自然光の入らない密閉型のスタジオで撮ると、憂鬱になるときがある。何故ならスタジオで綺麗な人物写真を撮るには、必ずストロボを使わなければならないからだ。
ストロボというのは実に面倒臭い機材だ。使い方を間違えれば、人物が綺麗に撮れないばかりでなく、如何にもストロボを炊いた感じのする写真になってしまう。背景との明るさの兼ね合いも考慮に入れなければならない。
人肌をストロボで綺麗に撮ろうと思えば、アンブレラとソフトボックスは必須となるだろう。となると次にアンブレラホルダーやスピードリングアダプター等が必要になり、更にはライトスタンドやその代わりとなる中型三脚が必要になる。出費がかさむ。
決まれば綺麗には撮れるが、時にはストロボなしで撮るのも良いのではないだろうかと思うことがある。その場の環境光のみで、何の誤魔化しもない、その場の空気感すら伝わってくる自然な感じの写真を撮るのも一興だ。
とはいうものの、一度ストロボ撮影に慣れてしまうと、後戻りが出来ない。ストロボで巧く撮れば肌が綺麗に写るから、その綺麗さに慣れてしまうと、ノンストロボで撮ったときの落差にガッカリしてしまう。ノーストロボ、ノーコスプレフォトみたいな風潮もある。
しかし先日、ハコアム大阪でストロボなしで撮ってみたら、思いのほかうまくいった。レイヤーさんから、ストロボを使った明るい写真と、ストロボなしの暗い写真の二通りを撮って欲しいと言われた。暗い写真はストロボを使わなくても良い。被写体が黒い影になるくらいの設定で撮ってみた。
データを見て、きっとレイヤーが求めている通りの写真だろうと思ったが即座に、もう少し明るく撮ればもっと良くなるかも知れないなと思った。レイヤーの子も同じ事を思いついたのか「もう少し明るく撮って欲しい」と言ってきた。
そうして次の1枚が撮れた。ストロボなし。光源は天井についている蛍光灯のみ。ISO感度250、シャッタースピード1/250(ストロボアリの設定のままだったので、もう少しSSを遅くして、ISO感度を下げても良かった)、F値は開放F1.4で思いっきり暈かすことで空気感を出した。
ストロボなしでも綺麗な写真は撮れる。もちろん被写体もしくは撮影者が欲している写真のイメージ(この場合は暗い写真)、その場の環境光、スタジオブースの造り、といった或る一定の条件が揃うことが必須となる。
とても耽美な写真が撮れた。この日は他にも色々と撮ったが、今まで撮ってきた写真の中で一番の出来だと思ったくらいに、二人の被写体と衣装に恵まれていた。