予想PERと実績PER – 数値の裏から会社の決算発表の癖を知る

PERには予想PERと実績PERがあります。実績PERは決算発表で既に確定した企業の前期の業績を元に算出されています。それに対して予想PERは企業の決算発表で開示された来期の業績予想を元に算出されます。つまり実績PERは古い情報、予想PERは新しい情報という事になります。

ヤフーファイナンスは数年ほど前から予想PERを掲載するようになりました。それ以前は確か実績PERの方を掲載していたと思いますが記憶が曖昧なので定かではありません。配当利回り、一株配当、PER、EPS(一株当たり利益)の各項目の横には、(会社予想)、と表記されているので、予想PERでしょう。

なぜ古い情報である実績PERから予想PERに切り替えたのかは知るよしもないですが、実績PERは既に確定した純利益から算出されているため情報が古く、企業の先行きを予想して投資するのが株式投資の醍醐味であり、予想や噂で値動きするのが株というものなので、古い情報である実績PERよりも予想PERを乗せた方が、投資家が参考する際に役立つと踏んだのかも知れません。これで特に困ったことがあるかと問われればメリットの方が多いので特に困らないと思ったのですが、1つだけ懸念があります。会社予想の精度です。

一口に会社予想といっても、当たるときもあれば外れるときもあります。また銘柄によっては毎年強気の予想を出す企業(例:任天堂)もあれば、慎重で保守的な予想を出す企業(例:バンダイナムコHD)もあります。

つまりYahoo!ファイナンスに表示されている会社予想の予想PERを軸に投資判断を行う場合は、それぞれの企業が立てる業績予想の癖を見抜いておく必要があります。

数年前の任天堂は強気の決算予想を立てていました。結局wiiやDSブームが去った後の低調な売り上げにより、決算予想を下回る決算発表になることが多かったと記憶しています。ところが今年は、Nintendo Switchの大躍進により好決算をはじき出しました。それでも2018年6月25日現在、年初来安値付近まで売り込まれているのは、既にニンテンドースイッチの躍進は織り込み済みで、決算発表までに好決算を見越して買いが集まり、想定通りの好決算発表後は、『出たら仕舞い』の相場の格言通り、手仕舞い売りされてしまっているとも言えるでしょう。株価が高値を維持するためにはその先の材料が必要です。任天堂の予想PERは約26倍、これが果たして割高なのか割安なのかを見極める必要があります。

一方でバンダイナムコHDは保守的な決算予想を立てることが投資家の間で知られています。その為にここ数年バンダイナムコの株を決算持ち越しする事は忍耐を必要としました。決算発表後は数値が良くても決まって暴落気味に相場を演じるからです。

しかしここ最近の決算発表では、発表後に株価が騰がることが増えました。会社予想や証券アナリストのコンセンサスを上回る好業績の他に配当金が増額されたりといったことが要因だったと記憶していますが、バンダイナムコHDも、決算後に下落相場を演じることに対し、投資家に好印象を与える情報を付加することで、株価対策を行っているように思われます。

企業の発表する会社予想が必ずしも実現するとは限りません。むしろ外れることの方が多いでしょう。そんな強気予想を出して大丈夫か?という局面に遭遇することも度々あります。強気予想で予想PERが低くなれば割安感が出ているように見えますが、決算発表で予想を下回るような数値が出れば、株価は暴落するでしょう。それと知らずに低PERで飛びついて買ってしまうと、痛い目を見る可能性が大きいという事です。

会社予想の業績がいい意味で外れるか、悪い意味で外れるか、判断が出来なければ証券アナリストのコンセンサスの数値を参照するといいでしょう。3ヶ月に1度発行される会社四季報などの株式情報誌には、各社独自で銘柄を調べ抜いた上での予想コンセンサスの数値を載せています。恐らくこちらの数値の方が、会社予想の業績よりは精度が高いかも知れません。あらゆる角度から分析した上での客観的な数値ですから。時に企業の予想する業績は客観的な観点が抜け落ちているような面が多々見られます。

というわけで、Yahoo!ファイナンスに表示されている予想PERが低いからといって、また高いからといって、その内幕を少しでも調べないことには、飛びついて買ったり空売りしたりするのは失敗の元でしょう。会社四季報などの雑誌で当該銘柄に決算発表の癖がないかどうか調べておくのが自衛のように思われます。

実績PERを知っておくこともメリットになります。前期の会社の実際の業績から算出されているので、精度は当然100%です。過去3年分の実績PERの平均値を掲載しているサイトもありますので、実績PERからその銘柄の持つ嘘偽りのない人気度や、実績PERからおおよその適正株価を導き出すことも可能です。予想PERと実績PERの両方を抑えておけば鬼に金棒といったところでしょうか。