端で面倒な制度のようにも思われます。

仮想通貨に若者が飛びついた現象はバブルの時の株式取引に似たものがあります。単純に儲かるからです。一方で仮想通貨の譲渡益にかかる税金について知らずに投機した人も多いように見受けられました。

株の税金を非課税にしたところで、若者が株取引をするかと言えば、株は仮想通貨と比べてそれなりの知識が必要と感じたり、損をするから怖いというイメージがこびりついていたりと、ハードルが高いことが窺えますから、おそらく増えないのではないか。また今の若者は経済低迷と格差社会の煽りを受けて昔と比べてお金がありませんから、日々の生活と趣味に精一杯で株に投資する余裕がないのかもしれません。しかしその割りにはビットコインには投企していたのを見ると、やはり楽して大きく儲かるという巷説が若者を投機に促したのでしょう。

株で損をするのはそもそも失われた20年の経済低迷が原因です。要は政策が悪かった。リーマンショックからの回復も諸外国の株価と比べて遅く、日経平均株価がようやく回復したのは自民党の安倍政権に委譲してからでした。今現在の株高も政府主導の官製相場の趣があるのは否めませんが、貯蓄好きの堅実で従順な日本人にはむしろ政府が積極的に介入した方が株価は安定するのかも知れません。結局は景気浮揚策しかないのでしょう。安倍首相のおじいさんの岸信介は戦後日本の新国家建設に高い理想と並々ならぬ情熱を注いで経済計画の枠組みを作り、その後の高度経済成長の礎を築きました。安倍首相もアベノミクス政策により日本経済再生への橋頭堡は築けたかと思いますが、この先はどうも読めません。ポスト安部には池田勇人のように政策をうまく引き継ぐ人物は現れるのでしょうか。一投資家としてはその一点が気がかりでなりません。